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第68話 バレンタイン~選抜出場

 2月に入り、学校の男子たちはチョコをもらえるのを待ちわびている……わけではなかった。


 何故なら新暦(しんれき)の日本のバレンタイン事情は、日頃お世話になっている人への感謝のチョコをプレゼントするという風習(ふうしゅう)があり、男女のどちらからでもプレゼントしてもオーケーなのだ。


 同性同士でチョコを渡しても何も問題はないし、恋人や家族、友達に恩師(おんし)など誰にでも渡していいのだ。


 そこで夜月(やつき)もバレンタインチョコをチームの全員や同じ寮の同級生に缶タイプの大盛りチョコを一個ずつ分け与えた。


もちろん夜月も例外ではなくもらう側にも回るのだ。


「あのね夜月くん! 日頃練習頑張ってるから……私からもお菓子をあげるっ!」


高坂(こうさか)、ありがとうな。しかもチョコが苦手なの知ってくれて感謝する。俺からもチョコを渡すよ」


「う、うん! ありがとう! 大輔(だいすけ)くんや夏樹くんにもね!」


「お! 俺にもくれるのか! サンキュー!」


「これは俺たちからのお礼だ。いつもマネージャーの仕事に感謝してるぞ」


「みんなありがとう!」


 あおいから部員全員にチョコを渡され、部員たちはマネージャーとはいえすごく嬉しかった。


 もちろん上原マネージャーにももらい、とくに上原マネージャーに()()()()()()()()中田は隠れて喜んでいた。


 もちろんバレンタインをきっかけに恋愛が成就(じょうじゅ)する事もあり、多くのカップルが誕生している。


 実際に天童も中学時代にバレンタインがきっかけで女子バレー部の伊吹麻耶(いぶきまや)とお付き合いしているのだ。


 ただし……バレンタインがどうしても苦手な人が、引退した三年生の中に一人だけいた……。


「渡辺くんっ! 私からのチョコを受け取ってくださいっ!」


「う、うん。ありがとう……」


「きゃー! 渡辺くんに渡せたーっ!!」


「参ったな……。またチョコをもらっちゃったよ……」


「そういやこれで132個目だな。渡辺は引退してもモテるんだな」


「小野くん、また今年も卒業前なのにみんなでチョコを食べ合う時が来たよ。僕は高校に入学してからバレンタインをもらうようになってね、それが『毎年100個を越えて全部食べないといけない』って思うと……。だから僕、それ以来チョコだけでなくお菓子全般が好きじゃなくなってしまったんだ」


