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それいけ!東光学園野球部!  作者: 紅夜アキラ
第一部・第一章
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第10話 合宿の3日間

 夜月(やつき)は寮長の松下に合宿がある事を伝え、必要な荷物をまとめて準備する。


 寮を一時的に出る挨拶をみんなに済ませて『合宿専用寮』へと移動した。


 そこには通いの生徒も何人かいて、硬式野球部全員が揃う。


「遅くなりました!」


「おお、そういえば夜月の寮が一番ここから遠かったな」


「いつもグラウンドに一番乗りの夜月が遅刻とは珍しいよね」


「申し訳ありませんっした」


「確かに君が最後だけど謝る事はないさ。実家組(じっかぐみ)は先日から泊まっているし、寮に住む部員は当日しか受け入れてないから一番遠い君が遅刻するのは普通だよ。それよりも練習着に着替えてね。もうすぐ練習が始まるから」


「あ、はい!」


 夜月は遅刻を極度に嫌う性格だが、今回は寮からの距離が遠くて余裕を持ってしても遅くなる。


 ギリギリ遅刻しなかったのは予定よりも早い出発をしたからで、もし予定通りの時間ならばもっと遅かっただろう。


 そんな中で1日目が始まり、最初は軽めのアップから始まる。


 キャッチボールも各ポジションごとに変わったキャッチボールをして身体を慣らす。


 最初の1日目は走力(そうりょく)中心で、ダッシュだけでなく陸上部短距離直伝(じきでん)の走り方を実践(じっせん)する。


 自重(じじゅう)トレーニングで腸腰筋(ちょうようきん)を鍛え抜き、体幹トレーニングもするので走る以外のメニューもこなした。


しかしベンチ入りした一年にとってはそのメニューは厳しく、もう既に腿(もも)が上がらなくなっていた。


「マジで……走るのに脚(あし)の筋肉だけじゃダメなのかよ……!」


「今までただ全力で走ればいいって思ってたわ……!」


「二年目の俺でもキツイわこれ……!」


「とりあえず水を飲むんだ。じゃないとこの夏を乗り切るのは厳しいぞ」


「ホセ先輩……」


「お前たち一年ならともかく、中田は走り込み不足だな。もっと痩せた方がいいぞ」


「小野先輩に言われると何も言えねぇ……!」


 二年生の中田は体重が非常に重く、筋力はロビン以上だが体脂肪(たいしぼう)も多めで走るのに苦戦をしていた。


 夜月は元々不器用なのに身体能力任せだったが、今回の走り込み合宿で同じ寮の阿部が何故こんなに足が速いのかを理解できた気がした。


 しかし残酷にも休憩を終えると、すぐにまた新たな走り込みメニューが始まる。


 パラシュートやゴムチューブをつけてダッシュを繰り返す。


パラシュートはかなり本格的で、走り込み用のものなので耐久性(たいきゅうせい)は問題なく使える。


 続いて何故かグラウンドの出入り口周辺の駐輪場(ちゅうりんじょう)にママチャリが並べられていた。


「あの……キャプテン、これは何ですか?」


「ああ、これはただ固定されたママチャリを全力で30秒漕(こ)ぎ続け、10秒間でゆっくり漕いでまた30秒全力のインターバルさ。これを連続で20回を3セットやるんだ」


「ひぃ~……!」


「マジっスか……!」


「これはホセくんでも苦労していたが、小野くんだけはこのメニューが好きみたいでね。この合宿のバラエティメニューのおかげで足腰が強くなったって言ってたんだ。とくに投手陣やしゃがみ姿勢の多いキャッチャーには最適だね」


