第6話 転生条件
エリナは先の話を聞き、アルス=マグナが行使した転生召喚魔法について、一つの疑問を持ち始めていた。
それもそのはずである。
彼は平然と話していたが、その話の中に転生条件は含まれておらず、どんな条件下で発動するのかなどを一切教えてはいなかったのだから。
だが、彼女はこの魔法が作られた時の事を考えるとその疑問を口にできず、黙り込んでしまう。
「…………」
「どうしたんだ? いきなり黙り込んで」
「い、いえ。大したことでは……」
「何か聞きたいことがあると顔に書いてあるぞ」
「え!?」
アルス=マグナは、そんな調子のエリナを見て溜め息を吐く。
「はぁぁ。気づいてなかったのか? 黙り込んでからのお前は、魔法の話題に入った時と同じ顔をしていたぞ」
「そ、そうですか……」
エリナは話を切り出すべきなのか迷ったが、意を決して口を開く。
「ま、魔王様が使った転生魔法の発動条件とか……その、教えてもらえたり……」
「ん? ああ、なるほど。この話になるから聞かなかったんだな」
「はい」
陽気に話しているアルス=マグナとは裏腹に、エリナは少し気が引けていた。
流石に先の話を聞いた後でも、魔法について教えてもらう勇気は彼女にはなかった。
しかし、魔法について聞いてしまったのは、アルス=マグナへの恐怖からの様だ。
彼が陽気に話していても、機嫌を損ねたら殺されるのでは? と言う考えが頭をよぎっていた。
彼女のそんな警戒も虚しく、アルス=マグナは二つ返事で了承した。
「あの話は気にするなって言っただろ。……まあいいか。んじゃパパッと説明するぞ」
いきなり魔法の説明が始まりそうになり、エリナは慌てて近くに置いてあった紙を手に取る。
そしてその場にペンが無かった為、魔力で文字を書き記そうと考え、指先に魔力を込めた。
エリナが間に合った事に安堵する姿を見て、アルス=マグナのは説明を始めた。
「この転生召喚魔法の発動条件は、普通の転生魔法と同じく術者が死ぬことが条件だ。そして予め設定していた未来に転生する。例えば十年後に設定すれば、十年後に行使された何らかの召喚魔法に反応して、召喚者として転生する」
「もし設定した未来に召喚魔法が行使されなかったら、どうなるんですか?」
「その時は設定した未来に最も近い時間軸で転生する。もちろん設定した未来が存在しなかった場合も、文明が衰退する直前に転生するように作られてる。まあ、実際に実験したわけじゃないから理論上の話だけどな」
エリナは未知の魔法について興味津々と言った感じで、相槌をつきながらメモを書き続けていた。
彼女の瞳は学院に居る時よりも、一段と輝いていた。
それも当然と言えば当然だろう。
今この瞬間、この時代に存在しない魔法を知ることが出来たのだ、エリナに限らず大抵の魔導士なら同じ反応になるに違いない。
「こんなところかな。質問があったとしても受け付けないからな」
話を終えてもエリナの指は止まっておらず、この魔法について自分なりのメモを加えながらまとめ上げていた。
そんな彼女を横目にアルス=マグナは、勇者の日記を手に取り、最高神との決戦前に見た光景を思い出していた。
何故、その光景を思い出していたのか、彼自身にもわからなかった。
しかし、勇者召喚魔法を見て、既視感を覚えた。
あの時、勇者がアルス=マグナに向けた言葉
――そこでまた、人をたくさん殺すつもりなのか?
その言葉を思い出し、フッとつい笑っていた。
(なるほどな。もし俺が再び、魔王として君臨した時に自分で俺を殺す為……か)
アルス=マグナは数百年ぶりに楽しそうな笑みを浮かべたのだった。
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