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それいけ!東光学園野球部!  作者: 紅夜アキラ
第四部・最終章
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第163話 ドラフト

 10月に入ると野球部にとって大きなイベントがある。


 そのイベントは野球部員たちがプロ野球選手になるための日本中が話題になる大きなイベントだ。


 それは……プロ野球ドラフト会議だ。


 三年生にとってプロに進むための一大イベントであり、高校日本代表を終えた天童(てんどう)(さかき)も合流して部室でその様子を見る。


「まさか天童と大輔(だいすけ)がドラフトを受けるとはな」


「だなー。オイラたちはそんな未来のプロ野球選手とチームメイトだったと思うと自慢(じまん)出来るぞー」


「そんな大げさなものじゃないさ。選ばれたとしてもそこからがスタートだからさ」


「そうだな。ドラフト指名はあくまでも通過点。大事なのはなった後だ」


「やっぱり東光学園に入ると自信と謙虚(けんきょ)が両方手に入るんだな。石黒監督には感謝しかねえな」


「だな。それよりも夜月(やつき)、学校が大変なことになってるんだな。卒業生が何とかするとは言ってるがいいのか?」


「俺たち学生が行動したら、あいつらを変に刺激してしまう。だからこそ卒業生で()()()()()()に任せればいいんだ。素人の学生が横やり入れても逆効果だろうしな」


「確かにそうだな。俺たちもドラフトに選ばれたら野球に集中しなきゃだしな。だとしても形は違えど一緒に学校を守っていこうぜ」


「ああ」


「あ! もうすぐ始まるぞ!」


「ただいまより、新暦(しんれき)2011年度、プロ野球ドラフト会議を始めます」


 ドラフト会議が始まり、日本中の硬式野球の名門高校や大学、実業団や独立リーガーたちが注目する。


 東光学園も二人ほどドラフト指名を待っているので学園全土で中継を見る。


 最初の一位指名は――


球詠(たまよみ)ジャイアンツ、一位指名――金浜(かなはま)高校ピッチャー、赤津木暁良(あかつきあきら)


関西(かんさい)タイガース、一位指名――金浜高校ピッチャー、赤津木暁良」


「名古屋ドラゴンズ、一位指名――平安館(へいあんかん)学院高校外野手、鈴木次郎(すずきじろう)


「東京神宮(じんぐう)スワローズ、一位指名――帝応義塾(ていおうぎじゅく)大学内野手、坂田大吾(さかただいご)


「広島カープス、一位指名――東光学園ピッチャー、榊大輔(さかきだいすけ)


「横浜ハムスターズ、一位指名――横浜工業高校ピッチャー、山中俊介(やまなかしゅんすけ)


「福岡ホークス、一位指名――金浜高校ピッチャー、赤津木暁良」


「大阪バッファローズ、一位指名――平安館学院高校外野手、鈴木次郎」


「千葉マリーンズ、一位指名――東光学園キャッチャー、天童明(てんどうあきら)


札幌(さっぽろ)ファイターズ、一位指名――東光学園キャッチャー、天童明」


「東北イーグルス、一位指名――平安館大学キャッチャー、野々原大地(ののはらだいち)


「埼玉ライオンズ、一位指名――東光学園ピッチャー、榊大輔」


「赤津木が圧倒的だな」


「あいつは正直言って俺よりも上だからな」


「何度も甲子園をうならせた大エースだしな」


「あのY工(ワイこう)の山中も選ばれたんだなー」


「山中、お前はあの幼なじみと結婚して生活費を野球で稼ぐんだな……」


「山中って学生結婚したらしいな。夜月は()()()()みたいだけど」


「なんせ来月には結婚すると知らされたからな。俺なんて結婚はまだかなり先なのによ」


「5歳も年下だから待つしかないだろうな。さあ天童と大輔のくじ引きだ」


 各球団の監督がくじ引きを引き、それぞれ交渉権を獲得すべく運に任せる。


 すると最初は赤津木のくじ引きで、その交渉権を得たのは――


「赤津木の交渉権は球読ジャイアンツに決定しました!」


 こちらは金浜高校、赤津木はジャイアンツに指名されたことに喜び、兄で監督の赤津木暁人(あかつきあきひと)は頭をポンとした後に撫ではじめる。


 中学からの黄金バッテリーの神田は補聴器が付いていることを忘れるくらいに喜び、赤津木に抱きついたりした。


 マスコミが赤津木にたくさん駆け寄り、一斉にインタビューをする。


「赤津木くん! 今のお気持ちをどうぞ!」


「そうだな……高校の()()()()の俺がプロ相手にどこまで通用するかを試してみたい気持ちでいっぱいです。でもそれよりもまず、選んでくださったジャイアンツさんの勝利に貢献(こうけん)できる最強のエースになってみせます。個人記録よりもまずチームの勝利、ただそれだけを優先します」


「自信の中にも謙虚がありますね。さすが高校の大エースです。ありがとうございました!」


「続いて鈴木次郎の交渉権です。結果は――大阪バッファローズになりました!」


 平安館で東光学園を苦しめた百年に一度の天才である鈴木次郎ことジローもバッファローズが交渉権を得る。


 平安館ではジローが微妙な顔をしつつも選ばれたことに安堵していた。


 普段から木製バットを使用していて、プロの木製バットへの慣れは問題なさそうだった。


 問題は榊と天童がどこに入るかだ。


 まだくじ引きを引かれてない二人はどこに入るのか緊張しながら見守っていた。


 そしてついに天童の番だ。


「天童明は千葉マリーンズと札幌ファイターズが一位指名しています。果たして交渉権を得るのはどっちだ……!? 決まりました! 千葉マリーンズが交渉権を得ました!」


「千葉マリーンズか!」


「おめでとう天童」


「これでプロ野球選手になれたな!」


「おめでとう天童!」


「ありがとう……!」


「天童くんおめでとうございます!」


「ありがとうございます!」


「今のお気持ちと今後の目標をお願いします!」


「そうですね、まずはプロの環境に慣れることですね。プロはまず厳しいレギュラー争いがあると聞きます。そこで勝っていずれは……もう一度日の丸を背負えるような選手になりたいです」


