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土産は酒のつまみ

「これって誰の足?」

不思議に思って触ってみる。手でパンパンと軽く叩いてもみた。凄い筋肉だ。

「ふくらはぎカッタ」

自分にはない感触に、思わず何度もパンパンしてしまう。すると、上から声が聞こえた。

「はは、そろそろいいか?」

「え?」

背後を見上げると、快活に笑っているミアノ様がいた。私を衝撃から庇ってくれたのはミアノ様だったのだ。私ったら庇ってくれた人を、背もたれにして座ってしまっていたらしい。


『ん?ミアノ様?』

そこではたと気付く。ミアノ様は、本来ならシシリー嬢を助けるはずだった。またもやこのパターン。一体どうしたら本と同じ結果になるのか?どうしていつもシシリー嬢ではなく、私に置き換わるのだろうか?不思議に思いながらも、助けてもらったミアノ様に礼を述べる。

「申し訳ありません、ミアノ様の足だったのですね。それと、助けて下さってありがとうございます」

するとミアノ様は笑みを浮かべたまま首を振った。

「これくらい、なんて事はない。それより、ケガはなかったか?」

今の所、何処も痛みを感じるような場所はない。

「はい、大丈夫なようです。ミアノ様は?」

「ああ、私は大丈夫だ。これくらいでどうこうなる程軟弱ではないのでな」

そう言ったミアノ様は私の腹に腕を回したかと思ったら、そのまま立ち上がった。抱っこされた状態だ。私の胸に抱かれていたクーは、急な上昇が楽しかったらしく嬉しそうに「キャン」と鳴いた。


驚いた表情の私と嬉しそうなクーを見つめて笑みを浮かべたまま、ミアノ様はその場にそっと私を下ろしてくれた。

「それにしても、私の剣を飛ばした程の力があるとは、とても思えないくらい軽いのだな」

「そうでしょうか?」

別に私は軽くはない。剣の稽古をしているくらいだし、身長も低いとは言えない。これは単に、ミアノ様の筋力が並大抵なものではないという事だけだ。


「そんなか細さで私の剣を弾いたのか……興味深いな。また近いうちに一戦交えないか?」

私を下ろしたミアノ様がニッと笑って言った。

「ふふ、今度こそ勝つのは私ですわ」

「ははは、言うじゃないか」

そんな会話をしていると、レンゾ様が走り寄って来た。

「ミケーリア嬢、大丈夫?」

彼の後ろにはアルノルド王子とパウル様もいる。

「何処かケガは?」

「大丈夫ですか?」

揃って心配そうな表情を向ける三人に、私は笑顔を見せた。

「大丈夫です。ミアノ様に庇っていただきましたので」

余裕ある風に装ってはいるけれど、頭の中は大騒ぎだ。

『ちょっとちょっと!集まるのは私の周りじゃないでしょ。シシリー嬢はどうしたの?もう、一体何の冗談なのよおぉぉ』

正面に並んでいる四人のイケメンたち。本の事など知らなかったら何のご褒美なのと、純粋に喜んでいた事だろう。本の内容を知らなければ。

『ホント、勘弁して欲しい』

脳内で嘆いていると、先生から救護室へ行くようにと指示された。特にケガはしていないが逃げるのにはちょうどいいので、四人が付き添いを買って出るのを振り切り一人で救護室まで行った。


教室を出る直前シシリー嬢を見ると、自分の指を不思議そうに見つめていた。



 週末。ものの見事に酒のつまみばかりを買わされて屋敷へ戻った。

勿論、エントランスにはいつものようにお父様とお兄様。仕事はいいのかと聞く事はもう諦めている。王城から文句が来ない限り放っておくよ。お土産を嬉々としているアネリに渡し、居間で三人揃ってお茶を飲む。

「そう言えば、もうすぐ収穫祭だね」

学院の話を一通り終えると、お兄様がそう切り出してきた。

「リアは誰かと一緒に回る約束……しているの?」

お父様だ。

「まさか。誰とも約束なんてしていないわ。だってお父様とお兄様が一緒に行ってくれるんでしょ」

この王都では四季に一度ずつ祭りがある。春は花祭り、夏は夕涼み祭り、秋は収穫祭で冬は雪祭りだ。そう言えば、本にも収穫祭で何かあったような……本の内容を思い出そうとすると、ノックもせずにスピナジーニ親子が入って来た。

「ノックもせず入るとか、本当に失礼だよねぇ」

黒い笑顔で笑うお兄様。

「まあまあ、いいじゃありませんか。一緒に暮らし始めて一カ月半は経っているのですよ。もう家族のようなものでしょ」

お兄様の嫌味にそう返しながら、スピナジーニ夫人がニコニコの顔で入って来る。後ろには勿論、シシリー嬢がいる。

「……」

夫人の言葉に驚き過ぎて私たち親子、全員黙ってしまったよ。どうしたらそういう考えに及ぶんだろう。ひとつも仲良くなんてしていないのに。


そんな私たちに構わず、夫人は満面の笑みを浮かべていた。

「今、収穫祭のお話をされていましたわよね」


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