24話目 女子会と灯里の家4
「あ!美味しい!」
「あま~い!」
「懐かしいー!」
口元を押さえて感想を言うクイナさん、一気に飲み干したイリスさん、コップに両手を添えちびちび飲む灯里。
「もう一杯!どうやって作ったの?私これ気に入った!」
コップに入ったレモンサワーを一気飲みしイリスさんに見本を見せながらカシスオレンジを作った。
イリスさんも同じようにして自分で作って飲み始めた。
「サラダいる人!」
カシスオレンジを一口飲みサラダを取り分けようとすればみんなが手を上げた。
取り分けてシャクシャクと食べる。馴染みある味で美味しい。
「美味しい。これ本当に魚?」
フォークでサーモンを突き刺しマジマジと見るクイナさん。
「あ!クイナそっちの飲み物も飲ませてー!」
「いいわよ。そっちも少し頂戴」
コップを交換して味見をする二人。
「ジュースみたい…美味しい」
「しゅわしゅわするレガージュみたい!でも甘い!美味しっ、あ!灯里のも飲ませてー!」
イリスさんは次々に新たな飲み物にチャレンジしていってる。
「初めに言っておくね。お手洗いは扉出て左だから勝手に使ってね」
これは皆飲みすぎる感じだなと察した灯里が教えてくれた。飲みすぎるとトイレ近くなるもんね。
長芋に手を伸ばしつつ新たな飲み物を入れようと思った。
「灯里、この洗浄できる魔道具使っても良い?」
「良いよ~その前に飲み残しはすーちゃんに飲ませてね」
バケツの中にいたスライムはその言葉でポヨンと揺れた。可愛い。
コップに残った氷をバケツに入れる。
スライムの中に入った薄ら紫色の氷はみるみるうちに溶けて消えていった。
「すーちゃんは頭がいいから手を入れても大丈夫なんだ」
灯里は見ててと手を突っ込んだ。ムニッとスライムの体にめり込んでいく。スライムはフルフル震えてる。怯えてる?少し可哀想。
「すごいね。こんな慣れてるスライム初めて見た」
イリスさんが近寄りツンツンとすーちゃんを突つく。
「分かったから、可哀想だからやめてあげて」
そっとイリスさんの手と灯里の手を退けた。
すーちゃんはポヨンポヨンと揺れた。喜んでるみたいだ。灯里はすーちゃんを両手で抱えて膝の上に乗せると撫でる。
「すーちゃんは鳥の魔獣に突かれて怪我をしてたのを治したら懐かれたんだ」
すーちゃんは灯里の膝の上で平べったくなった。あれは気持ちいいのか?
伸びたすーちゃんを入れ物の中に戻してグイッとサワーを煽った。
「そうなんだ。いいなースライム。普通は手を入れたら溶けるもん」
スライム怖っ。
「そうなんだ?じゃあラッキーだったんだね。えへへ」
にヘらと笑う灯里。少し酔ってきた?
「別の物も飲みたいなー…」
「じゃあ私残り飲むよ!頂戴!」
「イリスさんありがとうー!」
これもしゅわしゅわ美味しい!と一気飲みしたイリスさん。そんなに急がなくてもお酒は逃げないよ。
灯里はいちごミルクー!と苺のリキュールと牛乳を手に混ぜている。
クイナさんは梅きゅうをポリポリ食べつつすーちゃんに梅きゅう食べる?と話しかけている。…もしかして酔ってきた?
しばらく自由に飲み食いしていると出来上がったイリスさんがウロウロ歩き回り灯里に話しかけた。
「灯里ちゃーこれなあに?」
キッチンに行ったみたいで興味を惹かれたみたいだ。
「それはお味噌ですー」
「じゃあこれはー?」
「それは醤油ですー」
「なんか面白い魔道具ないのー?」
「んー?キッチン用品で良ければ色々ありますよー」
「どれどれー?」
「これが泡立て器でこっちがミキサー、魔道レンジに魔道コンロ、魔道オーブンに…とっておきが時間経過のついた棚です」
「時間経過シリーズかぁ。使ってる人初めてみたよぉ。どうやって使うの?腐るだけじゃないの?」
「私も使いこなせてないですぅ。漬物つけるくらいしかやってないですぅ。でも面白そうだったので買いました。悔いはないですよ」
なんか面白そうな話が出たぞ。
「時間経過シリーズって何?」
「ん?桜興味あるの」
にひっとこちらに向き直り説明してくれるイリスさん。
「あるある」
「ある渡り人が作ったシリーズだよ。入れたものの時間を経過する棚とか箱とか、戻すのもあるけどあっちは二度と出ないんじゃないかな?材料無さそうだしねー」
「経過する方は出回ってるの?」
「それなりに出回ってるよー買う人少ないし」
買う人少ないんだ。楽しそうなのに。お酒とかは漬けるのにめっちゃ便利じゃん。自家製梅酒作り放題………。
……こっちの果物で作ったらどうなんだろう。
うわーどうしよう作ってみたくなっちゃった。あれでしょ?ホワイトリカーと氷砂糖と果物。でも宿だと不便だな…。
「家借りたい」
「どうした急に」
ケラケラとイリスさんが笑ってた。
「果実酒作りたい。宿せまい。場所欲しい。家借りたい」
「そういうこと?じゃあ商業ギルドで斡旋してもらいなー渡り人向け住宅紹介してくれるよ」
「そうなのー?明日行ってみる!」
「行ってきなー行ってきなー」
いつの間にか朝になっていた。




