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第35話 序列対抗戦に向けて2

「マスターは、その腕輪をはめたまま魔力球を五個作って、それを安定させるのが今日の課題だ」


 それを聞くとエリナは頷いた。


「んじゃアリサ、こっちも始めるか」

「りょーかい! だよ」


 するとアリサは、空間収納からノートパソコンの様な機械であるパーソナルを取り出す。

 そしてそれに配線を繋ぎ、ユリウスに手渡した。

 配線を受け取ったユリウスは、それを自身の右腕に複数カ所刺し、それ以外にも首や胸といった場所に深々と刺した。


「モニタリング出来てるか?」

「バッチリ見えてるよー!」


 エリナはユリウスに課された鍛錬をやりながら、不思議そうにそれを眺めていた。


「魔力炉心起動実験を始めるよ。お兄ちゃん、(スリー)ステージで始めて」

「わかった」


 目を閉じ、ユリウスは自身の内側に意識を集中させる。

 

「魔力抑制機能(システム)解除……魔力解放……魔力循環逆流防止機能(システム)解除……魔力循環機能(システム)解除」

「バイタル安定域、正常値を確認。魔力量正常、魔力安定率正常。第二ステージに入って」


 生命が魔力を制御し、生きるために必要な体の機能をユリウスは解除した。

 そしてアリサの指示に従い、次の段階に入る。


「魔力圧縮暴走を開始……魔力解放量を五〇%から一○○%へ移行、全魔力解放を完了……紋章による魔力増幅値は〇%で固定」

「バイタル安定域、正常値を確認。魔力量正常。魔力安定率マイナス四〇%に到達。未だに下降中……マイナス一二〇%に到達。第一ステージに入っていいよ」

「了解」


 ユリウスはコクリと頷き、圧縮した魔力を解放する。


「魔力圧縮を解除……」

「バイタル安定域、正常値を確認。魔力量の増幅を確認。二倍、三倍……五倍……。魔力安定率マイナス四二三%……五〇〇%を突破。臨界点への到達を確認!」


 その瞬間、ユリウスの体を破裂させる勢いで魔力が膨張する。

 原因は暴走状態で圧縮された魔力を解放したからだ。

 

魔力炉心エーテリアルリアクター 臨界起動(オーバードライブ)!」


 異常なほどの魔力が解き放たれる。

 ユリウス自身も増幅された魔力の奔流に押し流されそうになりながらも、それを必死に制御する。

 弱体化した肉体では、長時間の運用が出来ない程のダメージをその身に受けていた。


「クッ!」


 深呼吸を行い、ユリウスは精神を落ち着かせ魔力の奔流を完全に支配下に置いた。


「ふぅぅー。何とか制御できたぜ。……こんな状態で本気を出したら体が壊れそうだな」


 苦笑いをしながら、余裕がありそうな声で呟いた。


「アリサ、今どんな感じだ?」

「問題ないよー! 今の所バイタル共に安定してる。強いて言うなら紋章の侵食率がちょっとづつ増えてるくらいかな」

「それについては問題ない。紋章が増えた分の魔力性質を変えてるだけだ」

「なるほど! じゃあこのまま制限時間が来るまで記録を続けるね。そうそう、プラグ抜いていいよ。お兄ちゃんの魔力パターンを新規に登録したから、近くなら遠隔でいけるよ~」

「りょ~かい」


 ユリウスはアリサの指示に従い、体に突き刺さっているプラグを雑に引き抜く。

 そして肩などをグルグル動かし、筋肉をほぐす。


「魔王様からもの凄い魔力を感じるんだけどこれは?」


 鍛錬を続けながらエリナがユリウスに近づく。


魔力炉心エーテリアルリアクター 臨界起動(オーバードライブ)っていう魔力を増やす技術だ」

「魔力を増やすってそんなことできるの?」

「見ての通りだ」


 エリナは興味深そうにユリウスを見つめていた。


「とは言ってもリスクはあるぞ。魔力を燃料にして莫大な魔力を得る技法だからな。こういう技法の事を魔道技法と俺らは呼んでいる……って、今そこはどうでもいいか。そんでなにがやばいかっていうと、この技法自体がやばい。本来所有できる魔力の量を遥かに上回る量の魔力を得るわけだから、体に掛かる負担だけで軽く死ねる。気を抜くとパンパンになった風船を針で突いた時と同じ惨状になる」


