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ルネサンスの女神様 - 明るい未来を目指して!  作者: 亜之丸
急がれる改革 [2ヶ月後]
21/45

2-7 薩摩おごじょ

 長野にある城岡高校では、鹿児島にある南薩高校からやって来た生徒会会長との話し合いを済ませた夜、南薩高校の二人と城岡高校の生徒会長、そして友人の早瀬和也は、耕平と有希が住む農家に宿泊する事になった。

 ゲストハウスとして使われてしまった耕平にとってはちょっと迷惑な話ではあったが、まあそれも良いかなと思う、おおらかな耕平であった。


 日中に行われた話し合いで、まもなく採り入れる南薩高校の早掘りのサツマイモが、城岡高校で使用する種芋として送られることが決まっていた。

 そして、その見返りではないが、現在城岡高校で行われている校庭マルシェについて、その運営のノウハウを教える事になり、さらに今回作られた農業高校のネットワークを通じ、その情報を全国の農業高校にも伝える話が行われていた。

 しかし、ここではネットワークなどと言っているが、その情報を届けることができるのは、あくまで耕平と有希の摩導カートによる人力配達しかないので、それは簡単な事ではないのだが。


 まあ、苗の成長について、いずれは経過や結果を確認することは考えていたので、その際に耕平たちの負担が少なく、確実に連絡が取れる方法が考えられた。


 今回の苗の配布では、多くの生徒を巻き込んでかなり無茶をして配布を行ったが、何しろ全国の300校を超える学校を一校ずつ順に巡ると、それだけで何日もかかることになり、今後もそれを行うには耕平たちの負担が大きすぎる。

 それに耕平達も畑を持っているので、今回のように2人ともが朝から一日必要となる事は避けたいらしい。


 その結果、各学校のグランドにメッセージポストを設けてもらい、日にちや時間を決めずに、1年に4回程度、耕平たちがポストを訪れる。

 そして春夏秋冬の各シーズン毎に、そのポストに城岡高校からのメッセージを届けることと、そして返信がある場合はそのポストに入れておくことで、そこから回収してくる事になった。

 無人のポスト相手であれば、訪問時に時間をとられずにやり取りができ、たとえ夜中であっても訪問することができる。

 これくらいであれば、空いた時間を使えるので、耕平の負担も小さくでき、季節の定期便として運用ができるのではないかと言う事になった。


 ―・―・― ―・―・―


「本日はお迎えいただきありがとうございました。

 あらためまして。 私は南薩高校の有村美穂と申します。

 今夜はお世話になります」


「僕は南薩高校の鳥津剛です。

 よろしくお願いします」


「我が家へようこそ。 僕は原田耕平。 城岡高校の一年生で、す」


「私は、佐伯有希と申します。

 大失電までは東京の学校の高校2年生でしたが、訳合って、今この家の同居人となっています。

 そして、私も耕平と同じカノ国の国籍を取得しました。 なので、磨導カートの操縦ができます。

 お二人は仲良さそうですが、恋人さんなのですか?」


 その何気ない有希の言葉に、隣にいた和也がなぜか? ビクッと反応した。


「フフフ、良く分かったわね」


「美穂さん、ここでそんな言い方したらみんな勘違いするでしょう?

 あ、すみません。 僕らは従妹関係なんです。

 僕は、子供のころから美穂さんのお世話になって育ったので、今の高校へ入学したのも、美穂さんからお願いされ、そして生徒会を手伝う事になりました。

 僕らの家は、学校からは少し離れた鹿児島市内に有るのですが、わざわざそんな離れた学校にまで通っているのは理由が有って、南薩高校には実験農場というものがあるのです。

 この学校では、食の材料となる野菜や畜産の改良を科学的な実験として行っており、それに興味を持った美穂さんが入学したのです。

 そしてこれまで美穂さんの考えていた実験をされてきたのですが、来春には卒業されてしまいますので、その実験が途中で中断しないように、そしてその研究を引き継ぐために、僕もこの春に入学しました」


