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それいけ!東光学園野球部!  作者: 紅夜アキラ
第二部・第一章
82/175

第78話 帝応義塾

 春の大会も三回戦になり、ついに帝応義塾(ていおうぎじゅく)戦が始まろうとしていた。


 帝応義塾高校は男子マネージャーの七海遥(ななみはるか)が選手の最大限のパワーを発揮させるケアのし方をしていて、選手は全員絶好調だ。


 東光学園も上原による身体の状態の見極めで誰も絶不調はいないと判断し、それからスターティングメンバーを決める。


 今日のスターティングメンバーは――




 先攻・帝応義塾


 一番 サード 黒崎竜丸(くろさきりゅうまる) 三年 背番号5


 二番 キャッチャー 聖川天斗(ひじりかわあまと) 二年 背番号2


 三番 ファースト クリスザード(しょう) 三年 背番号3


 四番 指名打者 四宮夢月(しのみやむつき) 二年 背番号10


 五番 センター 神宮寺(じんぐうじ)ケン 二年 背番号8


 六番 セカンド 来栖洋(くるすよう) 二年 背番号4


 七番 ライト 一之瀬隼人(いちのせはやと) 二年 背番号9


 八番 ショート 美風紅(みかぜこう) 三年 背番号8


 九番 レフト 寿嶺矢(ことぶきれいや) 三年 背番号7


 ピッチャー 一十木拓也(いっときたくや) 二年 背番号1



 後攻・東光学園


 一番 セカンド 山田圭太(やまだけいた) 二年 背番号14


 二番 ショート 志村匠(しむらたくみ) 三年 背番号6


 三番 センター 夜月晃一郎(やつきこういちろう) 二年 背番号8


 四番 サード 中田丈(なかたじょう) 三年 背番号5


 五番 指名打者 片岡(かたおか)龍一郎(りゅういちろう) 三年 背番号15


 六番 ライト 田村孝典(たむらたかのり) 二年 背番号13


 七番 レフト 高田光夫(たかだみつお) 二年 背番号19


 八番 ファースト 園田夏樹(そのだなつき) 二年 背番号10


 九番 キャッチャー 田中一樹(たなかいつき) 三年 背番号2


 ピッチャー 本田(ほんだ)アレックス 三年 背番号9



 ――となった。


 本田が珍しくピッチャーでスタメンになり、本田も『久しぶりの登板だ』と張り切っていた。


 荒れ球ではあるが球威と球速が一番あり、榊に伸びるストレートを教えた本人だ。


 変化球は数が少なく変化量もそこまでないが、ストレートだけで三振を狙える怖いピッチャーだ。


 園田も珍しくファーストでスタメンになり、清原が『腰に違和感がある』ということで急遽スタメンになった。


 夜月をファーストにする案もあったが、本田の登板や外野の選手不足を理由に急遽園田にファーストをやってもらう事態となった。


 そんな中で試合が始まり、一番バッターの黒崎が打席に立つ。


「よっしゃ! 来やがれ!」


「こいつは夜月が言ってた同じ寮の黒崎とは血縁関係が全くないんだっけな。確かにあいつは銀髪(ぎんぱつ)でもオッドアイでもないしな。パワー派のこいつを一番に持っていくなんて、相当出塁率が高そうだ。あまりボール球を多く投げないでくれよ?」


「わかってるさ。ボスが俺を先発にした以上は仕事をこなすよ!」


「うおっ……! めっちゃ伸びる……!?」


 パシーン!