 その光景を脳裏で浮かべてしまったエリナは、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「とは言うものの、これが一流の魔道士への登竜門なんだ。だからこれが出来て、初めて一流と呼ばれる。超一流は戦闘スキルを磨いた奴のことだな。まあ、あくまで俺らの時代の基準だが……」

「一流になるって命懸けなんだね。でも何で今それを?」

「念のためだ。いざって時、転生の影響で使えなかったりしたら困るだろ? それに安全にできる時じゃないとこれの実験は危険だからだ」


 その理由にエリナは納得する。

 

「いずれエリナにもこれをやってもらうよ。お兄ちゃん! 明日はわたしがやるから記録お願い!」

「オッケー!」


 さらりとアリサが投げ込んだ爆弾に、エリナは一瞬遅れて気が付く。

 え!? と言う顔をしているが二人は気にしていなかった。


「その腕輪をはめて、鍛錬させてる理由の一つが、これを出来るようにさせるためだ。ま、他にも理由はあるけど、そこは聞くなよ? メンドイから」

「わかったよ。でもそんな理由があったんだね。ってきり魔力制御を鍛える為だけだと思ってたよ」

「ああ、言い忘れてたけど、それから受ける身体的な負荷は、最大時でこれと同じ負荷が掛かる様になってるから気をつけろよ。魔力制御ミスると死ぬからな」

「そうなんだ! ん? ……ええ!!?」


 とんでもない爆弾を平然と投げ込まれ、エリナは驚愕を隠しきれていなかった。

 反射的に聞き返そうとしたけど、応えてくれそうになかった為エリナは渋々諦めるのだった。


 それからエリナは腕輪はめるのを躊躇するようになる。

 だが、ユリウス達の目がある手前、はめざるを得ず、渋々と言った様子でそれを着けるようになるのだった。


 ユリウスは空間収納から木剣を二本取り出す。

 そして一本をエリナに投げ渡した。


「エリナ近接戦の鍛錬をするぞ。腕輪は外せ」


 エリナはその指示に従い、腕輪を外して腰のポーチにしまう。


「でも魔王様、エーテリアルリアクター? を使った状態で大丈夫なの」

「マスター相手なら問題ない。流石にアリサは無理だがな……。ほら、かかってこい!!」


 その言葉に安心し、エリナは深く踏み込み一気に間合いを詰める。

 刺突や斬撃などを行うが、ユリウスはそれを余裕そうに捌く。

 反撃を受け、エリナの体に目立たない傷が増えていく。

 だが、それでもエリナは反撃をどうにか捌ける様になってきていた。

 そして攻防の末、エリナは吹っ飛ばされて宙を舞っていた。

 しかも建物二階よりちょっと高いくらいの高さを。

 エリナが地面に落ちると同時に、ユリウスの声が響く。


「転んだら三秒以内に立て!」

「は、はいっ!!」


 すぐに体勢を整えるエリナ。

 しかし、その頃にはユリウスは彼女の背後に回っていた。

 エリナは咄嗟に剣を構えるが、剣を弾き飛ばされてしまう。


「あっ」


 間抜けな声が漏れる。


「武器を失ったら?」


 エリナはその事態を冷静に対処し、格闘戦に持ち込む。


「はぁぁ!!」


 蹴りや殴りなどの動作で迎撃する。

 だが、ユリウスはそれを難なくいなす。

 そしてエリナは距離を取り、即座に魔力で武器を作り上げ、その動作を口にして自分の行動をスムーズに行う。


「――魔力剣。幻刀一――ッ!!」


 エリナが剣技を放とうと剣を振りかざす。

 そして剣技が炸裂しようとした瞬間、ユリウスはそれを片手で受け止めた。


「……この程度の攻撃。片手で十二分すぎる」


 剣技を途中で受け止められた瞬間、エリナはこの後の事を悟り、終わったと感じた。

 ユリウスは彼女の拳を掴み、エリナを片腕で持ち上げると地面に叩きつけ、そのまま木剣を首に突き付ける。


「チェックメイトだ」

「ま、まいりました……っ」

「使える魔力が尽きたみたいだな三十分休憩だ」

「は、はぁい」


