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第97話 文化祭・2年目

 文化祭のシーズンになり、ついにスペシャルゲストの発表がされた。


 その中にすーみんこと水野澄香(みずのすみか)も参戦が決定し、学校ではオタクたちを中心に盛り上がっていた。


 もちろん夜月(やつき)は知り合いという事でクラスからも話題になり、夜月はどうしようか困惑をしていた。


 そし池上荘(いけがみそう)のメンバーにも……


「おい夜月! お前があのネットアイドルと知り合いって本当なのか!?」


「あ、ああ……」


「すげえな! しかも小学校の合同遠足でペアだったなんて運命じゃんか!」


「そのペアだった女の子がネットアイドルになって有名になったんだな。夜月は本当に何者なんだろうな」


「そういやメジャーリーガーのロビン先輩だっけ? あの人もお前のこと気に入ってたな。去年からお前は話題になってたんだぞ」


「河西(かさい)だけでなく郷田(ごうだ)や黒崎まですごい食いつき……」


「くすっ……」


「何がおかしいんだよ林田?」


「まあ、夜月くんも野球部とはいえ人気者だなあって思っただけだよ?」


「そうだな。配信も頑張ってるもんな」


「阿部まで……」


「とにかく知り合いって言うんならちゃんと案内や警備をしてやれよな? そんで……告白されたとか羨ましいぞテメー!」


「うっせえな! 俺だってビックリしてんだよ!」


「とにかく彼女の事をきちんと守ってあげてね? 僕たちも応援するから」


「おう、サンキュ」


 池上荘の男子たちにいじられる夜月だったが、ちゃんと澄香の事を守ってやれと念を押されて応援された。


 女子たちにも応援されて夜月もすっかり人気者になり、幼なじみの瑞樹(みずき)は鼻が高いと自慢げにしていた。


 そしてついに文化祭が始まった。


 各生徒たちもリハーサルの発表会を全員済ませ、生徒全員でスタッフや警備など一般客をおもてなしする。


 夜月は文化祭実行委員という事で文化祭の職券販売や迷子の案内、文化祭の説明会など大忙しだ。


 同時に2日目にはあの仕事が入るのだから忙しいのも無理はなく、部活やクラスの出し物に手を出す暇がなかった。


 2日目になり、ついに澄香が東光学園に入り夜月は実行委員の仕事を抜ける。


「悪い、ついにあの仕事が来たわ」


「わかった。すーみんのことを頼んだよ」


「おう」


 仕事を抜けた夜月が向かった場所は東光学園の敷地内(しきちない)にある超巨大ホールで、東京ドームくらいの大きさであるコンサートホールだ。


 ここで何度もプロのアーティストがライブを行い、『ここでライブしたアーティストは世界的に売れる』というジンクスも噂されるほどだ。


 制服姿のまま楽屋(がくや)に着いた夜月は、マネージャーの案内で楽屋(に入る。


「澄香ちゃん! 夜月くんが来たよ!」


「はい、どうぞ!」


「じゃあ夜月くん、後は頼んだよ」


「はい! 澄香、入るぞ!」


「どうぞ!」


 楽屋のドアを開けた夜月は澄香のいる楽屋の中に入る。


 すると何故か衣装に着替え中の澄香がいて、夜月は澄香のハニートラップに引っかかってしまった。


 夜月はあまりにも気まずくなり、むしろ澄香が簡単に受け入れてる姿に驚いて逆に大声を出してしまった。


「す、すまんっ!!」


「晃一郎(こういちろう)さん……?」


(あの子、いつの間にあんな大人の身体に近づいたんだ……? 胸が膨らんでたし、くびれだって……!)


