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それいけ!東光学園野球部!  作者: 紅夜アキラ
第一部・第一章
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第8話 体育祭・決勝編

 東光学園の体育祭もついに決勝戦こと本番を迎え、学園陸上競技場にて客を入れての開催となる。


 一般人でも観戦が出来る体育祭は新暦(しんれき)でさえも珍しく、普通の学校の体育祭は父母会のみが多い。


 しかしこの学校はどんな人でも楽しめるエンターテイメントとして動画投稿も歓迎し、一般人の入場も出来るのだ。


 そんな体育祭に夜月たちははじめて体験し、開会式を今か今かと緊張しながら待機する。


「ただいまより、第2009回、東光学園の体育祭を始めます。選手入場」


 1月生まれの白組から順に


 2月生まれの青組


 3月生まれのピンク組


 4月生まれの黄緑組


 5月生まれの緑組


 6月生まれの紫組


 7月生まれの赤組


 8月生まれの水色組


 9月生まれの黄色組


 10月生まれのオレンジ組


 11月生まれの茶色組


 そして12月生まれの黒組の順で入場する。


 あまりの人数に圧巻された一般客は拍手で出迎え、いかにこの学校が世界から愛されているかが(うかが)えた。


 選手宣誓では団長全員が宣誓(せんせい)し、会場は期待と共に大きな拍手に包まれたのだ。


 最初の競技は……


「最初の競技は、玉入れです。全組が同時に高いカゴの中にそれぞれの色のした玉をより多く入れてもらいます。一番多く弾を入れた組が優勝です。では、よーい……スタート!」


 全ての組で球を一斉に入れ、かなりの大人数なので混沌(こんとん)とした玉入れになる。


 さすがに組の全員を出すわけではなく選抜制(せんばつせい)だけど、それでもこの人数なので入り乱れが発生する。


そんな中で優勝したのは……


「おーっと!紫組がまだまだ残っています!ということは……優勝は紫組です!」


「わー!」


 玉入れを終えたら綱引き、棒引き、大縄跳びを終えてからフィールド競技に入る。


 走り幅跳びや走り高跳び、ソフトボール投げの八人による決勝が行われ、一年の優勝は男子では天童が、女子ではつばさが優勝した。


次の4組×100メートル二人三脚リレーで、ついに夜月(やつき)と瑞樹の出番が回る。


「じゃあ行ってくるわ」


「おー幼なじみカップル頑張れよー」


「だーかーらー!()()カップルじゃないってー!」


「照れなくていいのよ?」


「もう無視しようぜ。あいつらバカだから何を言っても無駄だ」


「そうだね……」


「on your mark……set……」


 ピストルが鳴って第一走者がスタートを切る。


  第一走者は微妙に減速してしまっていて、何が起こったのか水色組はざわついた。


 第二走者にバトンパスを終えると男子が倒れ込み、ふくらはぎを押さえこんでいた。


 どうやらふくらはぎをつってしまい、そのまま救護班(きゅうごはん)によって応急処置(おうきゅうしょち)がなされたが大したケガではなかった。


 その様子を見た第三走者ペアはやる気に満ちていて、アンカーの夜月と瑞樹ペアに最後を託した。


「幼なじみだか何だかわからないけど……」


「私たちの分まで頑張って!」


「もちろん!いくよ晃ちゃん!」


「おう!瑞樹の歩幅に合わせるからスピードはついて来てくれ!」


「うんっ!」


「なんとこの二人は生まれた病院からの長い幼なじみです!誕生日も一緒で家が隣同士!そりゃあこんなに息がピッタリだ!もう誰も並ぶことが出来ない!あっという間にかわした!息の合ったコンビネーションでゴールイン!時計は何と新記録!水色組がニューレコードです!」


「おおー!」


 身長差がある中でのこの記録は学園でも前代未聞(ぜんだいみもん)で、足の歩幅が普通は合わず一回は転ぶはずだった。


 だがこの二人にとっては長年の付き合いで、どんな癖があってどういう性格かも把握(はあく)しているので、今更理論で語り合う必要はない。


 だからこそのコンビネーションで、もはや理屈では語れないのだ。


 疲れ切った夜月だが、次の競技が騎馬戦であいにく連続出場となる。


 夜月は上に乗っているが、体重が80キロもある中で普通は下の馬になるはずだ。


 それもそのはず、馬の三人は先頭がアメフト部で、後ろの二人が相撲(すもう)部とウエイトリフティング部とパワー重視の重騎兵(じゅうきへい)なのだ。


 そうなると夜月でさえ体重が軽く見えてしまうので、相手の組は誰も夜月に手を出さなかった。


 その隙を突いて夜月が無双(むそう)するも、黄色組の大将に後ろを突いた不意打ちでついに最後の最後で敗退した。


 夜月は油断したことをすごく悔しがり、来年は勝つとリベンジを誓った。


 お昼ごはんになって池上荘(いけがみそう)メンバー全員で集まって、寮長特製の運動会用弁当をみんなで食べる。


「やっぱり寮長のご飯はおいしいな」


「この量をよく一人で作ったな」


「だろう?午前中はずーっと料理していたからな!」


「さすが寮長さんですね。私ももっと料理を勉強しないと」


「私も勉強しようかな」


「あたしは料理苦手だからなぁ……」


「料理なら自信あるよ」


「私も。といってもマネージャーだからおにぎりしかまともに作れないけど」


「ううん。それで充分だよ」


「そうだな。おにぎり作れるって充分凄い事だぜ」


「さぁ後半戦も張り切っていくぞー!」


 後半戦になって応援合戦に入る。


 白組はコサック風、青組はコメディ風、ピンク組はメルヘン風、黄緑組は女性アイドル風、緑組は学園ドラマ風、紫組は不思議風、赤組は和風の戦国時代風、水色組はハワイ風、黄色組はヤンキー風、オレンジ組はヒップホップ風、茶色組は軍歌風、そして黒組は西洋の貴族風の応援となる。