 エリナは息が上がり、途切れ途切れで応える。


「あんた達こんなハードなこと毎日やってるわけ?」


 声の主はルナだった。

 彼女はエリナが宙を舞っている辺りから、彼らの事を見ていた。


「ああ。こっちの方が成長が早いからな」

「うわぁ鬼畜」


 ルナの心の声が漏れた。


「何か言ったか」

「え、う、ううん何も」


 ルナはエリナに近づいて行く。

 そして顔を覗き込む。


「エリナ、あんた大丈夫なの?」

「あ、ありがと。大丈夫、だよ」

「そう」


 ユリウスは不思議に思ったことを尋ねる。


「ルナ、何でここがわかった?」

「偶々よ。わたしもこの近くで修行してたから。その時に、いきなり凄い魔力を感じたから来てみたら、あんた達がいたってわけ」

「そう――ッ!! か」


 不意に来た魔道技法の反動に、ユリウスは一瞬言葉を切った。

 それと同じくしてアリサが焦った声を上げる。


「バイタルの異常を確認。危険域突破!! 魔力増幅率大幅に上昇! 魔力量の矛盾減退を確認! 魔力安定率マイナス一○○〇%を突破!! お兄ちゃん!!!」

「わかってる! ――魔力炉心エーテリアルリアクター解除!!」


 ユリウスは状況を把握すると即座に魔道技法を解除する。

 それにより、異常なまでに膨れ上がっていた彼の魔力が萎んでいき、最終的に魔力切れ寸前の状態となる。


「大丈夫なの?」

「問題ない! むしろ元気だ!!」

「あっそ」

「なんか反応酷くない?」

「それよりさっきのは何だったの?」

「ああ、それは――」


 ユリウスはルナに、エリナに行った説明と同じ説明をした。


「なるほどね~。そんな技があるなんて、世界は広いわね」


 すると、ルナはユリウスに一歩近づき、思いついたことを口にする。


「そうだ! ユリウス、わたしをエリナと同じように鍛えてくれない?」

「別にいいが、何でだ?」

「あんたといる方が、手っ取り早く強くなれそうだからよ」

「なるほど。なら一つ言っとくが死ぬかもしれないぞ?」

「問題ないわ。死にたくはないけど、もしわたしが死んでもら蘇生魔法を使えばいいじゃない。でしょ?」

「そ、そうだな。……じゃあ早速で悪いんだが、エリナと模擬戦をやってくれ」


 その言葉にルナはキョトンとしていた。

 いきなりやばいのが来るのを覚悟してただけに、ルナは思考が追いついていなかった様だ。


「……別にいいわよ。でもエリナは魔力回復したの?」


 その言葉にエリナは首を横に振る。


「もう少し待って」


 エリナとルナの模擬戦が始まるまでの間に、アリサが先ほどの計測記録をユリウスに伝える。


「お兄ちゃん、はいこれ」


 アリサはパーソナルをユリウスに渡す。


「さっきの計測を元にすると、起動できる時間は十分間だけみたい。それ以上はたぶん体が持たないよ」

「ってことは、魔法を使うと更に制限時間が短くなるのか」

「そうみたい。でも使う種類によると思う」

「だろうな。ま、その辺は追々試せばいいだろ。対抗戦まで、まだ時間はあることだしな」

「そうだね。……あ! エリナが復活しったぽい」


 魔力が回復したエリナは木剣を腰に携え、ルナと距離を取っていた。

 ここから模擬戦スタートだ! と言う所でユリウスがエリナに近づいて行く。


「エリナ、魔法の使用を今だけ許可する。今の自分がどこまでやれるか試してみろ!」

「うん! じゃあもっと全力を出さなくちゃ!!」


 闘志が漲った返事を聞くと、ユリウスは口角を少し上げ、その場を去る。

 そしてユリウスが離れたのを確認すると、アリサが始まりの合図をする。


「始め!!」


 その言葉と同時に両者が動き出す。

 ルナは手に握っていた召喚石を地面に叩きつけて砕くと、近接戦を得意とする召喚獣を呼び出した。

 そして召喚獣達と共に距離詰める。


 エリナもある程度距離を詰めると同時に、土属性の魔法を使う。


「――ウォル!!」


 この魔法は土の壁を作る下位魔法である。

