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217話目





「灯里が買ってきたこれ便利だね」


「そうなんだよー」


今日の私は受付業務。


カウンターの上には卓上カレンダー。

内側には桜が自販機に入れてくれた事務用品が多数置かれている。

目玉クリップとゼムクリップは自販機の物、ダブルクリップは私が日本で購入した物だ。

欲しい種類のクリップを全部登録しちゃうと他の物が登録できなくなっちゃう。

なので足りないのはあちらで買ってきた。


やはり便利に思うのはこちらもあちらも変わりないようで、バインダーなんかは私の名前だけ裏に記入してあるが皆で使いまわしている。


いちいちカウンターに来てもらわなくても良い分、場所も選ばず聞き取りの際便利なんだよね。


そうやってここで使えば依頼に来た職人ギルドの人の目に留まるはず。


私は布教者さあ事務用品作成者よ集まれー!!


って感じで日々使用している。


そしてとうとうこの日待ち望んでいた人が現れた。



「次の方どうぞ」


「……おう」


顔を伏せてぶっきらぼうにそう返事をする男性。

年のころは4、50代くらいかな、短い髪には白髪がちらほら見えている。


「本日はどのようなご用件でしょうか」


「……」


「……? あの?」


「……これ……」


「? ……こちらですか?」


「最近うちらの中で話題になってるんだ」


「話題……ですか?」


「あぁ……」


確か職人ギルドの人……だよね。 たまに鉱石の採掘の護衛依頼に来る……。

無口でぶっきらぼうだけど、きちんと依頼料を前払いしてくれるし値切ったりクレームを入れることもない優良な依頼者だ。


「依頼じゃないんだ……すまん、これを近くで見たくて」


……もしかして興味持ってくれた?!


「ど、どうぞ。 こちらの目玉クリップですか?」


「あ、あぁ」


手元にあった目玉クリップを一つとり相手に手渡す。


「不思議な細工の物を嬢ちゃんが使ってるって聞いてな……依頼じゃなくてすまん」


「いいですよ、なら少し隣にずれてもらっても良いですか? そちらで満足行くまで見て行ってください」


「ありがとう」


「どういたしまして」


そう言って列をずれてもらい私は次の依頼者を呼んだ。


何人かの依頼を受け付け隣を見ると目玉クリップの付け根、仕組みの所を一生懸命見ていた。

目を細めて見にくそうにしていたので虫眼鏡を渡した。


「見えにくいのでしたらこちをどうぞ」


「え? あ、ありがとう。 なんでこんなに親切にしてくれるんだ? 依頼者でもないのに」


私が虫眼鏡を渡したら驚いたようにこちらを見返された。


「……それ作ってもらえそうかなと思いまして、打算ですすみません」


初めて興味を持ってくれた職人さんだもの過剰な期待をしちゃってた。

指摘されてから気づくなんて恥ずかしいな。


「……作っていいのか? 特許は? 申請済みだろ?」


「特許の件は私では分かりかねるので商業ギルドの方へお願いします。 ただ、そちらあちらの世界の物ですのでこちらで作成して下さる方がまだいらっしゃいません。 私は誰かこちらで作ってくれたら嬉しく思います。 あ、そうだ。 商業ギルドに行ったら私の名前を出して春子さんを呼んでください。 そうすれば手続きの方教えてもらえると思います」


「そうなのかい? なら行ってみようかな。 ありがとうな嬢ちゃん」


「どういたしまして、期待してますね」


「あぁ、任せておけ」


そうして少しづつ作成者が増えるようになった。

それに伴い既存の仕事が滞ったりするようになるなど問題も発生したが、それは職人ギルドと商人ギルドの話し合いを持って解決することになった。


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