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蒼い騎士の想い

 無事買い物が終わり、屋敷の前までパウル様に送ってもらう。

「ありがとうございました」

送ってもらった事に礼を言うと、やわらかい笑みが返って来た。

「いえ、こちらこそありがとうございます。おかげでいい物を見つける事が出来ました」

「ふふ、パウル様が真剣に吟味したからこそです」

そんな彼に私も自然と笑みを返す。あれから色々なお店を回り悩みに悩んだ彼は、私の一押しだったオルゴールが付いた宝石箱に決めていた。

「パウル様のお母様が、喜ばれる事を祈っています」

「はい、きっと喜んでくれると思います」

はにかんだ表情でそう返して来たパウル様が、私の顔を見つめて言葉を続けた。

「今度……今日のお礼をさせて下さいませんか?」

「お礼、ですか?」

「ええ、ミケーリア嬢に偶然会わなかったら、またハンカチになっていましたから」

「ふふふ、もしそうであってもお母様はお喜びになったと思いますけれどね」

「そうだとしても。是非、お礼をさせていただきたいです」

にこやかな表情のパウル様に、私も笑顔で返した。

「ふふ、ではお礼をして下さる日をお待ちしていますね」

「はい」

夜明け前の空のような瞳をキラキラさせ、彼は帰って行った。


「ふう」

パウル様が納得出来るものを見つけられて良かったと、達成感を感じながら門扉を開けようと身体を向けると、下の方から視線を感じる。何事かと視線を下げるとしゃがみ込んだ体勢で、門扉に捕まりながら目をウルウルさせているお父様がいた。

「!」

驚きのあまり声が出なかった私を見つめるお父様。

「た、ただいま」

「リア……デート……楽しかったかい?父様はずっと待ってたのに……リアはデート……楽しかった?」

こっわ。お父様のジト目が怖い。それでもどこか可愛いと思えてしまうのが、お父様の凄いところだ。私の感性が壊れているだけかもしれないけれど。私はお父様に視線を合わせるようにしゃがんだ。

「お父様、デートではありませんよ。偶然街中で会った同級生が、お母様の誕生日の贈り物をどうしたらいいか悩んでいたのでお手伝いさせて頂いただけです」

「本当に?」

「はい、本当です」

「……」

無言で立ち上がったお父様に合わせるように私も立ち上がる。

「そっか、デートじゃないんだ」

途端に満面の笑みを浮かべ、いそいそと門扉を開けてくれる。

「おかえり。リア」

「ただいま、お父様」

お父様のエスコートで屋敷に入ると、お兄様までがエントランスで待ち構えていた。

「で?何処のどいつだい?リアを振り回していた奴は」

「振り回されてません。お手伝いをしていただけです」

「アネリはデートだって言っていたよ。クーもね」

ああ、だからこんな事になっている訳ね。

「違いますから。偶然会って相談されたから、手伝っただけです」

お母様と同じ色の紫の瞳で、ジッと私を見るお兄様。私もお兄様を見つめた。

「嘘じゃないようだね」

すると、なんとか納得してくれたらしく、私はやっと屋敷の中へ入る事が出来たのだった。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 彼女はいつも目立っていた。輝く銀の髪を靡かせ、金の瞳はいつも真っ直ぐ前を見据え、凛と歩く姿は険しい山肌に咲き誇る百合の花のようだった。そうかと思えば、彼女の瞳と同じ金色のキツネを抱いて、優し気な表情で何かを語りかけている姿は、優しさと慈愛に満ち溢れた聖母のようだった。


それでも美しいと思っただけで興味は湧かなかった。ところが、明らかに足を痛めたのに立ち上がり、貴族として間違っているとはっきり意見を述べている彼女を見た時、守ってやりたいと思ってしまった。ケガをした彼女を救護室まで抱いて運んだ時、彼女の軽さと柔らかさ、そして太陽のように輝く金色の瞳に心臓が高鳴るのを感じた。それを悟られないようにと無表情を貫こうとしたが無理だった。


かと思えば華奢な身体で、華麗に剣を操る姿には驚いてしまった。ミアノとの勝負でまさか引き分けに持ち込むなど、一体誰が予想出来ただろうか。しかも彼女は本気で勝つつもりでいたようだった。いや、ミアノの馬鹿力が無かったら彼は負けていただろう。


偶然街中で彼女を見た時は、絶対に声をかけなければと思ってしまった。無謀な願いにもかかわらず快く快諾してくれた上に、真剣に母への贈り物を選んでくれた。何もかもが、他の令嬢たちと違っていた。彼女の金色の瞳に、自分だけが映ればいいのにと思ってしまう程に、私の中で彼女が大きな存在となっていっている。


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