 エリナは、ルナとの間に大きな壁を作ったのだ。


「ッ!?」


 ルナは驚くような表情を見せるが、流石にエリナよりは戦い慣れている為、直ぐに壁の両端を目指し、パーティーを二つに分ける。

 獣人だけあって、流石の身体能力だ。

 すぐに壁の端に到着するがそれを防ぐようにまた壁が形成される。


「チッ!」


 めんどくさそうに舌打ちをすると、壁を蹴りながらまるで駆けるように登っていく。

 そして一番上に着いた瞬間、下から無数の魔力弾の奇襲を受ける。

 それを回避するが、そのせいで体勢を崩し、落下するが空中で回転して体勢を立て直す。


 ルナが壁を登ってきたことを確認すると、エリナはあらかじめ仕掛けていた罠を発動させる。

 そして彼女が落下したと同時に壁伝いに走りながら、魔力弾を置いて行く。

 時間差でそれらを一斉に放つ。


 上空から降り注ぐ魔力弾を回避しながら壁の裏に出るルナ。

 そのままルナはエリナの匂いを辿りながら追跡を開始する。

 彼女は隣を走っている召喚獣を先行させた。

 ほんの少し壁が無い地帯に出ると、上空から召喚獣がいる地点を中心に、絨毯爆撃の様に魔力弾が降り注ぐ。

 一発一発の威力は低いが、それでも数がある分、十分の火力を発揮する。

 そして一体の召喚獣が手元に戻って来たのを確認すると、ルナはコウモリの形をした召喚獣を召喚した。

 その召喚獣を使い、索敵を行う。


 ルナに追いつかれたエリナは、華麗な身のこなしで左右の壁を交互に蹴りながら壁を登る。

 その間に魔力弾による攻撃を行う。

 案の定、壁を利用してエリナに追いつこうとしたルナは、それを断念せざるを得なくなる。

 そして壁の上に出るとエリナは、自身の周りに無数の魔力弾を形成し、それを放ちルナを集中砲火する。

 それからは常に自信を中心に魔力弾を無数に展開し、直ぐに攻撃ができ、盾にもなる状態にしていた。


「エリナってこんな強かったけ? ううん。明らかに前よりもすごく成長してる!!」


 ルナはエリナの戦い方を見て、思っていたことが口に出てしまう。

 そして彼女の表情は笑っていた。

 とても楽しそうに。


「強くなってたとしても、わたしが勝たせてもらうわ!」


 そう言ってルナは好機が来るまで、ファイアーボールなどの魔法で応戦していた。

 その時が来た。

 エリナが壁の上に出た瞬間、ルナが使役する狼の様な召喚獣がエリナの脚に咬みつく。

 それにより彼女は大きく体勢を崩す。


「痛ッ!! クッ! ……遅いよ!」


 もう一方から迫っている別の召喚獣と、脚に咬みついている召喚獣を、エリナは魔力弾で撃破するのと同時に、逆さの状態で魔力弓を構える。

 そして魔力の矢を放つ。

 尋常ではない脚力で地面を蹴り、ルナは宙を舞うエリナに近づくが魔力の矢を寸での所で回避し、そのまま落下していく。


「中々手ごわいじゃない」


 ルナはエリナに対する評価を改める。

 そして本気を出し、追加で攻撃用の召喚獣を四体召喚した。

 さらに彼女は身体強化なしで、一蹴りで壁の上に上り、そこを走る。

 壁を所々に作りながら走るエリナに追いつく。

 そして上から奇襲を仕掛けた。

 

 だが、エリナは地面に映る影に気が付き、魔力弾で迎撃し奇襲を間一髪で防ぐことに成功する。

 そして慌てた様子で壁を作る。

 しかし、ルナは身体強化を使いそれを容易く殴りで破壊する。

 その瞬間、木剣を構えてエリナが突っ込んできた。


「ッ!? 良いフェイントね。騙されたわ」

「ありがと」


 ルナが彼女の攻撃を受け止めると、互いに後ろへ下がり距離を取る。

 その時、召喚獣が合流しエリナを囲う。


「――パワーコンフージョン! ――スピリアルコンフージョン!」


 ここで決着をつける為に、ルナはほぼ全ての魔力を消費し、狼の召喚獣一体に集中して攻撃力と俊敏さを上げる魔法をかけた。

 勿論、それ以外の召喚獣にも程々の強化を行っている。

 