 個性的な応援合戦は5分間で行われ、観客も度の応援がよかったかの総選挙投票に参加する。


果たしてその結果はいかに。


 次の部活対抗リレーでは、予選で選ばれた部活がガチンコリレーをする。


 最初は女子で、陸上部短距離の部が参考記録となって順位こそ付けられないが、陸上部に勝てば部費が一割増しでお得になるというサービスがあるのでどの部も本気だ。


 女子の結果は陸上部短距離の部が当然一位で、記録によれば去年にソフトボール部に負けたのが悔しくて走り込んだらしい。


 次の男子は……


「おうお前ら!ちゃんと声を出せよ!」


「いえーい!」


「コラ一年!声が小せえぞ!もっと出せや!」


「いえーい!」


 二年生の中田丈(なかたじょう)怒鳴(どな)り気味の煽りで一年は全員ビビったが、天童だけは(おく)することなく声を出していった。


 夜月は声を出すのが苦手で、余計な一言を言ってしまうのを恐れているため、あまり声を出さないようにしている。


 中田はそれを承知の上で声を出せと言うので、空気が悪くなったらその後は黙ればいい。そうならないうちは声を出していればいいんだと厳しい励ましがあったから夜月も少しだけ安心して声が出せるのだ。


 そしてレースは始まった。


「On your mark、set……」


「さぁスタートしました!陸上部短距離はダントツで速いですが、硬式野球部のホセくんがめっちゃ速いです! 黒人特有のバネが効いています! さぁ第二走者へとバトンパス! ここで走り込み論者の小野くんは初速こそ遅いものの徐々に加速! もう陸上部まで手前に来ているぞ! 第三走者ではロビンくん! 走るのは苦手だが野球部内では充分足が速い方だ! 個性的すぎて足の速さにバラつきのある世代ですのでロビンくんでも充分速い! アンカーのキャプテンでイケメンの渡辺に回った! しかし陸上部は相変わらず独走! いくらイケメンの渡辺くんでも追いつくことは無理だった! だが彼は動画投稿サイト、セルフチューバーとして負けられない! 他の部にだけは負けたくない! ここで硬式野球部が2位でゴール! 3位はラグビー部! 4位はサッカー部! 5位はハンドボール部! 6位はバスケ部! 7位はバレー部で8位は硬式テニス部になりました!」


 部活対抗リレーは大いに盛り上がり、この学校一番の名物は成功した。


 障害物競走では予選での障害物がさらに強化されて翻弄される生徒が多くいた。


 借りもの競争では、もはや学校の敷地外にまでいかないとないものまであり、この学園都市に住む高齢者の家まで押しかけなければならないなど混沌(こんとん)とした借りもの競争となった。


 もちろんそのお題を出したのはその高齢者本人で、理不尽かつバラエティ慣れした住民たちだった。


 持久走の1500メートルを終えて、第二の名物の100メートル徒競走だ。


 夜月と天童、山田は池上荘メンバー全員と争い、予選以来の組み合わせに会場はざわついた。


「On your mark、set……」


 ピストルが鳴って本気を出した全員だが、やっぱり阿部に敵うはずもなく空しくレースを終えた。


 順位は予選と変わらず、河西は加速の遅さが課題となった。


女子もあおいが総合1位で水色組が順調な後半戦となる。


 最後の選抜リレーは優勝が青組で、団長の山本が失速してしまい五位に終わった。


そしてついに、最終結果発表の時間がやってきた。


「では順位発表をします! 11位、黒組! 10位、ピンク組! 9位、赤組! 8位、緑組! 7位、紫組! 6位、茶色組 5位、白組! 4位、青組! 3位、黄緑組! 2位、黄色組! そして……1位、水色組です! 12位はオレンジ組です。では優勝チームの水色組の山本麗奈さん、表彰台へ来てください」


「やったよーっ!」


「続いて応援賞です。応援賞は……赤組です」


「うおーっ!」


「ではただいまより、第2009回、東光学園の体育祭を閉幕します!皆さん、お忘れ物のないように帰りの準備をお願いします」


 体育祭も無事に終わり、生徒はそれぞれ帰宅の準備をする。


 観客も今年の体育祭もよかったという声が多くあり、東光学園がいかに愛されているかを実感した。


 中にはアメリカの代表選手も遊びに来るほどで、ロビンはそれを知った時は驚きを隠せなかった。


 翌日には体育祭のダイジェストが投稿されて、再生数も右肩上がりに伸びていった。


つづく!

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