「天童、いくら天才のお前でもこのメニューをこなせるかな?」


「正捕手になった以上は田中先輩に負けないですよ!」


「言ってくれるね。俺も正捕手(せいほしゅ)の座を譲(ゆず)ったわけじゃない。来年にはお前から奪(うば)ってみせるよ」


「またキャッチャー二人が熱くなってんぞ」


「そう言ってるけど抑えで体力がない敦にとっていいメニューだぞ」


「うぐ……ホセに言われなくてもわかってるわ!」


 自転車を必死に全力で漕ぎまくる部員たち。


 しかしスタミナがない斉藤と中田はもう一回目で疲れ果て、足腰の強化が課題となった。


 夜月は普段から自転車で移動しているのもあってか慣れてはいるものの、練習として漕ぐのははじめてなので徐々に疲れが目立ち始めた。


 しかしそんな中でも小野だけは息が乱れる事がなかった。


 疑問に思った園田が勇気を出して小野に質問する。


「あの……何でそんなに平気そうなんですか……?俺たち投手陣でさえキツイのに……」


「ああ、俺は毎日練習後に寮に帰る前に10キロメートルも走り込んでいる。それだけだ」


「それだけって……。もうマラソン選手じゃないですか……!」


「それ以外何もない。投手は走れなくなったら終わりだ」


「彼は10キロメートルを毎日、しかもかなりのハイペースで走れるんだ。しかも陸上部の長距離やマラソン・駅伝部の助っ人にも参加したことがあってね、そこの部員でさえ敵わないほど長距離に強いんだ」


「そうなんですか……!」


「お前たちも投手なら走り込むんだ。走り込むとスタミナやコントロールが身につく。ただそれだけが目的じゃないが、自分たちで何なのかを考える事だ」


「そ、そうですよね。自分から考えないと道は出来ないですよね」


「ああ」


 園田は小野の走り込み論に興味を持ち、スタミナやコントロール以外に何があるのかをずっと考え込んだ。


 自転車メニューはまだ続き、全力で漕ぎつつも途中でバテはじめてスタミナの限界を全員思い知った。


 最後は坂道をダッシュで100メートルを全力で走る。


 それも陸上部が教えたスプリントのフォームで走るだけでなく、外野手は背走も加えて合計それを20本する。


 外野以外はダッシュだけで40本だが、外野はダッシュ20本に加えて背走(はいそう)20本なので今回は外野が厳しそうだ。


 ホセと渡辺、そして夜月は追加メニューをこなす。


 ハードル走やハードルを使ったドリルをこなした後は有酸素(ゆうさんそ)運動で、20キロをマラソンしてきた。


 それもタイムではなくフォームとタイムの両方を意識して走るので、いかにフォームを意識して速く走り、変な癖をつけないで走れるかだ。


 もちろんベンチ外のメンバーも一緒にこなすので不平等(ふびょうどう)でも不公平でもないのだ。


 スタミナに自信のあった榊(さかき)でさえ最後の最後でバテてしまい、小野の無限のスタミナに部員一同は感心するばかりだった。


 それもただの走り込みだけでなく、さまざまな道具や他競技(たきょうぎ)のものを使ったバラエティある厳しい練習なので、頭の方もリフレッシュ出来た。


 合宿1日目終了後は一年生は全員倒れ込むほどに眠ってしまい、晩ご飯もあまりの練習の厳しさに食が進まなかった。


 二年生はギリギリ食べれていて、三年生はさすがに慣れているのかたくさん食べていた。


 大食いの清原でさえ食欲がわかなかったので、今回の夏の合宿がいかにハードかが伺えた。


 こうして1日目を終えて2日目に入る。


 2日目はミート力とパワーで、フォームを意識しつつ限界の重さで挑むウエイトトレーニング、さらに鉄棒や重りの付けたバットの素振りを各自のペースで300回、テニスラケットやシャトル打ち、卓球ボールティー、ゴルフスイングなどバッティングに適した厳しいメニューが課された。


 3日目では守備練習で、タイヤを引きずりながらのシートノック、マスクをしながらのアメリカンノック、ジャベリックスローやアメフトボール遠投、ショートバウンドキャッチボール、そして連携確認のための講習会など守備に特化したメニューをした。


 4日目以降からが本番で、一体何が起こるのか一年生にとっては不安がよぎった。


果たしてそのメニューとは――


つづく!

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