(どうしよう囲まれちゃった……。でも、強力な強化をした召喚獣は一体のはず。……こんな時、強化解除の魔法が使えたら、もう少し楽だったんだろうな)


 エリナは苦笑いを溢すと、意を決し先に仕掛けた。


「――ファイアレスボム!」


 爆破球の魔法を放ち、不意打ちで一体の召喚獣を撃破した。

 しかし、それと同時にルナと召喚獣達がエリナに襲い掛かる。

 彼女はルナの攻撃を集中して捌き、召喚獣達は魔力弾を適当撃ちして牽制する。


(クッ! 射線が引けない!! 並列戦闘ってこんなに難しいんだ……)


 この時エリナは初めて並列戦闘の難しさに気が付いた。

 そして今までユリウスが、この鍛錬を何故やらせなかったのかも理解する。


 防戦一方のエリナを見ながらアリサはユリウスに問う。


「なんでエリナに並列戦闘の鍛錬をつけなかったの?」

「そりゃあ決まってるだろ。てか、言わなくても我が妹ならわかってるんだろ? あれをするまでの技量がマスターにはないって」

「ん、わかってる。でも、そろそろ教えてもいいころ合いじゃない? この戦闘を見るに、近接戦も様になってきてるし、何より新しい技術が必要になって、それをやろうとしてるから脳がパニックに陥ってるよ」

「これでいいんだよ。実戦で、しかも追い詰められた状況でそれを経験した方が、いざ学ぶ時の効率が上がるだろ。何せ出来なかったら負けるって事実が、体に染み込むんだからさ」

「流石お兄ちゃんだね!」


 何故かそこで褒め称える妹。

 そのせいで調子に乗る兄。

 こういう経緯があって、彼の思考は一部ぶっ飛んでいるのである。


 そして二人の会話が終わる頃、エリナはボロボロになっていた。


(ここまで粘るなんて予想外よ! まさかエリナがこんなに強くなっていたなんて。でも、ここで決める)

(流石ルナちゃん、凄く手ごわい! 今の私じゃまだ勝てないかもだけど、最後まで足掻かせてもらうね!!)


 互いに近接戦を行う。

 激しい攻防の中、エリナの一瞬の隙を突き、一体の召喚獣が右から襲い掛かる。

 しかし、その瞬間、左手を動かし予め準備してた魔力弾を撃ち込み寸での所で撃破した。

 それにより、召喚獣が光の粒になり消滅した。

 

「予め準備できてれば、こういうことも出来るんだよ! 私」

「へーやるじゃない」


 ルナは心からの賞賛を送る。

 だが、表情には出さないが心の中でニヤリと笑う。

 その正体はエリナの背後から迫る召喚獣で勝負がついたと思ったからだ。

 しかし、エリナは攻撃を掠め、そこそこいいダメージをもらうが、咄嗟に剣を召喚獣の口目掛けて斬り込む。

 狼の召喚獣は木剣を喰らい、慣性に任せエリナを通り過ぎる。


「空中なら避けれないでしょ!!」


 後方に下がる際に設置した魔力弾が、狼の召喚獣の腹部を下から貫く。

 ルナは本命が外れたことに驚愕するが次の行動に移る。

 宙を舞う木剣を弾き飛ばし、体勢を低くしてエリナに近づき、彼女が射程に入ると同時に攻撃を仕掛ける。


「――魔力剣。幻刀一閃羽ばたき!」


 それは二本の剣から放たれる四連撃の斬撃。

 しかし――。


「ふふ、やっぱり対人戦での実戦経験が足りないみたいね。でも、いい技よ」


 ルナのフェイントに引っ掛かり、しまった! という顔をするエリナ。

 直後、腹部に強い鈍痛を覚える。

 その正体はルナの正拳突きがクリティカルヒットしていたからだ。


 そのまま後方に吹き飛ばされる。

 エリナが立ち上がろうとした直後、顔にルナの拳が突き付けられる。


「そこまで!」


 ユリウスが終了の合図を送る。


「いい戦いだったわ。強くなったじゃないエリナ」

「えへへ、ありがとルナちゃん。でもまだまだ強くなるよ!!」

「その調子よ」


 ルナは賞賛を送り、手を差し出す。

 エリナはその手を取り起き上がった。


(危なかったわ。エリナが判断ミスしてなかったら、もしかしたらわたし負けてたかも)


