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それいけ!東光学園野球部!  作者: 紅夜アキラ
第一部・第一章
22/175

第20話 溝の口高校

 東光学園野球部の初戦の相手は、川﨑市立(みぞ)(くち)高校となり、それぞれ調整して試合に備える。


 その試合当日の俣野(またの)球場では両校が今か今かと試合前のアップをする。


 シートノック中は吹奏楽によるモンスタークエストのオープニングこと序曲のマーチが演奏され、伝説の始まりを表して相手を威圧した。


 そしてこれからスターティングメンバーの発表だ。



 先攻・溝の口高校スターティングメンバー


 一番 センター 小坂秀斗(こさかしゅうと) 一年 背番号8


 二番 サード 引地雄太(ひきちゆうた) 一年 背番号5


 三番 ライト 中崎健(なかさきけん) 三年 背番号9


 四番 指名打者 柳原友次郎(やなぎはらゆうじろう) 三年 背番号11


 五番 キャッチャー 古谷綾人(ふるやあやと) 一年 背番号2


 六番 ショート 三田涼雅(みたりょうが) 一年 背番号6


 七番 レフト 船橋英三(ふなこしえいぞう) 二年 背番号7


 八番 ファースト 柴田卓也(しばたたくや) 三年 背番号3


 九番 セカンド 大咲友介おおさきともすけ 二年 背番号4


 ピッチャー 礒部大吾(いそべだいご) 三年 背番号1



 後攻・東光学園スターティングメンバー


 一番 センター 大島秋人(おおしまあきと) 三年 背番号18


 二番 キャッチャー 天童明(てんどうあきら) 一年 背番号2


 三番 レフト 夜月晃一郎(やつきこういちろう) 一年 背番号26


 四番 指名打者 中村鋼兵(なかむらこうへい) 三年 背番号15


 五番 ファースト 山岡正人(やまおかまさと) 三年 背番号25


 六番 ショート 志村匠(しむらたくみ) 二年 背番号6


 七番 ライト 三田宏和(みたひろかず) 二年 背番号19


 八番 セカンド 岡裕太(おかゆうた) 二年 背番号14


 九番 サード 中田丈(なかたじょう) 2年 背番号5


 ピッチャー 園田夏樹(そのだなつき) 一年 背番号21



 となった。


「今日は一、二年を中心としたメンバーで挑むぞ。あんまり三年に依存していると後輩たちの経験値が稼げないからな。もしヤバいと思ったらレギュラー陣を代打や代走などに出すから安心してくれ」


「はい!」


「今日のキーマンは……山岡、君だ」


「俺ですか?」


「今回は一年が主力のフレッシュな相手だ。やはり機動力(きどうりょく)で攻めてくるだろうから一塁到達記録は速いはずだ。そこで君のロビンよりも優れた捕球力にかかっている。ファーストだからというのもあるかな」


「わかりました! 頑張ります!」


「今回のオーダーに批判的な事もあるだろうが、俺は全く気にしないぞ。『下の世代を育てる』のも監督の役目だ。ただ相手が強いとわかったらレギュラー中心になるだろう。それでも勝つのはうちだ! こんなに相手がいて試合が出来るなんて恵まれた環境で野球が出来る事に感謝し、ご両親や学校に感謝し、精一杯試合を楽しみつつ勝とう!」


「はい!」


「全員整列!」


「よし! いくぞ!」


「おー!」


「ただいまより、市立溝の口高校と東光学園の試合を行います。両者主将握手!」


「お願いします!」


「では、礼!」


「お願いします!」


「斉藤先輩、マネージャーも顧問もユニフォームなんですか?しかも上と帽子だけ……?」


「ああ、一年は知らないんだったな。新暦(しんれき)からはマネージャーは背番号27、顧問(こもん)の先生は28、ヘッドコーチは29、そして監督は30という規定に変わったんだ。マネージャーは27人目の選手、顧問とコーチ、監督はスタッフだけど選手と一緒だという連盟からの新アイデアなのさ」


