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それいけ!東光学園野球部!  作者: 紅夜アキラ
第三部・第一章
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第111話 新入生入学再び

 4月に入り、ついに東光学園の2011年度の入学式が行われた。


 硬式野球部も新一年生の入部を今か今かと待ちわびていた。


 石黒監督もまた新人を楽しみに世界中を飛び回ってスカウトし、その一年生が来るのを待っていた。


 すると入部届がもう既に10人も来ていたが、それ以降は音沙汰(おとざた)がなかった。


 それでも新入部員が10人も入った事に喜び、第一野球場はもう既に歓迎(かんげい)ムードになっていた。


 その一番乗りで来たのはなんと二人組だった。


「純平くん、本当にここに夜月(やつき)先輩がいるのかな?」


世奈姉(せなねえ)さんの言う通りなら間違いないはずです。夜月先輩はこの硬式野球部にいるはずです。第一野球場は……ここですね」


「淡々としているけど、夜月先輩になると本当に熱いね。しかし本当に地方球場並みの規模だね」


「そうですね。ここで僕たちの高校野球が始まると思うと緊張しますね……」


「そうだね。あ、多分あの人先輩かも! すみません! 入部希望者なんですけども!」


「ん? おおー! 新入部員が早速来たんだな! お前らがなんと来たのがはじめてなんだ! 早速グラウンドの方に入るから準備してくれ!」


「は、はい!」


 通りかかった天童によって新入生二人が声をかけられ、ついに二人は第一野球場の更衣室へ入る。


二人の名は井吹純平(いぶきじゅんぺい)水瀬光太郎(みなせこうたろう)


 井吹は夜月の後輩で少年野球からの付き合いがある。


 ピッチャーをやっているが体力がないために基本的に中継ぎや抑えを務めているようだ。


 もう一方の水瀬は幼なじみの瑞樹(みずき)とよく似ているであろう。


 それもそのはず、二つ下の弟で同じく少年野球からの付き合いがあるもう一人の幼なじみだ。


 野球では打撃も守備も勘が鋭くて平凡ながらも非凡な予測能力を持っている。


 そんな二人が入部すると続々と新入部員が集まった。


「もうすぐ主将が来るからここで待っててくれ」


「はい!」


「そういや主将って誰なんだ?」


「去年は任命式とか投稿も配信もされなかったしね……」


「誰が主将だろうと関係ないぜ。俺はレギュラーを取ってみせるんだからな!」


「ロビン先輩に憧れ米国から留学して幸福と思いたい所存(しょぞん)である」


「何か古い日本語使ってる外国人がいるな……」


「あ、来た! おはようございます!」


「うす。じゃあ新入部員っていうのはお前らか。この硬式野球部の主将の夜月晃一郎(やつきこういちろう)です。よろしく……」


「ほら! やっぱりお兄さんだよ!」


「夜月先輩! 会いたかったです!」


「光太郎に井吹……!? 何でお前らまで!?」


「瑞樹お姉ちゃんに聞いて入学を決意したんです! それに純平くんも従姉(いとこ)の情報で入学先を決めたらしいんですよ!」


「従姉……?」


池上荘(いけがみそう)に住んでる白波吹世奈(しばぶきせな)です!」


「嘘だろ!? あの女優の白波吹がお前の従姉!?」


「はい、実はそうなんです」


「だから銀髪で髪型が似てたのか……! まあいいや、新入生はこれから名前と出身中学、そして希望ポジションと抱負を言ってもらうぞ。では最初は……お前からだ」


「はい! 大阪市立道頓堀(どうとんぼり)中学出身の前沢賢太(まえさわけんた)です! 希望ポジションはなし! 初心者ですがレギュラーを勝ち取ってみせます!」


「身の程知らずな初心者が来たか……。絶対退部するかもしれねえな」


「そう身構えるなよ清原」


「多摩市立永山(ながやま)中学出身、布林太陽(ぬのばやしたいよう)です! 希望ポジションはサードです! のびのび野球に憧れてここに来ましたが精一杯頑張ります!」


「布林くん……何で彼がここにいるんですか?」


「ああ、去年純平から全打席ホームランを放った人だね。まさか同級生になるなんてね」


「リベンジをしたかったのですがまあいいです。僕の番ですね。川崎市立神木(しぼく)中学出身! 井吹純平! 希望ポジションはピッチャー! 体力には自信がないですが頑張ります!」


「同じく神木中出身! 水瀬光太郎! 希望ポジションはセカンドです! 井吹くんに負けないように頑張ります!」


「おー井吹と水瀬、お前らも来たのか」


木下(きのした)先輩もここだったんですね。夜月チルドレンは揃いましたね」


「夜月、何だか(した)われてるな」


「うっせ」


「横浜市立青葉台(あおばだい)中出身、西野崇(にしのたかし)です……。希望ポジションはショートです……」


「声が小さいな! でもチームメイトなら大丈夫だ!」


「目黒区立田園都市(でんえんとし)中学出身、佐藤雄大(さとうゆうだい)です。希望ポジションはピッチャーです。精一杯野球を楽しみます!」


「おーいい笑顔だなー! オイラは気に入ったぞ!」


「ふーん、俺たちもついに先輩か」


「そうですね。これからは気を引き締めていかないとですね」


「よっしゃー! 今日から俺たちは先輩だー!」


「うるさいぞ津田」


 他にもジャイロボーラーでオカマのピッチャーの花宮涼(はなみやりょう)


 頭はクールに心はホットなキャッチャーの川崎隼人(かわさきはやと)


 ドミニカから来たホームランバッターのサントス・ロナウド。


 アメリカから来た二刀流の選手で日本語が古いジェームズ・ワシントン。


 喉の病気で喋れないがバッテリー以外ならどこでも守れる両利きのユーティリティプレイヤーの影山塁(かげやまるい)