 口には出さない。

 その言葉を胸の内にしまうと、彼女はユリウスの元に歩いていく。


「どう? わたしを鍛えてくれる気になった?」

「五分後に始めるぞ」


 そう言い残しユリウスは去って行く。

 

 ――五分後――。


「何これ?」


 ルナの目の前にあったのは、木に深々と突き刺さっている剣である。


「この剣は、鉄も難なく両断するくらいの切れ味がある。と、言うわけでルナ、この上に乗れ」

「乗れ! じゃないわよ! 普通に考えて乗れるわけないでしょ!!」

「剣との接触面に魔力を集中して展開させれば乗れるだろ?」

「……ぐぬぬ。た、たしかに出来なくはないわね。うん。でも何で?」


 首を傾けるルナにアリサがユリウスに変わって口を開く。

 

「魔力を一点集中させるため」

「どういうこと?」

「ルナの戦い方は、召喚獣を軸にして連携するスタイル。つまり、ルナ単体で見たらバランス型の戦い方だからだよ」

「ますます意味わかんないわ。バランス良く戦って何が悪いのよ?」

「悪くはないよ。むしろ、戦闘スタイルが確立してて良いと思う。だけど、ルナは召喚獣をフィニッシャーとして使ってる。だから、召喚獣がいなくなったら決め手が欠けてるでしょ。違う?」

「た、たしかに。それは今までも改善点だと思っていたわ……ってもしかして! ――」


 ルナはアリサに一歩近づく。


「――そう。必殺技を編み出してもらうため」

「魔力を一点集中した技……いい決め手になりそうね。でも、そうしたらバランスが崩れるんじゃない?」

「ルナが言う通り、普通なら魔力を一点集中したら他が疎かになるよ。でも、それを攻撃の瞬間だけに絞れば隙を少なくできるでしょ。そうすれば一撃一撃が必殺技になるし、咄嗟の一点集中が出来れば、魔力障壁を集中させたフルガードが出来るようになる」

「たしかに理に叶ってるわね」


 アリサの説明にルナは納得の色を見せる。


「でも、よくわかったわね? わたしが決め手で悩んでるって」

「さっきの試合を見ればわかる。ラストの一撃、あれは威力を上げる為の溜めが必要だ。だけど、それをしないで放った。模擬戦だからってのもあるだろうが、それでも動きがぎこちなかったように見えたぞ。俺には」


 ルナは溜息を吐き、意を決したように顔を上げる。


「はぁぁ。よく見てるわねあんた。……わかったわ、早速修行させてもらおうじゃない」


 ルナは気合の入った目をしていた。

 そしてその気合を打ち砕くかのように、ユリウスはルナが鍛錬を始めたタイミングで、爆弾を放り込む。


「マスター! ルナ目掛けて魔力球を全力で撃ち込め。魔力の制御が利かなくなるくらいでやれ」

「な!? い、いきなり何言ってるのよあんた!!」

「わかった」

「エリナ! わからなくていい!!」


 ルナは悲鳴のような声を上げる。


「ルナ! とりあえず三時間頑張れ。魔力球は避けるなり、魔力障壁で受けるなり好きにしろ! マスターは俺らの模擬戦にいつも通りのやり方で参加しつつ、ルナにちょっかい出せ、全力で。いいな?」


 エリナはわかったと頷き、ユリウスとアリサの鍛錬に参加する。


「足場を踏み外したりすると、脚やら手やらが無くなるから頑張ってね! ルナ」 

「いやー! 頼む人選間違えたわ!!!」


 そんなこんなでルナが鍛錬に参加し、序列対抗戦に向けて頑張る一行だった。

いつも読んで下さり有難うございます。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。


更新は毎週木曜日の予定です。

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