「えっ? 自分の意思で進学したのではないのですか?」


「うーん。

 この辺の話はどう話していいのかな?」


「はい、剛に代わって私から説明しますね。

 江戸時代の終わりには、私たちの薩摩の国は、鎖国の中であったにもかかわらず、海外へ留学生などを送り、そしてその当時の日本の科学文明に比べて大きく進んだ西洋文明を取り込んで、国内の諸国に対して発展をしていました。

 実は私たちの家に、その流れがまだ残っているのです」


 ん? 話が大きくなりだした?


「明治となって以降、私ども親戚一同はいくつもの会社などを作り、日本の発展に寄与してきました。

 ただ、いま日本という国では工業分野で必要とされることが大きく減ってしまい、日本国内でモノ作りが急速に衰退してきました。

 そこで、再びこの薩摩の地から新たな発信を行うには、次は食文化ではないかと私は考えました。

 今回種芋としてお譲りするサツマイモは私が改良したもので、これは焼酎などの原材料用ではなく、そのまま煮たり焼いたりすると食べてとてもおいしいものなのです。


 サツマイモに限らず、従来の野菜を大きく進化させることが南薩高校での私の研究テーマです。

 そして新たな食材を作ろうとしていた最中に発生したのがこの大失電です。

 これでここまでの計画は終了かと思っていたところに、城岡高校さんから思いがけない話をいただき、計画が続けられそうで大変うれしく思っています。

 今朝がた見せていただきました摩導プランターで育てていただければ、来春以降と考えていた栽培ですが、すぐにでも開始できそうなので驚いています。

 種芋として、全国に配布いただけるのであれば、ここまで改良してきたお芋さんたちも陽の目が見られることになり、私としては満足です」


 さすがに薩摩おごじょと呼ばれる鹿児島の女性はまじめな感じで、信念もなかなか強そうな感じすら見受けられた。


「僕たちの県は、日本の隅っこにあり、今回のような大きな災害が発生したとしても中央からの情報や救援などは一切届いていません。

 なので、昔から独立志向が強い地域なのです。


 ところで話変わりますが、僕はどうしてもお聞きしたいことがあり、今回こちらにお邪魔するという事を聞き、会長に頼んで同行させてもらいました。

 それでですね、こちらを少し見てもらいたいのですが...」


 剛はそう言いながら、日中ずっと大事そうに抱えていたカバンの中から、白い布で包まれたものを取り出した。

 布に包まれた中には桐箱が入っており、それを開けると、そこには灰色の丸い棒が入っていた。

 それは、どう見ても20センチくらいに切られた、1本の短いグレーの塩ビパイプであった。


「いつも耕平さんがお乗りになっている物が摩導カートと呼ばれていて、その名前からひょっとするとこちらが摩導具というものをご存じなのかと思いまして、突然で申し訳ありませんが、少し見てもらえないかと思い本日お持ちしました。

 これは我が家に伝わる秘宝でして、あまり他の方にはお見せしていないのですが、この箱に表書きに摩導具とありますので、耕平さんと関係あるかと思いまして。

 中に入っていた記録によりますと、曽祖父が名古屋で手に入れた摩導具と書かれているので、多分このパイプは摩導具で間違いないと思うのですが、他の摩導具というものが手に入らなくて、永らく比べようがありませんでした」


「えっと、僕のバングルでは、これからは摩導具の反応がないですね。

 もし摩導具であったら、反応するはずなのですが。

 古そうですから、もう動いていないのかもしれませんね?」


「いえ、まだこれは動きます。

 実際ここをタッチすると、ほら、棒の向いた先が明るく光りますよね?」


「ねえ、耕平。 これ塩ビパイプみたいだけれど、やっぱりこの光は摩導具よね」


「じゃあ、どうして僕のバングルで操作できないんだろう?」


「ねえ、せっかくお持ちいただいたのだから、調べてあげましょうよ。

 摩導具の事だったら、カノ島の賢二さんに聞いてみたらいいんじゃない?」


 ―・―・― ―・―・―


「ああ、それね」


「賢二さんは、これが何かご存じなのですか?