「優しいが故の悩みだな。仕方ないな、俺も付き合ってやるから一緒に全部食べるぞ。他の元野球部たちにも声かけてやるからさ」


「いつもありがとう小野くん。いっそのこと後輩たちにも協力してもらおうかな」


「そうするか。俺たちはもう大学に入学が決まったし、そろそろ顔を出してもいいだろうしな」


「そうだね。みんな元気にしているかな?」


 こんな気になった会話もさておき、現在の硬式野球部は今日も練習に明け暮れている様子です。


 部員たちは女子にチョコをもらいまくり、風習が変わったとはいえ気にかけてもらえるのは嬉しいものだ。


 夜月は未だにあおい以外にはもらってないが、本人もまたチョコが好きじゃないのでもらえなくてもどうでもよかった。


 ところがその思惑(おもわく)は今年は外れそうだ。


 それはバレンタイン当日の練習を終えた後だった。


「まだかな(こう)ちゃん……」


「あれ? 瑞樹? どうしてここに?まさか晃一郎(こういちろう)を待ってて……」


「クリス……。てことはクリスもなの?」


「うん、晃一郎を待ってたんだ」


「そうなんだ……」


「あら? 皆さんもお揃いですか?」


「優子、ということは優子も……!?」


「そのようですね……」


 瑞樹とクリス、優子と続いて今度は有希歩(ゆきほ)、つばさ、麻美(あさみ)、さらにさやかまでと続々と夜月待ちの順番が並んできた。


 ただ瑞樹以外は『夜月がチョコがあまり好きじゃない事を()()()()』ため、うっかりチョコを手作りしてしまった。


 あおいは毎日部活で一緒なため、チョコではなくココアクッキーにすることで難を逃れている。


 しかしついに夜月が池上荘に帰ってきてしまった。


「あ、来た!」


「うーっす。ただいま帰りましたって……お前らどうしてここに?」


「あのね晃ちゃんっ! その……私たちで手作りのバレンタインを……晃ちゃんに渡したくて部活を早退したんだ! だから……受け取ってくださいっ!!」


「お、おう……サンキュ。瑞樹のは……俺の好物な方のミルククッキーか。高坂と同じで俺に気遣ってくれたのか。サンキューな」


「あ……でも他の子は晃ちゃんがチョコ苦手なの知らずに作っちゃった……!」


「え、そうなの?」


「そんな……! どうしよう……!」


「もう悩んでも仕方ないっ! チョコが食べれなくても受け取ってください!」


「つばさ!?」


「中村……気持ちは嬉しいし、苦手だからって食べれないわけじゃないから大丈夫だ。ありがたくもらうよ」


「本当!? やったー! さっすがあたしが見込んだ男だ!」


「どうやら杞憂(きゆう)だったようね」


「そうだね。それじゃあ私たちからも受け取ってね?」


「日頃の感謝と……本当はわたくしからの隠れた告白です……。受け取ってください」


「みんなありがとうな。俺もいいけど他の男子には渡したのか?」


「それなら心配いらないわ。もう全員渡してあるし、男子からも全員もらったの」


「晃一郎からのチョコも美味しかったよ。Thank you!」


「ちょ、クリス抱きつくなって! まったく、気に入った人を誰でもハグする噂は本当だったのかロビン先輩……」


「あ、私もハグされたよ」


「瑞樹もか……」


「あたしもハグされた」


「中村もか。多分女子全員そうだろうな」


「わかっちゃった?」


「クリスの事だからそうだろうと思った」


「えへへ…♪」


「さあ! 夜月くんもお疲れだし、そろそろ晩ご飯も出来てる頃だから早く中に入りましょう!」


「はーい!」


「あ、でも夜月くん。あなたは部活の報告があるの」


「俺に? いいけど……なんだ?」


「実は理事長室に先ほど電話があって――」


「は……? それってマジで……?」


 有希歩と夜月の気になる会話が公開されるのは翌日の話だが、夜月は有希歩の情報に驚く。


 それもそのはず、硬式野球部にとって嬉しい情報なのだから。


 翌日になると学校集会があり、理事長が自ら学校の連絡を入れる。


「皆さんおはようございます。突然ですが、この学校にとって最高のお知らせがあります。まず……昨年の秋季関東大会の優勝と、秋の明治神宮大会のベスト4進出の結果のおかげで……硬式野球部が春の選抜出場が決定しました」


 ざわざわ……ざわざわ……!


「そこで硬式野球部の皆さんには、このステージに全員立ってもらいます。では硬式野球部の皆さんどうぞ」


 夜月たち硬式野球部員はいきなり理事長に呼び出され、ステージに立つように(うなが)されてその場に行った。


 理事長は嬉しそうに野球部たちを見つめて微笑み、隣にいる生徒会役員に任命された有希歩もこちらを見ていた。


 理事長は突然マイクを取り出し、キャプテンである中田にマイクを向けた。


「春の選抜出場が決まった感想を主将である中田くんにお願いします」


「え、マジっすか……? 何か信じられねえっすけど……こいつらも一緒に頑張ったおかげで、みんなの応援のおかげでここまで来れた事を感謝してます。春の選抜で必ずいい結果を持ち帰るので、応援よろしくお願いします!」


「ありがとうございました。では(めい)っ子である有希歩から事前に聞かされた夜月くんからも一言お願いします」


「何で俺っすか? まあいいですけど……。えっと、ぶっちゃけ言う事がないんですけど……。まあ、ここまで来た以上は精一杯頑張ります」


「二人とも意外とシャイなのね。夜月くんはともかく中田くんがシャイなのは意外な一面ね」


「くっ……! さては理事長遊んでるな……!?」


長田(ながた)から聞きましたがいつもの事ですよ……」


「頑張れー野球部!」


「応援してるからねー!」


「ブラスバンドも応援頑張るからね!」


「絶対優勝してくれー!」


 まさかの発表に全校生徒からの温かい声援が送られ、本当に春の選抜に出場できたんだと実感する。


 それも二年連続で出場するのは珍しく、野球部たちは嬉しさのあまりにグラウンドに出ると喜びを分かち合い叫んだ。


 石黒監督が来ると、監督も監督で嬉しそうに選手たちの中に飛び込み、『選抜出場だー!』と叫びながらダイブしていった。


 選手たちは(いき)(はか)らいで監督を胴上げし、選抜出場の感謝を伝えた。


そしてここから……春の選抜が始まるのでした。


 春の選抜出場校一覧


 オホーツク大学付属札幌(さっぽろ) 北海道


 八戸(はちのへ)学院 青森


 仙台育栄(せんだいいくえい) 宮城


 花咲学苑(はなさきがくえん) 埼玉


 紅葉(あかば)学院 千葉


 習志野(ならしの)音楽大学付属 千葉


 東光(とうこう)学園 神奈川


 聖英(せいえい)学園 東京


 豊田(とよた)工業 愛知


 軽井沢(かるいざわ)長聖(ちょうせい) 長野


 新潟(にいがた)農業大学付属 新潟


 北陸(ほくりく)学園丸岡(まるおか) 福井


 弁天(べんてん)学園和歌山(わかやま) 和歌山


 天理(てんり)学園 奈良


 平安館(へいあんかん)大学付属平安館学院 京都


 大阪桐凛(おおさかとうりん) 大阪


 伊勢山(いせざん) 三重


 翔徳(しょうとく)学園 兵庫


 (くれ)市立瀬戸内(せとうち)工業 広島


 出雲(いずも) 島根


 香川県立讃州(さんしゅう)中央 香川


 徳島県立鳴門(なると)水産 徳島


 薩摩(さつま)実業 鹿児島


 琉球(りゅうきゅう) 沖縄



 特別出場枠


 旭川(あさひかわ)市立旭川農業 北海道


 秋田市立こまち農業 秋田


 川崎国際 神奈川


 東京都立二子玉川(ふたこたまがわ) 東京


 岡崎市立岡崎商業 愛知


 小松大咲(こまつおおさき) 石川


 京都府立宇治松(うじまつ) 京都


 岡山県立倉敷西(くらしきにし) 岡山


 敬徳義塾(けいとくぎじゅく) 高知


 長崎西洋文化大学付属 長崎


 ――となった。


 つづく!

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