「ストライク!」


 本田の伸びのあるストレートに黒崎はつい手を出してしまい、冷静にならなきゃとわかってても三球で三振になるほど手を出してしまった。


 二番の聖川も三番のクリスザードもわかってて振ってしまう事を悔しがった。


 一方の東光学園は一番バッターになった山田がセーフティバントで出塁、志村が送りバントで進塁、チャンスに強い夜月が進塁させて安打を放つ。


 しかし四番の中田は一十木の多彩な変化球に翻弄(ほんろう)され三振、五番の片岡は上手くミートするもセンターの神宮寺のファインプレーに阻まれる。


 しかも飛び出した山田をサードへの送球でセンターにダブルプレーを許してしまう。


 2回では本田の荒れ球を攻略できずに四宮も神宮寺も来栖も三振になる。


 ここまで奪三振(だつさんしん)を取ったのは本田自身もはじめてで驚いていた。


 ただ田中はやたら三振してくることを気にかけていた。


 2回のウラでは田村と高田の確実性のある当たりで2連続安打。


 公式戦では野手として出るのが初の園田が満塁にする。


 ところが田中はバッティングが苦手でホームダブルプレーを喰らってしまい、後続の山田もカーブで三振となった。


 3回の表も三者連続三振になると、3回のウラで志村がスリーベースヒットを放ち、夜月が苦手なスクイズを決めて先制する。


 だが問題は4回の表だ……


「来やがれ!」


「9人連続三振……何か様子がおかしい気がするな。一応警戒しておけよ」


「わかってるって。俺も薄々気が付いてたさ。あの七海ってマネージャーがさっきから俺たち全員を見て動きを確認しているのもな。守備位置とか俺たちの癖を見抜こうとしているが……そうはいくかよ! あ……」


「うぐっ……!」


「デッドボール!」


「いって……後は任せるとするか」


 そのデッドボールから本田は上手く立ち上がり、聖川は送りバントされるもののワンアウト、クリスザードもライトフライでツーアウトにする。


 だがその間に黒崎が三塁まで進み、ピンチには変わりなかった。


 四宮が打席に入り、ほんわかとした雰囲気で打席に立つ。


「よーし! 頑張るぞー!」


「何でこいつが四番なんだ……? 何か打つ気配が全く感じられないな。ただ高坂(こうさか)マネージャーが『メガネには気を付けて』と言ってたがどういう意味なんだろうか……。わけがわかんないからさっさと抑えるぞ」


「オーライ。それっ! げっ……!」


「顔面……!」


「うわっ!」


「ストライク!」


「スイングしたか……命拾いしたな。っておい、メガネ落としたぞ」


 四宮は顔面に来た球をスイングしてしまってストライクカウントを取られる。


 ただそのスイングの反動で倒れ込んでメガネが外れたのだ。


 するとさっきまでゆるふわだった雰囲気だった四宮が、性格も口調もオーラでさえ豹変(ひょうへん)した。


「テメエ……!随分やってくれんじゃねえかコラ!テメエの球なんざ場外まで飛ばしてやっからかかってこい!」


「何だこいつ……? 急に性格が変わりやがって……! いくら本田でも甘い球だと本当に打ちそうだから際どいとこで行くぞ」


「オーライ、俺でさえ少し怖いって思うのはじめてだぜ……。それっ!」


「よし! これならギリギリボール球で手が出ない……」


「しゃらくせえっ! おらあぁぁぁぁぁーっ!!」


「えっ……? 嘘だろ……! センター追え!」


「こんな打球無理だ……!」


カコーン!


 四宮の打球はバックスクリーンどころか電光掲示板(でんこうけいじばん)の一番上に当たり、化け物級のパワーでホームランにした。


 四宮が大きくガッツポーズをして一周すると、味方のハイタッチすらせずにいらいらしながらベンチに戻っていった。


 すると来栖は慌ててメガネをつけ、四宮は元の緩い雰囲気に戻った。


「何だあいつ……?」


「メガネかけたらまた元に戻ったぞ……?」


「皆さん……どうかしましたか?」


「ったく……! いい加減スポーツ用メガネを買えと言ったのに……!」


(よう)ちゃん、大丈夫ですか?」


「俺はいいから……それよりもナイスホームラン!」


「はて……?」


「相変わらず記憶がないのかよ……この二重人格(にじゅうじんかく)


 四宮はメガネが外れると狂暴(きょうぼう)な性格になり、荒々しいスイングで強引にホームランを量産するバッターになる。


 普段は安打を多く稼いで出塁するが、こうなったら来栖がメガネをかけるまで誰も手に負えなくなるのだ。


 そのパワーは中田やロビン、本田、清原、夜月、朴が束になってようやく押さえられるレベルなほどの馬鹿力なのだから。


 その後は連続ヒットこそ打たれるも失点は2点で収まり、本田は打たれながらも安定してみせた。


 ただし打撃では山田と夜月が頑張るも後が続かなかった。


 そのまま9回のウラまで行き、2対0のままツーアウト二塁と三塁で片岡だ。


「来い!」


「拓也、この片岡は今日こそ打ってないが乗ってくるとパワーがあるのに嫌らしいバッティングをしてくる。ミート力についてはあのチームで一番だろう。七海がそうデータを取ったんだ、きっちり抑えていくぞ」