 外野全般を守れる日系ブラジル人の飯島(いいじま)ヒカルドが入部した。


 布林に至っては元々太っていたが受験で10キロ太り、もはや全体的にふっくらした体型となっていた。


 そして伝統の体力テストではミート力は西野、川崎、影山がいい成績だった。


 パワーはジェームズとサントスを除けば前沢が圧倒的で初心者とは思えないパワーで、夜月たちは驚いた。


 走力では意外にも前沢が速いタイムを出し、他にも飯島や西野、影山、佐藤、水瀬がいいタイムを出した。


 肩力はピッチャー陣はさすがの肩で、布林と西野、川﨑が好送球(こうそうきゅう)を、ジェームズがバズーカボールを投げるなど強肩の世代となった。


 守備力と捕球力はサントスとジェームズが甘く、水瀬と川崎、影山が名守備を見せつけた。


 投手陣の様子は――


「球速はジェームズがダントツだな。井吹は球こそ遅いが何か打ちづらいんだよな。花宮は球速はそこそこあるし心読めるのが怖いわ。それともう一人……球速は最悪だがアンダースローの佐藤だな」


「ああ、あの身長の高さからのアンダースローは余計に浮いて見えるから怖いな」


「俺たち三年組も負けてらんねえな!」


「お前は先発に転向したんだし全開癖(ぜんかいぐせ)と体力の消耗(しょうもう)を克服してくれよな」


「園田は厳しいな!」


「それが夏樹だからな」


 球速ではジェームズが圧倒的も制球力に少しだけ難があり、松坂や榊と同じタイプだった。


 ただ無駄な力を入れずにリラックスして投げてるので外国人特有の投げ方でムービングボールをよく使う。


 逆に制球力では佐藤と井吹、そして花宮が優れており、今世代のピッチャーは軟投派(なんとうは)が多いイメージになった。


 変化球では佐藤は小さな変化球に強く、井吹は内と外の使い分けが上手く、花宮は内外と使い分けられる上にジャイロボーラー、そしてジェームズは速球からのチェンジアップで緩急をつけられていた。


 最後のスタミナでは――


「はあ……はあ……!」


「井吹は体力がないんだな。それで投手は大丈夫か?」


「あいつは野球を始める前までは病弱(びょうじゃく)でよく入院してたからな。だからあんまりハードな練習はさせずに効率のいい練習をさせてここまでにしたんだ」


「夜月ってお前……指導者に向いてるんじゃないか?」


「そんなわけねえだろ。そうやって中学時代に進言して顧問や監督に嫌われたんだからよ」


「ウザがられてたんだな。最低の指導者だな本当に神木中は」


「だから木下も光太郎も、井吹でさえ野球部を辞めて草野球で野球の勘を(やしな)ったんだ。そして俺についてきた。俺自身があいつらの期待を裏切るわけにはいかないから頑張らなきゃな」


「夜月……! お前一年の頃はあんなに卑屈(ひくつ)だったのに成長したな……!」


「忘れろ」


 スタミナでは井吹とサントスはスタートして1キロでバテてしまい、スタミナのなさで厳しい練習を乗り切れるか少しだけ不安が残る。


 そんな中でも水瀬と佐藤、影山、ジェームズはそんな疲れた状態でもタイムがよく、おまけにフォームも乱れてなかったので期待できる。


 花宮はタイムこそ遅いが安定したペースで走ってたのでスタミナは悪くないという判断になった。


 もちろん夜月たち先輩も体力テストを行い、あおいたちにデータを残してもらって成長過程を見る。


 なんと上級生全員去年の記録を上回っていて成長したんだと実感した。


 そして当然ながら新入部員は選手だけじゃない。


「あのっ! マネージャー希望なんですけど、硬式野球部はここでいいですか?」


「うん、ここで間違いないよ」


「マネージャー希望の桜井桃香(さくらいももか)です! 先輩たちを目標にマネージャー頑張ります!」


「別に意気込む必要なんかないわよ。少しリラックスしなさい」


「はーい!」


「元気そうな子だね」


「あーゆー『キャピキャピした女』は苦手なんです……。何かぶりっ子くさくて……」


「そうかなあ……?」


 井吹はすっかり苦手意識が芽生えたが、水瀬は何かを感じ取ったようだ。


 それもそのはず、この桜井桃香は実は『ももたん』というセルフチューバーで、高校野球を取材している(ちまた)では有名なプロアイドルだ。


 男の前では女の子らしく可愛い仕草をしてアピールし、将来の希望する旦那さんは『プロ野球選手』と豪語(ごうご)するほどの野球が大好きな女の子だ。


 セルフチューバー事務所にも所属していて、事務所からも『東光学園ならコラボもあり得る』としてマネージャー業を許可されている。


 しかし桜井は本当は男性を少し怖がっていて、それでもアイドルとして無理して笑顔を作っているのだ。


 そんな彼女の高校デビュー配信は……もう行われていた。


「みんなー! ももやっぷー! このももたんが東光学園の硬式野球部のマネージャーとして就任いたしましたー! これから主将の夜月晃一郎先輩に声をかけまーす! あのっ! この野球部の特徴はー?」


「えっと……全員の個性が活かされて苦手なものを個性でカバーするチームワークのいいチームだ」


「わあー! だからあんなに厳しくものびのびと楽しそうに出来るんですねー! ももたん感動ですぅー!」


「お、おう……。(何こいつ、ぶりっ子ぶって苦手……!)」


 夜月には警戒されたが、桜井の配信は成功に終わった。


 こうして新たなマネージャーも含め新入部員が入り、本当の意味での新チームが発足した。


 そしてその一年生にまたもやいきなりの試練が……?


 つづく!

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