「赤津木くんと同じ自信と謙虚……やっぱり天才キャッチャーは違いますね!」


「あ、でも一つ訂正(ていせい)させてください。俺は最初から天才なんかじゃなかったんです。努力もそうですが、みんなのサポートがなければ天才と呼ばれるほどの選手になれなかったと思ってます。監督やチームメイト、家族の皆さんには感謝しかありません。ここまで育ててくださってありがとうございます」


「おおー!」


 天童の感謝の言葉を聞いたマスコミはスターティングオベーションをし、東光学園には人格者しかいないのかと驚かれた。


 榊は隣でそれを聞いて『俺が言おうと思ったのに! これじゃあ同じこと言っても(かす)むじゃないか!』と突っ込みを入れた。


 笑いもある中でのドラフトは盛り上がり、次は榊の交渉権だ。


 広島カープスと埼玉ライオンズが一位指名をしていて、榊は緊張した様子でモニターを見つめる。


 するとその結果は――


「決まりました! 広島カープスが交渉権を獲得!」


「おおー!」


「あそこは機動力のチームだから相当走り込むぞ!」


「心配すんな! 走り込みはうちで慣れてるさ!」


「とにかくおめでとうだぞ!」


「ありがとう!」


「大輔、おめでとう。俺は大学でもう少し修行してからプロに進む。それまでに敗戦投手になるんじゃないぞ」


「サンキューな夏樹。お前の分まで成長してみせるぜ」


「榊くんおめでとうございます!」


「ありがとうございます!」


「今のお気持ちと意気込みをどうぞ!」


「そうですね、やっぱり赤津木に負けない最強のエースになれるよう頑張ります! 天童に先越されましたが、俺も家族や仲間たちには感謝しています! そんな家族や仲間の期待に応え、プロで結果を残していきたいと思います!」


「ありがとうございました!」


 こうしてドラフト会議は終わり、一位指名から下位の九位指名まで終える。


 育成指名もかかったが、そこには園田と山田は大学希望だからともかく、他に有名選手の有原の指名はなかった。


 それもそのはず、有原は常海(じょうかい)大学へ進学が決定したのだ。


 一方の東雲(しののめ)は三位指名で関西タイガースが決まった。


 ドラフト会議の翌日、学校の横断幕(おうだんまく)に榊と天童の名前が書いてあった。


 『祝!広島カープス一位指名 榊大輔』


 『祝!千葉マリーンズ一位指名 天童明』


 しかしあれだけ勝負強さを見せてプロも注目していた夜月は指名すらされなかった。


 そのことに学校はざわついて噂になった。


「なー夜月、何でお前はドラフト指名されなかったんだ? あんなに甲子園で席巻(せっけん)したじゃないか」


「ああ、俺は大学を受験して指導者の資格を得ようと思う。瑞樹は知ってると思うが、俺がプロに行く気がないってのもある」


「本当? どうしてプロに行く気がないのかな?」


「俺のレベルじゃあプロは()()()()()だろうしな。それにプロになったとしてもこれと言ってやってみたいこともないし、何より勝負の世界でやっていける気がしないからな」


「なるほどな、夜月らしいぜ」


「野球部や監督は知ってるのか?」


「知ってるさ。そもそも俺がドラフトに選ばれたら間違いなく奴らは邪魔してくる。狙われてる身としては目立たない方がいいんだ」


「そっか。お前がそうしたいなら俺らからは何も言わないさ。とにかく天童と榊は学校ですごい人気だな」


「プロ野球選手になれたんだもん。そりゃあ人気になるよ」


「しかし夜月が指導者の資格か。お前らしいな」


郷田(ごうだ)は日本海軍、黒崎は教師になるために帝国大学、林田は神宮学園大学、阿部は車の製造だもんな。河西(かさい)は大学行かないのか?」


「俺は早く働いて結婚してーからな。だからサラリーマンになるんだ。サッカーからは高校で終わらせるさ」


「そうか。昔はサッカー選手になると言ってた河西がやめるのか。けど藤通(ふじつう)って確か川﨑フロンターズの親会社だったな」


「そうだな。もうサッカー選手としてはプロとしてやっていける自信がないからな。だから裏方でもなんでもサッカーに(たずさ)わりたくてプロサッカーチームを持ってる会社に就職するんだぜ」


「考えてないようでちゃんと考えてるんだな」


「黒崎どういう意味だよ!? さすがにひどいぞ!?」


 こうして各自進路も決まり、夜月は将来的には学生なのか会社で後輩の面倒を見るのか指導者の資格を得て下の人を導く立場になろうとしている。


 他にも清原は野球をやめてとび職に、田村は自営業を始め、松田はお笑い芸人になるべく養成所に、木村は持ち前のトーク力でホストに就職、高田は日本放送テレビという国営放送の事務員に就職した。


 川口は専流(せんりゅう)大学で野球の修行をして社会人野球を目指すようだ。


 それぞれ進路が決まり、それぞれの道を歩むのであった。


 その前に東光学園では学生運動の準備を進めていた。


 つづく!

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