第37話 VS序列一位
ユリウスとユウキは互いに距離を取り、位置についた。
彼は戦闘が始まるのを、今か今かと心を踊らせながら待つ。
「いきなりの注目戦! 試合開始!!」
試合開始の合図と共に、両者武器を抜く。
ユリウスは二丁のハンドガンを構え、同時に発砲した。
ユウキはその弾丸を最小限の動きで避ける。
「そうこなくっちゃな!」
ユリウスは彼女が期待通りの動きをしたことに満足そうに呟いた。
そうこうしていると、ユウキが間合いを詰め、その剣を振り下ろす。
それをユリウスは、銃をクロスして受け止める。
「なかなかやるな。名前は?」
「ボクはユウキ。ユウキ・バレンタインだよ。君は?」
「ユリウスだ。ユリウス・アルバート。ユリウスで構わない」
「そっかユリウス、ボクのことはユウキでいい……よ!」
ユウキは剣が弾かれるのと同時に、体勢を立て直して横薙ぎで攻撃した。
それをユリウスは後ろに下がって避ける。
そして数秘術を発動させる。
その効果は弾道計測と偏差計測。
銃撃で生じる全ての偏差射撃を、未来予知に等しい未来計測により、百発百中の精度にする技。
この二つの組み合わせにより、銃弾同士を当て、跳弾させるという離れ技を可能とさせる。
複数発の銃声が鳴り響く。
「どこ狙ってるの?」
ユウキがユリウス接近する。
そして彼女がユリウスを間合いに入れた瞬間、ユウキの背後から二発の弾丸が迫る。
「ッ!!」
ユウキはそれに気が付くと咄嗟に体を動かし、紙一重で直撃を免れた。
しかし、ユリウスの銃口はしっかりと彼女を捉えていた。
引き金を引いた瞬間、銃声と共に二発の弾丸が放たれる。
ユウキは魔力障壁を展開し、それをやり過ごすと距離を取る為、後退する。
(この人は強い! 武器はよくわからないけど、飛び道具をここまで使いこなすなんて)
(これは早々に剣を抜くことになるかな。予想以上に手強い。……ま、せっかく用意した弾があるんだ。もう少し遊びに付き合ってもらうことにはなるが……ちゃんと使い切れるよな)
互いに強さを認め合う。
だが、それでもユリウスはまだ本気を出すつもりはない。
なぜなら水平二連式ショットガンを持ち出し、ハンドガンの弾もそこそこ作ってしまったからだ。
この間にユリウスは、リロードを行う。
そして再び複数の銃声が鳴り響く。
弾同士をぶつけて跳弾させる。
跳弾した弾丸はユウキに向かって、弾幕の嵐となって襲いかかる。
「ッ!?」
四方八方から襲い来る弾丸を剣で切り落とし、捌けなかったものは魔力障壁で防ぎながら、ユリウスとの距離を詰める。
迫りくるユウキを迎撃するため、ユリウスは再びリロードを行う。
そしてユウキに向かって、再び乱射し弾同士をぶつけて、跳弾させ攻撃する。
ユリウスはリロードを行うため、マガジンリリースボタンを押し、マガジンを下に落とした。
「隙あり!!」
「どこに隙があるって?」
ユリウスはハンドガンの薬室に一発だけ残した弾を、二丁同時に放つ。
その時、ユウキは超人的な反応をして一発は切り落としたが、腹部に一発もらってしまう。
「痛ッ!」
痛みに顔を歪ませ、回復魔法を使いながら、後退する。
「今のを避けるか! 中々だな」
ユリウスはハンドガンにマガジンを込め、スライドストップレバーを下げ、スライドを前進させる。
そして再びハンドガンを構えるが、ユウキが武技‘縮地’で一瞬で距離を詰めると、剣を振り上げる。
「させないよ!!」
「クッ!!」
ユリウスは即座にハンドガンを手放すと、一歩後退しながらショットガンを腰だめで構え、一発放った。
ユウキは嫌な予感を覚え、直感に従って魔力障壁で初弾を防いだが、二発目が右腹部を掠めた。
ボタボタ滴る血を手で押さえ、ヒールで回復を行う。
「やっぱこれも効かないか……」
すると、ユリウスは腰に付けたガンホルダーとマガジンポーチを外し、ショットガンを投げ捨てる。
そして剣の柄を握る。
その時、観客席ではユリウスを詳しく知らない者が、「飛び道具使いが剣なんて使えるのかよ」などと言うものがいた。
「ユウキ、すまなかったな。これまで手を抜いてて。その謝罪と剣士に対する敬意を込めて、本気で行くぞ」
ユリウスが二本の剣の柄を握った瞬間に、ユウキは気配が変わったのを感じ取った。
「こ、これは……。まるでアリスを相手にしてるみたい。ううん、それ以上かも……」
ユウキはユリウスの異常なまでの殺気と威圧を前に唾を飲み込む。
「――居合・双空飢餓」
黒い斬撃が放たれる。
それをユウキは剣技受ける。
「――古月・閃花!! なんて威力なの! でも負けないよ」
「――極地」
ユリウスは縮地の最上位互換である武技を使う。
それは世界から一瞬、存在と気配を消し、ゼロ距離まで詰める技。
