82話目 到着
「呆気なくついたね」
「道中の魔獣ってレッドボアだけだったね」
「珍しいな」
「森の中も静かだったね」
首を傾げるハンスさん達。
お昼過ぎ、今は王都の中に入るため門に並んでいる。
並んでいる人達は平民や冒険者、商人等。
貴族が通る門は別に設けられているらしい。
無用ないざこざを避けるためとの事。
幌馬車の中から顔を出し辺りを伺う。
「大っきい……」
ネーエの街も大きかったけど王都は更に大きい。
石で出来た壁を見上げる。
並んでいる人達を見ると獣人っぽい人達もいた。
人の姿に耳が付いたと言うよりも獣を二足歩行にして人型にした感じだ。
凄い……ふっさふさ。
そんな感じで幌の外を見てたらクイナさんに声をかけられた。
「桜。 そろそろ中の物仕舞ってもらってもいいかな? 守衛に中を見られるから」
「あ……はーい」
幌馬車の中に引っ込んでマットレスやらクッションやら諸々をアイテムボックスに片付けた。
「次の馬車」
片付け終えると外から声が掛かった。
「王都へ来た目的は?」
「観光です」
「身分証をこちらに」
「はい」
ハンスさんが対応してくれている。
なんか悪いことするわけじゃないのに緊張する。
そんな私を見てイリスさんが笑ってる。
パサッ。
不意に幌が開けられた。 兵士だった。
「……そこの二人身分証をこちらに」
そう指し示されたのは私と相良さんだった。
ドキッとしている私と違って相良さんはさっさと冒険者カードを見せた。
慌てて私もアイテムボックスから出して見せた。
兵士はボソッと何かを呟いて私と相良さんにチラッと視線を寄越し冒険者カードを返却してくれた。
幌が閉められ、
「通ってよし」
と声をかけられた。
「ありがとうございます」
ガラガラと幌馬車が動く音がしホッと息を吐いた。
「緊張したー」
とりあえず今日宿泊する宿に行くらしい。
ハンスさん達が王都に来るといつも泊まる宿みたいだ。
しばらくしてから目的地に着いたらしく幌馬車が止まった。
宿にチェックインし女性と男性で別々の部屋を取り部屋へ向かう。
そこで王都の観光地図を見せてもらった。
「まず王都はこんな感じになってるよ」
東西南北に門が設置されているのはネーエの街と一緒。
王都の中心に王城があり、その周りを囲うように貴族街がある。
そのさらに周りに商人街がある。
貴族街と商人街の間には塀が設置されており入場規制されているらしい。
不用意に入って罰せられたら大変だもんね。
東西南北の門は商人街にある。
門と門の間の壁沿いに平民街がある。
冒険者ギルドは商人街にあるらしい。
平民街と商人街と別れてるが言わば地元愛用の場所と観光用の場所みたいな感じでそれぞれ特色があって面白いお店があると教えてくれた。
ちなみに宿は商人街だ。
平民街の方が少し治安が悪いらしい。 いや荒っぽいらしい。 一人では行かないでと言われた。
その日はハンスさんとユリウスさんが冒険者ギルドに行き、行きの護衛完了届を出してきてくれた。
往復で護衛する際は行き先でも届を出すんだとか。
その日はハンスさん達の行きつけのお店に行き夜ご飯を食べ就寝した。




