第4話 召喚魔法
キョトンとした様子のエリナに対し、アルス=マグナもまた不思議そうに首を傾げる。
当然である。
勇者召喚魔法とは名前の通り、世界に危機が訪れた際、古に存在した英雄、勇者そして異世界の素質のある者を呼び出す魔法。
そんな代物を行使して呼び出された以上、大体の人間は強大な敵と戦うと誰しもが思うはずである。
それなのにこのような反応をされては、召喚者も困ると言うもの。
「違うのか? ……なら何の目的で俺を召喚したんだ? まさかとは思うが、使い魔を召喚するためとか、そんな冗談は言わないよな」
「あはは。そのまさかだよ……」
エリナ自身も勇者召喚魔法とは全く知らずに行使している為、苦笑いを浮かべる以外に選択がなかったようだ。
そして感情を取り戻しつつあるアルス=マグナは、冗談めいた理由を聞き、久々の笑うと言う感情を抑えられなかった。
「ハハハハ! まさかそんな理由で、勇者召喚魔法を行使する奴がいるとは驚きだな」
「え!? 古い時代の使い魔召喚の魔法じゃないの!?」
そこで初めて勇者召喚魔法だと知ったエリナに対し、アルス=マグナは呆れながら口を開く。
「詠唱の時点でおかしいとか思わなかったのか?」
「おかしいとは思ったよ。……でもその本に使い魔召喚って書いてあったから……」
エリナは、勇者召喚の魔法の構築手順が事細かに記されているページを開く。
そして魔法名の所を指でなぞりながら、アルス=マグナに見せた。
「ほら、ここにちゃんと、使い魔召喚魔法って書いてあるでしょ」
「その文字列で勇者召喚魔法って読むんだが……」
そこでエリナは、自身の翻訳が間違っていた事に気づく。
それもそのはず、彼女が古代文字の解読に参考として使っていた文字は、おおよそ今から二、三千年前の物である。
対し、この日記が書かれたのは約一万年前であり、その頃の新人類は、旧人類の文字を真似て使っていた。
その為、同じ文字でも意味が違って来るのは当然である。
翻訳が違った事がショックだったのか、しばらく彼女は唖然としていたが、我を取り戻し慌てて二冊目の本を開く。
「じゃあこれ全部違うの?」
びっしりと翻訳した内容が書かれた本を開き、それをアルス=マグナに見せた。
彼も確認の為に本を覗き込んだが、そこに書かれた文字を読む事が出来なかった。
「その文字? は、なんて読むんだ?」
考えてみれば当たり前である。
千年程、昔ならまだ名残は残っているだろうが、現在は彼がいた頃から数えて約一万年後の時代。
それだけの時が立っていれば名残どころか、文字その物が変わっていても不思議ではない。
むしろ変わっている方が当然と言える。
そう考えるとある意味、言語体系が変わっていない事が奇跡であった。
そしてこれがアルス=マグナにとって、最初の一万年前との違いを知った瞬間だった。
いつも読んで下さり有難うございます。
今回は文字数が少ない為、18時にもう1話投稿します。
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