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第5話 転生召喚魔法

一万年前との違いを知ったアルス=マグナは、他にもないかと確認したい気持ちを抑え、エリナに文字について聞こうとした時、ちょうど彼女の方から問いを投げつけられた。


「え!? 召喚した対象は今の時代における、最低限の知識を得るんじゃないの?」

「どうやら、俺の場合は例外みたいだ」

「どう言うこと?」

「たしかにマスターが言っていた事は正しい。召喚魔法は基本的に召喚した対象が、その時代において、召喚主とのすれ違いや生活に支障を来さないように知識を与える効果が魔法に組み込まれている。……これはこの時代でも変わってないよな?」

「うん、変わってないよ。それは召喚魔法の常識。魔道士なら誰でも知ってることだしね」


文字が違うと言う出来事があったため、アルス=マグナはこの時代と一万年前との違いがないか確認すると説明を続ける。


「だけど俺の場合は、召喚魔法その物に影響を来たす規模の魔法を行使している。……その魔法の名を転生召喚魔法レナトゥス・オプリガーナ」

「転生魔法!? それって、神話に出てくる伝説の魔法とされてるやつだよ!!」


 この時代に置いて転生魔法は御伽噺の存在である。

旧人類の最盛期、後に超魔法文明と呼ばれた時代ですら、転生魔法は机上の空論とされ、再現不可能な古代魔法もしくは、神代魔法の分類に区分されていた。

そんな超が付く程の文明が再現不可能だと断定しただけに、この時代では存在その物が怪しまれるほどの魔法になり、人によっては存在しないと断言する程の代物である。

エリナは魔法その物にも驚いていたが、それ以前にとんでもない魔法を平然と説明している、アルス=マグナに一番驚いていた。


「話を続けるぞ」

「あ、うん」

「そしてこの魔法の効果は転生することは当然として、その他に召喚魔法による干渉全てを無効化する効果がある」

「干渉の無効化?」

「そう。召喚魔法は、召喚者が召喚主に牙を向かないよう、呪いをかけたり、いくつかの制約をかけることが出来るだろ。わかりやすい物で言えば、消滅の呪いだな」

「確か、召喚者が召喚主に危害を加えようとすると、肉体ごと消滅する呪いだっけ?」

「概ね正解だな」


召喚魔法には他にも様々な呪いが存在する。

その中でも消滅の呪いに次いで有名な物が、痛撃の呪いと言う物。

この呪いの発動条件は消滅の呪いと同じであり、効果は全くの別物である。

効果は文字通り、体を八つ裂きにされる様な痛みを、数分間発生される物となっている。

痛撃の呪いの効果は主にこれだが、術士によって痛みの強さなどが違うという特徴が存在する。


「呪いの無効化何て凄い!」

「まあ、そこだけ聞けばそうなるだろうが、当然デメリットもある。その代償ってのが本来あるはずの効果まで無効化していることだ」


召喚魔法からの干渉を無効化するのは、知識がある者からしたら一見すごい代物に見えるが、結構なデメリットも存在している。

それが今回誤算だったとは言え、一番最初に発覚した知識付与の効果である。

そして他にも、能力上昇や特定属性の耐性上昇などなど、反則級の効果も含め様々な効果があったようだがその全てが無効化されていた。


「呪いや制約の無効化は転生召喚魔法の効果の一部だし、それにデメリットの方は前世の肉体を引き継ぐ過程で生じる代償だから仕方ないとはいえ、流石に知識系列の効果まで無効化されたのは誤算だった」

「それなら何で、普通の転生魔法を使わなかったの? それに魔王様程の魔道士なら、知識の無効化も予想出来たんじゃない?」

「まず最初の問いについてだが、それは前世の肉体を引き継ぐ必要があったからだ。俺の魂の存在規格(スケール)は並の体では耐え切れないからな。そして二つ目についてだがこれは本当に誤算だったとしか言えない。本来、知識系列の恩恵は召喚魔法の根幹に刻み込まれてるから、例外が起きようと絶対発動するものだと考えられてたからだ。現に俺もそう踏んで転生魔法を行使していた」

「なるほど……」


それにアルス=マグナが転生召喚を選んだのは魂の存在規格(スケール)だけが原因ではない。

彼の額にある紋章を発現させた時点で、闇が魂を侵食していた。

そして力が増していけばいく程、闇は当然ながら強力になる。

だから、並の肉体では強過ぎる闇に耐えることができず、器に入った時点で器は消滅する。

この結論に至ったからこそ、アルス=マグナは何年も掛けて準備し、今に至るのだ。


「あいつならもしかして……」


アルス=マグナは遠い昔を見るように、苦笑いを浮かべながらポツリと呟く。

彼の独り言が聞こえていたエリナは、それが気になり問いかけた。


「魔王様、あいつって誰何ですか?」


エリナ自身も話の流れ的に転生魔法の制作に関わった人物だと推測し、興味が抑えられず、つい聞いてしまう。

アルス=マグナはその問いを聞くと、一瞬だけ悲しそうな顔をしたが、エリナがそれに気づくことはなかった。

そして彼自身も、自分がそんな表情を浮かべていたなんて、気づいてすらいない。


「俺の妹だ。転生魔法は、妹が研究していて俺はそれの補佐をしていた。だが、戦争が過激化して行く中で、あいつはいずれ勇者と呼ばれる存在に殺されちまった。……だから、詳しいことは聞くなよ。この魔法は俺の魔法じゃないから、俺自身も全てを把握しているわけじゃない。まあ、開発者である妹なら、代償を軽減することぐらいは出来たかもな」

「ご、ごめんなさい。その……」


思ってもいなかった返答に、エリナは表情を暗くして謝るが、彼は気にしてはいなかった。

 彼が生きて来た期間を考えれば、当たり前だと言うべきなのかもしれない。

 アルス=マグナ自身、感情を失っていた期間も含め、数百年以上は生きている。

 そんな長い時を生きれば、嫌でも区切りがつくと言うもの。

 だが、そんな彼でも再び最愛の妹と言葉を交わしたいと言う気持ちは、全て消えることなく心の何処かで生きているのかもしれない……。 


「気にするな。もう何百年も前の事だ」

「あ、ありがとう」


エリナはアルス=マグナと会話して行くうちに、最初の印象が嘘のように思い始めていた。

彼女がそう感じるのも当然なのかもしれない。

今のアルス=マグナは、魔王として種を率いる必要が無くなり、更に感情が戻り始めた彼は、魔王として君臨する前の自分に遡行しつつあるのだから。

それに召喚当初のアルス=マグナは、最高神との激闘を終えてすぐの状態。

そんな状態の人間に、殺気を抑えろと言う方が無理な話である。


「まあ、経緯はそんな感じだな」


アルス=マグナは話が長くなる前に、この話題を切り上げることしたのだった。

いつも読んで下さり有難うございます。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。

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