突然の強襲にユウキは目を丸くしながら、ギリギリのタイミングでユリウスの剣を受け流した。
そして互いに壮絶な攻防戦になる。
最早、常人の目では捉えることの出来ない剣速、そして戦闘速度に達する。
だが、徐々にユリウスの体には傷が増えていく。
「まじか!? 二刀流で押されてるだと!!」
「確かに君は強い! でも、手数と威力に偏ってる分、攻めやすいんだよ。だって、ボクの剣技は君の剣技と相性がいいからね」
ユウキは、ユリウスの攻撃の後に出来る僅かな隙間を縫うように、攻撃していた。
剣と剣の隙間を縫い、彼女の剣はユリウスの体にダメージを与える。
それこそがユウキの剣術なのだ。
「なるほど。筋肉を一回も同じ動きをさせないことで、相手に次の技を読ませないようにしてるのか」
「よくわかったね。初見で見抜いてたのアリスを入れて、ユリウスが二人目だよ」
ユリウスとユウキは互いに口角が上がっていた。
「――鶴の太刀・羽々斬り!!」
まるで鶴が舞うような、しなやかで軽い技。
全ての攻撃を受け流すと同時に、空を舞う鶴の羽の如く無数の斬撃が炸裂した。
「ガッ!! ――双牙一閃!!」
他の追随を許さない二刀の一撃が、地面を斬り裂きながらユウキに迫る。
ユウキはその一撃をいつも通り、受け流そうとするが、圧倒的な力を前にそれは意味を成さず、彼女の左腕を吹き飛ばした。
「あぁぁぁぁあああ!!」
彼女もまた、痛みの設定を現実と同じにしているせいで、途轍もない痛いが体中を走る。
だが、不幸中の幸いと言うべきか、ユウキはユリウスの剣技を受け流す為、左手に剣を持ち替えていた為、利き手の欠損は免れた。
膝をつき、吹き出る血を悲鳴を上げながら強く押さえる。
その光景を前に観客席は騒然としていた。
そんな中でも一つ共通していたのが、皆一様に顔が青ざめていたことだ。
ユウキは止血の為に、火属性の低位魔法で自身の傷口を悲鳴を上げながら焼いた。
「はぁ……はぁはぁ」
息が途絶え途絶えの状態で涙目になり、あまりの痛さにちびっていた。
「ユ、ユリウスの技って途轍もなく重いんだね」
「まあな。一撃必殺が俺のテーマだからな。でも、まさか耐えられるとは思わなかったぜ」
余裕そうに語るユリウスも、パッと見は闇で傷が修復されたせいで無傷に見えるが、体にはかなりダメージが蓄積していた。
「あ、はは。ボクも本気を出さないと負けちゃいそうだ」
そういうと優輝は目を閉じ、内にある力を解放する。
心臓がドクンッ! と脈打ち、彼女の額に魔力でできた一本の角が現れる。
そして耳の先が少し変化し、エルフの様に尖っていた。
その光景に流石のユリウスも目を丸くした。
「お前、鬼人とエルフのハーフだったのか!?」
「そうだよ。えへへ、驚いた? この姿はアリスにも見せてないんだ」
「驚かない方が不思議だと思わないか?」
「ふふ、そうだね。ボクみたいなケースはレアだからね」
現在のユウキは先ほどとは比べ物にならない程、魔力が膨れ上がり身体能力が上昇していた。
さらに、失った腕を魔力の腕で代用し、切断面から徐々に再生させていた。
「魔力が少ない分、身体能力が高い鬼人と魔力が豊富なエルフ、その二つの長所だけを受け継ぐとは恐れ入ったよ」
「でしょ! それにこの角――」
「大気中の魔力を吸い上げて、身体強化と魔力回復、そしてダメージも回復してるんだろ」
ユリウスが言葉を遮って、話す。
「よく知ってるね」
「これでも色々調べてるからな」
「あはは。そうなんだ」
それと同時に二人が踏み込む。
ユウキの戦闘スタイルは先ほどとは打って変わって、一撃の重さを重視したスタイルに変わっていた。
しかも、先ほどの様な華麗な動きを残しつつ。
金属と金属がぶつかる音。
そして擦れる嫌な音。
それが会場全体に鳴り響く。
「「はぁぁぁ!!」」
二人の容赦なき一撃がぶつかり合う。
「――白雪!!」
「――絶花!」
ユウキとユリウスの剣技がぶつかり合い、地面に亀裂が走る。
そして無数に剣技がぶつかり合う。
互いに傷だらけになりながら、最後の一撃を放つ。
「これで――」
「――終わらせるね」
二人が剣を構える。
「――剣神解放!!」
「――剣身解放!!」
この技は剣に秘められた力を解放するもの。
剣に特殊能力が無ければ、剣自体の切れ味などの性能を引きげる。
そしてユリウスが使った技はユウキの技の完成形であり、その効果は魔剣の代償を無効化する能力がある。
両者の剣が輝く。
だが、一方は神々しく輝くのではなく、禍々しく輝いていた。
そしてその剣が振り降ろされた。
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