 これって本当に摩導具なのですか?

 僕のバングルには全く反応がないのですが...」


「そりゃそうだよ。

 それ、初代王が日本で摩導具を広めようとしたとき、日本で作ったものだよ。

 確か、その時は名古屋の大学に専門の研究施設もあったみたいだな。

 それは摩導具の評価キットなので、それ自体は動作原理を見せるものだったらしいから、カノ国以外の研究員でも使えるように、そこに摩導チップなんか使っていないのさ。

 だから、当然バングルとの摩導通信なんかはできないから、どれだけ調べてもそれから摩導具の反応はでないはずだよ。

 確か、それと同じようなパイプを使った摩導具がその時に何種類か作られたと聞いているな。

 だから、それはその時の一種類だと思うな。

 いや、珍しいものが残っていたね。

 カノ島王宮の資料室でも、もうほとんど残ってないんじゃないかな?」


「それでですね、これを持っていた人の子孫が今ここにいて、どうもこの人たちは以前から摩導具を研究していたらしいのですよ。

 僕にいろいろ聞きたいらしいのですが、僕じゃ摩導のことについてお教えできることはほとんどないので、それでどうしようかと思っていたのです」


「そうだなぁ。

 摩導具だけがあっても、今の摩導具は、基本的にカノ国人の持つバングルがないと操作ができないからなぁ。

 それに、今は摩導具について特に輸出はされていないから、ん?

 そういえば、最近マリーからいくつか要請があった中に、バングルなしで動くように変更した特別な摩導具をそっちへ送ったけど、それを使えば、またそちらでも研究ができるかもしれないな。

 シンプルな機能の摩導具だから、それをどこで使っているかまでは俺じゃわからないから、詳しくはマリーに聞いてみてくれ」


「あ、ありがとうございました」


「ではな」



 耕平は腕のバングルによる摩導通信を切ると、家にいる皆へと話を戻した。


「という事で、あ、すみません、今の摩導通信の会話は聞こえていなかったですよね。

 今カノ島の人に確認した話では、これは確かにカノ国の摩導具の一種で間違いなさそうです。

 昔日本で摩導具の技術を広めようとした時に、摩導具の基本動作を見せるためにデモ用として作られたのもので、特に実用品ではないようです。

 それと、最近日本に新たな摩導具が入ってきているようですので、もし研究をされるのであれば、それを使ってはと言ってました」


「それはどこで手に入るのですか?」


「それを知っている人は、ちょっとすぐには連絡が取りにくい相手ですので、機会があれば聞いてみますから、少し気長に時間をください」


 王族であるマリーに対して、気軽に耕平から質問するような事はさすがに躊躇われた。

 東京ブランチの人経由で聞いてもらうことにするので、その回答がいつもらえるかなどはちょっと答えられないので、少し言葉を濁しておいた。


 と言いながらも、ふと気が付いたのであるが、今いるこの家にはすでに摩導具が沢山ある。

 そして今食べている物は、有希の手作りなんかではなく、カノ国で作られた摩導パックに入った温かな料理である。


 それを話すと、そこからは食事会どころではなくなってしまった。


 南薩高校の二人だけでなく、うちの生徒会長と和也までもが興奮してしまって、あれこれ家の中を見ては質問の嵐となっている。

 君たち、この家が明るく涼しいのも、今気が付くまでは普通だったのじゃなかったの?


 そう、カノ国の生活にとって、摩導具は別に特別な物じゃないんだよ。

 こちらで電気が生活に溶け込んでいて、特別な物でなかったようにね。

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