「オッケー。天斗のデータも結構当たるから怖いけど、ここで抑えれば俺たちの勝ちだね!」


「うっ……!」


「ストライク!」


「ナイスボール! インコースには手が出なかったか。もう一度インコース攻めで行こうか」


「インコースにシュート……いけっ!」


「ストレート……いや、シュートか! ふんっ!」


「ファール!」


「痛いな……! ちょっと詰まりすぎたか……?」


「よし、ここまで追い込んできたぞ。これでインコースがフラッシュバックしてアウトコースへ投げれば手が出ないはずだ。アウトコースにボールになるスライダーで空振りを狙うぞ」


「わかった。天斗のリードを信じて……投げるっ!」


「スライダー……げっ!」


「これで空振りだ!」


「くっ……うおぉぉぉぉぉぉぉーっ!!」


 カキーン!


 片岡は足を上げた時にタイミングをずらされたが、踏み込むときに大きく外側へ踏み込み、脇が開きすぎないように外側へバットをフルスイングした。


 バットの先っぽに当たっていい打球は飛ばない打倒と思っていた聖川は安堵(あんど)したが、思ったよりコンパクトなスイングで運よく芯に当ててみせた。


 聖川は芯に当てたことに驚き、ライト方向へ飛んだ打球の行方を追う。


「ライト! 追うんだ!」


「これならきっとアウトに出来ます! あれ……? 思ったより伸びるような……?」


 カコーン!


 片岡の放った打球は弱いながらもライトスタンドまで運ばれ、9回のウラという事で逆転スリーランサヨナラホームランを放った。


 片岡は大きくガッツポーズをして一周し、チームメイトに迎え入れられた際にサングラスを落とすも、チームメイトは全員サングラスを気遣って移動せずに踏まないようにして拾って手渡しした。


「ゲームセット! 整列! 3対2で東光学園と帝応義塾の試合は……東光学園の勝利です! では……礼!」


「「ありがとうございました!」」


「「ありがとうございました……!」」


 整列を終えると、帝応義塾は早乙女光陽(さおとめこうよう)監督が選手を集めてミーティングを行う。


「うーむ! チミたちの試合内容は決して悪くなかったYO! ただーし! チミたちにはデータに頼りすぎるがあまりに! 予想外のことに反応が出来まセーン! 次の試合ではデータを使いすぎずにやっていきまSHOW!」


「今回は私のデータミスでこんな結果になったけど、次はデータに依存しない未来予想をして相手を攻略してみせます! だから……一緒に頑張りましょう!」


「はい!」


 一方の東光学園は……


「片岡くん! よく逆転サヨナラを打ってくれたね!」


「たまたま打てただけっすよ。あまり大振りすると一十木の変化球に泳がされるだけなんで」


「見た目通りお堅いねえ! けどそのこだわりがあったから打てたんだ! 少しは自分を褒めてもいいのよ? 他のみんななんて六大学と同じ応援スタイルされてちょーっとビビってたんだから!」


「あれは俺でも驚きます。声の大きさというか……大学野球のスタイルに男子だけの野太い声援は威圧感がありますね。サングラスで見ないようにしてよかったです」


「なるほどなー。確かに金浜(かなはま)源氏(げんじ)学園も男子校特有の野太い声で威圧感はあるな。今度うちでも男子だけや女子だけの応援でやってみるか?」


「あー、確かにマーチング部は男子部員めっちゃ多いですからね」


「練習試合で試してもいいかもですね」


「男子校には男子のみ、共学には女子のみってやつ?」


「男子校相手に女子だけの応援は地雷だから仕方ないよな」


「そうとわかればそれも相手校対策だ! 練習試合でうちの球場でやる時にやろう!」


「はい!」


 こうして春の県大会は四回戦へ進出する。


 次の相手は常海大(じょうかいだい)相模(さがみ)で、夜月と一緒に自主練した有原(ありはら)東雲(しののめ)のいるところだ。


 走攻守バランスがよく、選手層も非常に厚いこのチームで去年の夏よりも強化されている。


 東光学園はどこまで進めるのか……?


 つづく!

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