表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/42

第2話 我は魔王


 エリナは、男からの問いかけを聞いた瞬間、ガタガタと震えながら腰を抜かした。

 死と言う存在を前に、一言も言葉を発することが出来ず、恐怖で失禁し、水溜りが出来ていく。


「再び問おう。貴様が我を召喚したのだな?」

「!! ……」


 声にならぬ悲鳴を上げる。

 涙を溜め込んだ瞳を見て、男は最高神と戦う前に見た光景を思い出す。

 そして何が原因かを察すると、両手に握っている二本の魔剣を手放し、指をパチンッと鳴らす。

 すると纏っている漆黒の装備は霧状に霧散し、剣もまた床に落ちる寸前で霧散する。


 それにより周囲に立ち込めていた重圧が薄れていく。

 エリナの震えも先程よりかは収まっていたが、それでも恐怖は拭えていなかった。


「ふむ。話せそうな状態ではないようだな。……娘よ、その格好では気持ち悪いだろ? 気晴らしに服でも着替えてこい。それまで我はここで待とう」

「……」


 エリナはコクコクと頷き、ゆっくりとその部屋を後にする。

 アルス=マグナは彼女が去ったのを確認すると、数秘術で先ほどまでエリナがいた場所にある、水溜りを消滅させた。


「これは勇者召喚の魔法陣か……」


彼は小さく呟き、自身の周りを見渡すと、近くの机に置かれていた本に目が留まり、古い方の本を手に取る。

そして魔法陣が記されていないページを適当に開く。

そこにはこう記述されていた。


 ――僕らが国に帰ると、魔王を倒した英雄として国中から歓迎された。

  ……だけど、実際には魔王アルス=マグナを倒してはいない。

  そのせいなのかはわからないけど、仲間たちは態度こそ喜んでいるけど、内心ではこの状況をどう受け止めればいいのか、悩んでいるようだった。勿論、僕もそうだ。

  魔王と分かり合えるような未来なんて、想像もしていなかった。

  彼と話し合う前は、魔王とは残虐無慈悲の存在だと言うことが、僕らの共通認識だった。

  だけど、彼が行ってきた蛮行が他者を守る為だったとしたら、あの無慈悲さも納得できる。

  話し合いの後、彼はその強大な力を行使し、魔族を……いいや、旧人類という種を守るために自ら犠牲になる事を選んだ。

  そして、その事実を知るのは彼らと僕らしか居ない。

  今、僕達の身に何も起きていないということは、彼が最高神を倒す事に成功したからに違いない。

  そのおかげで戦争の終わりが見えて来た。

  僕は魔王の遺言通り、戦争を終わらせるために各国を渡り、何とか終戦締結までの道筋を立てることに成功した。

  だけど、それから暫くして、ある重大な出来事が起こった。

  僕はその時、魔王が僕個人に残した言葉の意味を知ることになった。

  その出来事とは……

 

 アルス=マグナが呼んでいたのは勇者の日記であった。

 その日記に読み更けていると、不意に扉がノックされる。

 

「この状態だと召喚主(マスター)とまともに会話出来そうにないな。どの道、今の状態ではこの力も維持できそうにない。仕方ない、力を抑え込んでみるか」


 現在のアルス=マグナは最高神との戦闘と、転生を行った事で力のほとんどを失っている。

 そのためか、召喚直後に比べると額にある魔王の紋章が小さくなっていた。

 そして自身の意思で力を抑え込んだことで、紋章が一気に小さくなり、それに合わせてアルス=マグナの瞳にも感情が宿り始める。

 紋章は額の端に存在しており、その形も先程までの禍々しく変質した形ではなく、本来の姿に戻っていた。


「勝手にしてくれ」


力を抑え込んだ後、アルス=マグナは返事を返す。

 その言葉に反応し、扉が恐る恐るといった感じで開かれるのだった。

いつも読んで下さり有難うございます。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