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出会いなの?

 式典の間中、頭をグルグルさせていた結果、気にすることを止めた。どんなに考えても、心配してもどうにもならないと悟ったのだ。

『終わった事を考えても意味がないもんね』


式典が終わり、クーを抱いて自分のクラスを目指して歩いていると「お義姉様」と呼ぶ声が背後から聞こえた。やっと穏やかな気持ちになったと言うのに……イラッとする。

「シシリー嬢。何度も申し上げておりますが、私はあなたの義姉になった覚えはありません。どうして何度言っても理解して頂けないのかしら?」

振り向いたと同時に文句を言った私に、テヘという顔つきで笑ったシシリー嬢。

「そうでしたね。私ったらドジ過ぎ」

自分の拳で自分の頭をコツンとやっている。なんだそれはと突っ込みたいが、突っ込むのもアホらしいのでスルーする。

「ミケーリア嬢、どうしたの?」

私たちのすぐ後ろからレンゾ様に話しかけられた。もしかしてシシリー嬢を追いかけて来たのだろうか。

「レンゾ様。大した事ではないわ。教育的指導をしていただけよ」

「教育的指導?」

するとシシリー嬢が、私たちの話に割って入って来た。親子揃って平気で人の話に割って入る常識の無さに呆れる。

「あのですね、実は今、私とお母様がお義姉じゃなかった。ミケーリア様のお屋敷に一緒に住んでいまして。家族のように感じてしまってつい、お義姉様って呼んでしまうんです」

「ミケーリア嬢の屋敷に?どうしてか聞いても?」

挨拶もせず割って入ったシシリー嬢を特に咎める事なく、レンゾ様が続きを促す。シシリー嬢は気を良くしたのかベラベラと自分の境遇を話し出した。


「なるほど。それでミケーリア嬢の屋敷にお世話になっているという事ですね」

一通り話を聞き終えたレンゾ様が、納得したようにふむふむと頷いていた。そんな彼の様子に上機嫌のシシリー嬢が尚も続けた。

「そうなんです。このまま公爵様とお母様が再婚、なんて事になったら嬉しいなって」

『馬鹿馬鹿しい。そんな事になんて絶対になるわけない』

スピナジーニ夫人のような性格ブスを、お父様が受け入れる訳がない。脳内で盛大に文句を言っていると、レンゾ様が穏やかな表情のままシシリー嬢を見た。

「はは、そうなったら、ですよね。でも今は違うのですから、呼び方はキチンとした方がいいと思いますよ」

レンゾ様の答えに驚いてしまう。てっきりそうなったら素敵ですねとか言うのかと思っていたからだ。

『あれ?レンゾ様ってシシリー嬢の取り巻きの一人になるんじゃなかった?』

訳が分からず首を傾げていると、シシリー嬢も不思議そうにレンゾ様を見つめていた。

「どうしてですか?」

「どうしてって……おわかりにならないのですか?ここは王立の学院です。通っているのは貴族の令息、令嬢ばかり。そんな場所でミケーリア嬢の事をシシリー嬢がお義姉様なんて呼んでしまったら、あらぬ誤解を生んでしまいます。そのせいで万が一、公爵に迷惑がかかってしまったら、一体どのようにして責任を取るおつもりですか?」

「責任……」

シシリー嬢が考え込んだ。そして閃いたと吹き出しがつきそうな顔で、レンゾ様を見上げる。

「公爵様とお母様が再婚すれば、何も問題はないんですよね」

「そうですね。再婚すれば、ですが」

レンゾ様の言葉にニヨニヨし出すシシリー嬢。

「そっかあ、そうよね。二人の再婚はきっと決まってるし」

何やらボソボソと呟いている。ニマニマの顔で。正直言って怖い。

「責任って言うのはよくわかりませんけれど、とにかく今は呼ばないように気を付けますね」

わからんのかい!?と心の中で盛大に突っ込むが、まあいい。本当に気を付けられるのか疑問ではあるが、そう思っただけでも良しとしよう。話は終わったとばかりにシシリー嬢から離れようとすると、再び呼び止められてしまう。

「ミケーリア様」

「はい?」

「そのキツネ、どこで見つけたんですか?私も捕まえなくっちゃいけないんだけれど」

捕まえなくちゃいけない?その言葉に違和感を感じるが、私は素直に答えた。

「この子はあなた方が屋敷に来る数日前に、庭でケガしている所を保護したのですけれど?」

「やっぱりお庭ですかあ。ううん……他にもいるかなあ」

シシリー嬢はそう言いながら去って行ってしまった。

『つ、ついて行けない』

彼女の行動が読めない。振り回されている感が否めない。


『はあぁ、もう放っておこう』

下手に関わる方が危険な気がする。私はAクラスにレンゾ様と共に向かう事にした。


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