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3話 聖女認定儀式

~ 某貴族男性視点 ~


 花が咲き乱れる季節になった。

 今日は『聖女認定儀式』だ。


 この日は王都で大規模なお祭りとなり、教会前は商店が教会の許可を得て出店する。

 盛大な盛り上がりを見せ、人がひしめき合う。

 そして、教会入口に赤いジュータンがひかれ、豪華な馬車から聖女達が降り立ち、人々の歓声を受ける。


 聖女達は皆白いローブを着ており、光沢のある布は彼女達を神秘的な存在のように演出する。

 皆、微笑みながら大聖堂に入っていく。


 大聖堂の中は貴族のみ入場を許されている。

 公爵家から男爵家までの当主夫婦が集まり、中には家族全員で参加している家もあった。


 大聖堂内は祭壇の他に、聖女が控える特別ステージが、いつもの様に設けてあった。

 聖女達は到着した順に椅子に座っていく。

 ほとんどの聖女が着席したあと、最後に現れたのはアンバー男爵令嬢とその婚約者だった。


「みんな早~い」

「ミア、静に」

 男が軽く嗜める。だが、アンバー男爵令嬢が腕に絡み付いているためか、イチャイチャカップルの戯れのように見える。

「ダレン様、ごめんなさい。ミア、失敗。えへ」

 軽く舌をペロッと出し、右手で自分の頭を軽く小突く。これを5歳の女の子がするのなら可愛らしい仕草と片付けられるが、15歳の女がするとあざとくてドン引きである。

 

 ああいった、アザトイ女が好きな物好きもいるが、自分は好きじゃない。むしろ苦手だ。


 そう言えば、フォーリー伯爵令嬢の姿が見えない。他の聖女とは異質であるため、すごく目立つはずなのに、その姿はない。

 婚約破棄の噂は知ってる。

 デブだからフラれたと友人達が、面白おかしく話しているのを聞いたが、何とも言えない気持ちだ。

 貴族令嬢にとって婚約破棄はかなりの痛手になる。『聖女』とステータスはあるが、人として欠陥があると烙印を押されたようなものだ。

 この先まともな縁談が来ることは難しいのが、世間一般の見解。


 フォーリー伯爵令嬢と面識はないが、彼女が力を注いだ『お守り』のおかげで、昔命拾いをしたことがある。なので少なからず注目と尊敬をしている。


 きっとショックで部屋から出られないのだろう。今回は出席しないようだ。

 その証拠に、聖女の人数分用意される椅子は、全て埋まっている。


「静粛に!」

 祭壇奥の扉から、最高司祭様が現れた。

「これより『聖女認定儀式』を始めます」

 司祭の号令で、神官達が五人の聖女達に測定水晶を手渡していく。

「皆も知っていると思いますが、今一度儀式について説明致します」


 司祭様のありがたく、長ったらしい説明を要約すると、

①測定水晶は神聖力に反応して光る使用になっている。

②一人づつ測定水晶に神聖力を注ぎ、聖女であると示す。

③示せない場合は聖女認定取り下げとなり、今までの功績に合う報酬を受け取る。


 年に何人かは聖女認定取り下げになるので、30人いる聖女が何人になるのか……。

 もちろん、儀式前に測定する聖女も居るらしく、衆人環視のもと、取り下げされる姿を見られたくないと、自ら聖女を辞める者もいる。

 

 5人づつ測定されていく。

 何人か水晶が光らず、最高司祭様に

「今までよく努めてくれた。教会を代表して礼を伝えます。ありがとう」

 と、声をかけられていた。

 言われた聖女も少し涙ぐみながら、

「勿体無いお言葉です。こちらこそ今まで支えて頂きありがとうございました」

 と、微笑んでいた。

 聖女認定取り下げと一般的に言われるが、自分としては『聖女卒業式』のように感じる。


 最後にアンバー男爵令嬢の番になった。

 噂では神聖力が弱まっていると聞いた。

 案の定、光らなかった。

「今までよく努めてくれた。ありがとう」

 他の聖女認定取り下げされた者と同じように、最高司祭様は言葉をかける。しかし――。

「もう一度、他の測定水晶でやらせてください!きっと壊れているのよ。私に神聖力が失いなんて間違ってる!」

 アンバー男爵令嬢が騒ぎだした。


「なんて見苦しいの」

「間違ってるのは自分よ」

「あんなのが聖女なんて、恥ずかしいわ」


 彼女の暴挙に会場がざわめく。

「静粛に!…アンバー男爵令嬢。水晶を渡しなさい」

 最高司祭様は水晶を受け取ると、聖女認定に合格した他の聖女に渡した。渡された女性は水晶と最高司祭の顔を交互に見比べる。

「水晶が故障していないことを証明してほしいので、もう一度神聖力をその水晶に注いで下さい」

 微笑んでいるのに、すごい圧を感じる。

 水晶を渡された女性は、慌てて言われたとおりにした。

 すると、水晶は問題なく光った。


「故障はしていないようです」

「そんな…」


 話は終わりと、最高司祭様はアンバー男爵令嬢から視線を外し、観客達に向いた。

「これにて聖女認定儀式を終了します。今まで聖女の責務を果たしてくれた彼女達と、これからも人々の平和のために尽力してくれる聖女諸君に拍手をお贈り下さい」

 大聖堂に拍手の雨が降り注いだ。


「続きまして、陛下より重大発表があります」

 

 最高司祭様の紹介をうけ、祭壇奥の扉から陛下が登場した。


「我々は今日、歴代の聖女が成し遂げられなかった偉業を、目にすることとなる」


 陛下は良く通る声で話し出す。


「彼の者は、初めての聖女認定時、歴代最高の神聖力を有しておった。そして、日々のたゆまぬ努力で神聖力を増幅し、聖女3人分の神聖力を自らの体内に蓄積することに成功した。これにより、不可能と言われてきた大魔法『聖域結界』を発動することができる。もう王国内で魔物に怯えることはなくなる。我々は彼女に深い感謝と敬意を表す。紹介しよう、我らの救世主、世紀の大聖女」

 陛下達が入場した祭壇奥の扉が開かれた。

 現れたのは


「クローヴィア・フォーリー伯爵令嬢」


 丸々太ったフォーリー伯爵令嬢だった。

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