 しばらく会わないうちに大人の身体に近づいた澄香に夜月は興奮(こうふん)と同時に、本人の許可付きとはいえ、着替え中の覗(のぞ)きをしてしまった事に申し訳ない気持ちと性的な興奮がよぎり、煩悩(ぼんのう)を祓(はら)うべく自分の頬(ほほ)を引っ叩いた。


 深呼吸して落ち着くと澄香はもう着替え終えており、夜月は改めてノックして楽屋に入る。


 澄香もさすがに『好きな人に自分の身体を見られた』と気がついた時には赤面(せきめん)し、自分の軽率な許可に夜月を驚かせてしまったと反省した。


「澄香、随分大きくなったな」


「はい。少しだけ今持ってる下着がきつくなってきました。それに体重も少し増えてしまって……」


「それはその……何でもない。それよりうちの高校に来てくれてありがとな。澄香ほどのアイドルなら満員間違いなしだと思うぞ」


「ありがとうございます♪ そう言えば小学校の合同遠足で暁子(あきこ)ちゃんとペアになったんですよ?」


「妹と……?」


「はい♪ いつも晃一郎さんの話をしていて、晃一郎さんのカッコいいところを見てから私も野球をやるって張り切ってました。今では小学1年生ながら男子顔負けのプレーをしているそうですよ」


「暁子は結構パワフルなところあるからな。大変じゃなかったか?」


「あのくらい元気な方が楽しいですよ♪それで晃一郎さん、今回のライブですが……」


「ああ、スペシャルゲストという事で思いきりいい演出をさせてもらうよ。シークレットゲストに月ノ姫(つきのひめ)が京都から来てくれるのは聞いてるかな?」


「はい、聞いてます」


「その月ノ姫の一つ前に澄香が出るんだ。曲目はいつものアニソンメドレー、『映った景色は恋メガネ』、『魔法少女ウィッシュ・ミー・ラブ』でよかったか?」


「間違いありません」


「よし、リハーサルの通りにいけば必ず成功する。全力でライブを楽しんで来い!」


「はい! それと晃一郎さん!」


「何だ?」


 チュッ♡


 澄香は夜月に不意を突いて唇(くちびる)にまたキスをした。


 キスをした澄香は赤面してメガネを曇(くも)らせ、恥ずかしそうにしながらも笑顔でステージに向かった。


 夜月は二度も不意打ちを食らった事に主導権を握られたと思い、もう少し男を磨こうとふと思った。


 そしてライブ本番を迎え……


「皆さんこんにちは! ネットアイドルのすーみんです! 先ほどのアニソンメドレーは楽しんでいただけましたか? アニソンメドレーは今までの踊ってみたシリーズで、踊ってきた中でお気に入りの曲を選び、皆さんに披露(ひろう)しました。私のダンスで元気になれたら私も嬉しく思います! そして皆さんに重大発表があります。なんとすーみんこと水野澄香は……この東光学園の中等部の合格を目指して受験いたします! もし合格して中等部(ちゅうとうぶ)に入れたなら、こんなたくさんの先輩方の後輩として学園を過ごし、充実した学園生活を送る事を誓います! そして私には好きな人がいます。その方はかつて私が小学校一年の時にペアになった上級生の人で、『根暗(ねくら)だった私を変えてくださった人』がこの学園の中にいます。誰かは教えられませんが、そんな彼に送るラブソングを今から歌います! 聞いてください……映った景色は恋メガネ!」


 メガネっ子アイドルという事でメガネをタイトルに使ったラブソングを歌い、『メガネに映った景色は甘い恋の景色で、憧れがいつの間にか好きって気持ちになった女の子の歌』を歌う。


 学園では夜月説が浮上しているが、『たかが知り合いなだけで恋愛対称なわけがないし、小学校が一緒とは限らない』と思われたのか夜月が疑われることはなかった。


 ただ学年的にありえるのは1年生か2年生で、3年生は入れ違いの世代なのでありえないという噂になった。


 この学園は不登校の通信科や働きながら学んでる就職支援科、夜間の定時制科を含んだ『10万人規模の学園で、一体誰なんだ』という謎解きがしばらく続きそうだ。


 しかもまだ小6なのでバレた時にはロリコンだと言われるだろう。


 その気遣いからか名前も経歴も言われることがなく、ただただその生徒に恋しているとしか公表されなかった。


 ライブを終えると、ライブを終始見ていた池上荘の男子たちは夜月と澄香が付き合ってることを知っていたが、『あえてヒミツにする』というハンドサインを送っていた。


 もちろん野球部たちも知っていて、『公表したら夜月の名誉が失われる』と思い、同じくヒミツにすることを誓った。


 こうして忙しかった文化祭は終わり、ついに冬のシーズンへ向かう。


 同時に二年生には、あの楽しいイベントが待っていた。


 つづく!

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