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剣術授業

 スキップしながら学院内の演習場へ向かう。

「ふっふっふ。剣術~。剣術の授業~」

私の鼻歌に、クーも楽しそうに合わせる。

「クウ、クウ、ククウ~」

今から楽しみにしていた剣術の授業なのだ。しっかりパンツスタイルに着替えて準備万端。お兄様以外の人と手合わせをする事があまりないので楽しみで仕方がない。そんな私の名を背後から呼ぶ声が聞こえた。

「あ、ミケーリア様だ」

それがシシリー嬢の声だったような気がしないでもないけれど、聞こえないっと。

「あれ?聞こえなかったかな?せっかく一緒に演習場に行こうと思ったのに」

およそ独り言とは思えないボリュームで呟く(?)彼女を、丸っと無視して演習場へ向かう。どういうわけか、この授業はAクラスとDクラス合同なのだ。

「これも本の力なのかしら。解せないわぁ」

そう呟きながら追われるのも面倒なので、小走りでその場を立ち去った。


「女子生徒の皆さんは、剣を持ってみて重さを感じて下さい。こんな重い物を振って戦う男性たちを少しでも尊敬してくれたら嬉しいです」

授業が始まると、先生が冗談交じりにそんな事を言った。令嬢たちは「重いわ」とか「こんな重い物を軽々振り回すなんて凄い」と言いながら剣の重さを実感したらしい。先生の思惑はまんまと成功したようだ。私も剣を持ってみる。うん、いい重さだ。私は剣を手に少し離れた場所で、素振りしてみる。少し重さが偏っている気がするが、まあ、練習用の剣だからこんなものなのだろう。何度か振っていると先生に気付かれた。

「そう言えばティガバルディ嬢は、剣を使えるんだったな。どうだ?やってみるか?」

「ふふ、勿論です。女子生徒は皆見学って言われたら、先生を襲ってしまおうかと思っておりましたわ」

「ははは、本気のようだな。よし、ではあちらで男子生徒たちと一緒にやろう」


 女子生徒は勿論、私一人だった。

「じゃあまずは、経験者と未経験者に分かれて、それぞれの課題をこなしてもらう」

未経験者はまずは剣に慣れろ、という事で真っ直ぐに振るだけの素振りをやっていた。初めて剣を握るという男子生徒も結構いるようで、四苦八苦しながらなんとか剣を振っている。



【皆の邪魔にならないようにと、人の少ない場所で見学する。

「あの赤い髪の人、凄く力強いな」

シシリーは一人の男子生徒に注目していた。剣を振る度に鮮やかな赤髪から汗が舞う。剣を見つめる黒い瞳は真剣そのもので、本気で取り組んでいるのが素人のシシリーにも伝わった。思わず見惚れていると、目の端に銀色が光ったように見えた。

「危ない!」

誰かの声と共に、キンッと金属のぶつかる音がした。

「ケガは?」

驚いたまま声の方へ顔を向けると、視界いっぱいに赤い髪が揺れた。】



「あ!」

唐突に思い出す。剣術が楽しみ過ぎて忘れていた。最後の男と出会うのはこの場なのではないだろうか。と、言う事は。シシリー嬢は端の方に座っているのだろう。そう思って探すけれどいない。彼女は端にはいなかった。それどころか、第一王子やパウル様、レンゾ様や赤い髪の男、ミアノ様がよく見える正面辺りを陣取り、他の女子生徒と一緒になって騒いでいた。因みにクーはその近くにある木の上で、五尾をゆらゆらさせながらこちらを見ていた。

『おいおい。自分から違う行動をしてちゃダメじゃないの?』

そう思うけれど、それをシシリー嬢に言えるはずもなく、どうする事も出来ない。ま、今回は私は直接関係ないし、知ぃらないっと。


私は本の事は無視して、課題の素振りをこなす事にした。経験者は様々な剣の振り方を網羅せよとの事だった。上から下、左上から右下、右上から左下。その逆、右からの薙ぎに左からの薙ぎ、そして突き。様々な振りをこなす。

『ああ、やっぱり剣を振るのは楽しいな』

大分肩が温まったので、ちょっと見学しようかなと周りを見る。最初に目に付いたのは、やはりパウル様だった。力もスピードも申し分ない。お兄様よりも明らかに強いのがわかる。次に目に留まったのは第一王子だった。

『凄く綺麗』

第一王子の剣技は美しいの一言だった。まるで剣舞のようだった。流れるように剣を振る様は、思わず見惚れてしまいそうになる。

『いけない、いけない』

すぐに視線を他へと移すと、次に目に入ったのは赤髪の男、ミアノ・プロスベーラだった。彼は真っ直ぐな力強い太刀筋だ。そこまでガタイが良い訳ではないのに、純粋な力ではとてもじゃないが勝てそうにない。その次はレンゾ様。多分、ダンドロッソ王国の剣術なのだろう。独特の構えだったがやはり美しい型だった。

『あの四人は主要な人物だけあって、皆強そうね』

私も負けていられないとばかりに、もう一度素振りを始めようと剣を構えたその時だった。


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