「へぇ……」


 川口が斉藤に質問を投げ、斉藤は石黒監督から聞いたことをそのまま話す。


 マネージャーも最後の選手であり、スタッフも共に戦う仲間という事で新たな高野連(こうやれん)からの改革でこうなったのだ。


 園田がマウンドに上がり、投球練習で肩を慣らした。


 ボールバックでは天童が全力で二塁まで投げ、そう簡単に盗塁は出来ない事をアピールした。


 二塁送球到達記録は非常に速く、天才キャッチャーはダテじゃないと溝の口高校ベンチは感じた。


「一番、センター、小坂くん。背番号8」


「さあ来い!」


「インコースが強いんだっけな……。ただアウトコースも狙ってる可能性もあるが、いきなりインコースはリスクが高い、ここはアウトコースのスライダーで様子を見よう」


「俺がサウスポーだからそうなるか。まあ相手は左打ちだからここは……そうだな!」


「うわ、はや……!」


「ストライク!」


「これが…名門東光学園か……!」


「ふぅ……」


「ナイスボール!いつもクールなお前が随分熱いな!」


「あいつ本当に一年かよ……俺たちと同い年なんて信じられねえ……。今までの相手は何だったんだ……?」


「小坂ビビるな! 相手は同じ一年だ! ビビったら負けだぞ!」


「そうだ……ここでビビったら負けなんだよな。サンキュー引地」


「こいつさっきの投球でビビったかと思ったらもう立ち直ったぜ。もうここまで来たら小細工(こざいく)は通用しない。真っ直ぐでビビらせてやる」


「単純だな天童。だが俺もそれには賛成だ。いくぞ!」


「ストレート……え?」


「ファースト!」


「オーライ!」


「くっ……」


「アウト!」


 園田は真っ直ぐのサインを出されたが、園田の真っ直ぐのサインは二種類ある。


 普通のストレートと、インコースに()()()()ストレート、つまりツーシームだ。


 天童は頭が悪いので変化球ごとにいちいちサインを考える暇もなく、『覚えるのも大変だから』と似た方向の変化球を()()()()いるのだ。


 それには欠点があり、投手側にちょっとでも癖があってそれがバレたらその方向の変化球が来るのが読みやすい事だ。


 逆に言えばお互いに覚えやすく、投手が選択肢をもらうことで好きな球を投げれてリラックスしやすいのもある。


 そのリードで引地と中崎を簡単に打ち取った。


 東光学園の攻撃では東京・中山競馬場(けいばじょう)で演奏される競馬の一般ファンファーレから攻撃が始まる。


「相変わらず吹奏楽部の音は音の暴力だな……」


「知ってるかい?あれで大会に(のぞ)むメンバーは一切来ていないんだよ?」


「あれでですか!?」


「マジっすか!? だってあんなに人数いるのに!」


「それは卒業生やマーチング部、ジャズ研究部などのブラスバンド系の楽器を使う部活が一気に集まってるからさ。主力は大会に集中させ、余裕があったら来てもらうようにしているんだよ。野球部の応援に力を入れすぎて大会が(おろそ)かになるのは僕たちとしても申し訳ないからね」


「じゃあ遠藤も来てるかもしれないですね」


「遠藤……ってことは遠藤麻美(えんどうあさみ)さんか? あいつお前んとこの寮の子だろ?ファンファーレを吹いてたな」


「彼女の実力はすごいね。君から聞いた通りだよ」


「まあそうっすね」


「じゃあ行ってくる」


「大島先輩ファイト!」


「この先輩は本当に背番号が18なのかな……。なんだか大きいのは打てなくても嫌な打球とか打ってきそうだ。ここは真っ直ぐのアウトコースで様子見だ」


「はずれるかどうか微妙なところへ……ふんっ!」


「ボールか……?」


「ストライク!」


「オッケー! ナイスボール!」


「あれでストライクか。この審判はアウトコース緩めかな。じゃあいっそのこと……」


「オープンスタンスから普通に戻した……? じゃあアウトコースを積極的に振る気だな。アウトコースは危険だ、インコースに真っ直ぐだ」


「確かにこれは怖いな……。じゃあインコースでいくぞ! あ……」


「何か甘くない……?」


「もらった!」


 大島はインコースを意識させながら甘い球が来るのを待っていて、打った打球はそのままライト前ヒットとなった。


 二番の天童はフォアボールになり、ついに夜月の公式戦デビューとなる。


「ふぅ……」


「こいつが不運のスラッガーの夜月晃一郎か。暴力事件の原因は何だかわかんないけど、とにかく悪いやつじゃないのはオーラでわかるな。それよりもこいつはインコースが苦手だったはず。アウトコースで誘っておこう」


「そうするしかないな。ふんっ!」


「ストライク!」


「夜月! 無駄な事は考えなくていいぞ!」


「ここはやはり……好きに打ってもらうか」


「うす」


 石黒監督は送りバントも考えたが、夜月がバントが苦手なのを知ってたのかバントのサインのフェイクを入れる。


 溝の口高校の内野陣はバント警戒のままで、ちょっとだけ内野は前進守備をする。


 溝の口高校バッテリーはインコースへスライダーを決め、そのサイン通りに投げ込む。


「インコースかよ……だが甘い!」


「なっ……!?」


「やった! 右中間(うちゅうかん)だ!」


「大島さん回れ回れ!」


「よっしゃ! いきなり1点目!」


「うおー夜月ー!」


「ナイスバッティング!」


「けどちょーっと詰まったんじゃないw?」


「うっせー! ヒット打てれば何でもいいんだよ!」


 少しだけ夜月へのいじりがベンチに飛び、いかに楽しんでいい雰囲気で野球しているかが溝の口高校から伝わった。


 点が入ると『Take me out to the ball game』が演奏され、本場アメリカの野球をリスペクトしつつ点が入るいつものゲームに感謝する目的で最近選曲されたものだ。


 ロビンが入学してからこの曲が取り入れられ、この学校がいかに『野球を愛している』かがわかる。


 そして一方、夜月はインコースに確かに弱いが、その代わりに得点圏にランナーがいればジャストミートしなくても安打率が上がる。


 とくに満塁だとより力を発揮し、中学時代は何度もチャンスで打点を稼いだのだ。


 だが中学の時はチームメイトや指導者に恵まれず、不運のスラッガーとして神奈川県で有名になったのだ。


 そんな中で夜月は点を取り、次の中村と山岡もヒットを放って2点目を取った。


 しかし志村と三田、そして岡の二年生が一年の活躍に力みすぎたのかボテボテ続きでチェンジ。


 溝の口高校ナインは名門相手に2点で済んだことにホッとしたようだ。


 おまけに東光学園の二軍とはいえ音の暴力と、大人数による声の暴力から解放されて安心してしまった。


 そのアルプスにはチア部のクリスと吹奏楽部の麻美が応援団として参加している。


 ここから2回と3回、4回の攻撃はとくに進展がなく、5回の表もとくに点が入る事がなかった。


 このまま弱小校相手に互角の勝負となってしまうのか……。


つづく!

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