第6話 体育祭・準備編
5月に入り、高校にもよるがこの時期に体育祭というものが行われる。
もちろん秋に行われるのもあるが、三年生の受験や就職活動に気を遣って5月に行うところも少なくはない。
もちろん東光学園もその学校である。
「えー、今日から体育祭シーズンに入るぞ。誕生月ごとに分かれているが、余ったところや足りないところは微調整してあるぞ。ちゃんと名簿を見て確認してくれよな」
「これって1ヵ月ごとに分けられてるんだな」
「そうだね。晃ちゃんと私は8月だから一緒だね!」
「そうだな。でも何でこんなに分けなきゃいけないんだ?」
「この学校は通信科とか支援科含めると十万人規模の生徒数なのよ。だから1ヵ月ごとに分けておかないと人数が大変な事になって、まったく出場できないという事もあるの。だから12チームに分かれる必要があるのよ」
「長田はやっぱり詳しいな」
「中等部では並の公立中学校と同じ生徒数だからそこまではしないけど、高等部は人数が多いのよ。あなたたちは8月だから……水色組ね」
その組み分けは――
1月生まれは白組。
2月生まれは青組。
3月生まれはピンク組。
4月生まれは黄緑組。
5月生まれは緑組。
6月生まれは紫組。
7月生まれは赤組。
8月生まれは水色組。
9月生まれは黄色組
10月生まれはオレンジ組。
11月生まれは茶色組。
12月生まれは黒組になる。
同じ水色組では天童、河西、そしてあおいだ。
各組の学年ごとに移動先が違うので、夜月と瑞樹は一緒に移動先の教室へ行く。
そこには同じ8月生まれの生徒がいて、お馴染みの顔がいた。
「よう夜月!俺たち8月生まれ同士で頑張ろうぜ!」
「河西か」
「それに、野球部の天才キャッチャーも同じ8月じゃんか!」
「お前が河西か?夜月から話を聞いているが、女好きなんだってな」
「ちょっと夜月?それはどういう意味だ?」
「まんまの意味だが?」
「ははっ!池上荘は個性的な連中だな!そんなやつらと三年間過ごすなんて羨ましいな!それで夜月、その隣にいる女子は?」
「俺の幼なじみで水泳部の……」
「水瀬瑞樹です」
「あ、なーんだ。てっきり俺と同じ彼女持ちだと思ったわ」
「か、彼女っ……!?」
「ん……?」
「はぁ!?お前彼女いんのかよ!俺より早くに!」
「伊吹麻耶ってんだ。女子バレー部でセッターをやってるんだよ。あいつは残念ながら11月生まれで別チームだがな」
「クッソ―!何で俺より早く彼女がいんだよ!」
「てか中学が一緒だし付き合っててもおかしくないだろ」
「気にすんな天童、こいつは前も言ったが女好きでチャラ男だから」
「誰がチャラ男だよ!」
「とりあえず明るいムードメーカーってのはわかったわ。体育祭はよろしくな」
「お、おう!」
「あれ?夜月くんや天童くん、水瀬さんも8月なんだ」
「高坂か。てことは高坂も8月なんだな」
「うん。野球部でも体育祭でもよろしくね」
「はーいみんなちゅもーく!今から体育祭水色組の出場選手を選びます!私は水色組応援合戦団長の山本麗奈です!よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします!」
今回の体育祭の出場枠は……
玉入れ、騎馬戦、綱引き、障害物競走、借りもの競争、100メートル徒競走、1500メートル走、走り幅跳び、走り高跳び、ソフトボール投げ、大縄跳び、棒引き、4組×100メートル二人三脚リレー、24人選抜×100メートルリレー、そして応援合戦だ。
全員参加競技の応援合戦と100メートル徒競走を除いて、一人三種目までのエントリーとなる。
天童は当然ソフトボール投げにエントリーする。
夜月は騎馬戦に出る……はずだった。
「みんな聞いてくれ!ここの夜月と水瀬は生まれた病院も日にちも一緒で家が隣同士なんだ!だからこの二人には二人三脚リレーに出てもらいましょう!」
「おお!いいね!」
「てことは付き合ってるのかな?」
「きゃー!ロマンチック!」
「は?こいつとはそんなんじゃ……」
「もう!そんなんじゃないもん!まだ付き合ってないもんっ!」
「え、そうなの?まぁどっちにしろ頑張ってね♪」
「山本先輩まで……ひどいよ河西くん!」
「てへっ☆」
「クッソ覚えてろよ……!」
まさかの伏兵によって夜月と瑞樹は二人三脚のペアを組まされる。
一年生全体がそういう空気になってしまい、エントリーしざるを得なくなった。
夜月は他のエントリーでは騎馬戦と選抜リレーにエントリーする。
選抜リレーは男子4人と女子4人の各学年8人の選抜制になる。
瑞樹と天童、河西、そしてあおいもエントリーして水色組は強いんだと確信する。
エントリー項目を終えて、早速夜月は河西によっていじられる。
「幼なじみ夫婦はきっといいとこ行くと思うから頑張れよ!」
「お前覚えてろよ!」
「なるほどな、河西は空気を読めないんじゃなくて、『空気を読まない』奴なんだな。さすが陽キャってやつだぜ」
「クッソ、悪気がないから何やってもいいってわけじゃねぇんだぞ……」
「てか、夜月と水瀬も俺と同じ誕生日なんだな。なんて偶然なんだろうな」
「え、天童もなのか?」
「8月24日生まれだ。まさか同じ誕生日がこんな近くにいるなんてな。おまけに野球部でも一緒とか、俺らって実は他人じゃないとか?」
「そんなスピリチュアルなこと……あるかもな」
「まぁどっちにしろ体育祭では俺たちで一位を獲ろうぜ」
「だな。それがいいだろう」
体育祭のエントリーが決まり、各自出場競技の練習も兼ねて応援合戦の練習もする。
山本麗奈は見た目は黒ギャルだが、日焼けの理由はラクロス部で日焼けしているからである。
髪はパーマがかかったロングヘアで金髪に染めている。
スタイルもよくて健康的だからか、学校内でも抜群の人気を誇る。
ラクロスの実力も申し分なく、もう多くの大学がスカウトに回るほどなのだ。
そんな彼女の下で体育祭の準備と練習が行われ、ダンスとエール交換、そしてパフォーマンスなどをした。
そしてついに、体育祭本番の時が来た。
つづく!




