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第29話 元神との邂逅

 窓から朝日が差し込む。

 その眩さにユリウスは目を覚ました。

 寝ぼけながら手を動かすと、何か人の感触の様な物が指先に伝わる。


(なんだ? ……膨らみかけなのか? この硬さと柔らかさの絶妙なバランスは……って!?)


 そこで初めて気がついた。

 隣でアリサが寝ていたことに。


「何でお前がここで寝てんだよ!?」


 驚きのあまり、つい声を出してしまう。

 その声でエリナが目を覚ましてしまった。


「……おはよう魔王様。今日は早いん……だ……ね……」


 近づいてくるエリナに対し、彼は危機感を覚える。

 だが時はすでに遅く、開き直るしかなかった。


「おはようマスター」


 何事もなかったかのように謎の微笑を向ける。


「って、朝から何してるの!?」

「……俺たち兄妹だから特に問題ないだろ」

「百歩譲ってそれは良いとしても何でアリサちゃんが裸なの!?」


 アリサは全裸でユリウスの腕に抱きついていたのだった。

 この状況では心辺りが無くとも、言い訳できない事を悟るには十分。

 だがそれでも足掻く。

 

「さー。何でだろうな」


 白々しく言い切る。

 疑いの目を向けられながらも、ちょうどいいタイミングでアリサが目を覚ます。


「二人ともおはよう……」


 まだ寝ぼけているのか目を擦り、大きな欠伸をした。


「どうしたの?」


 状況が分からず、不思議そうに二人を見つめる。


「何でアリサちゃん、裸なの?」

「暑くて脱いじゃった」


 無邪気な笑顔で言う。

 よくよく見るとベッドの上には服や下着が散らかっていた。


「風邪ひくぞ」

「大丈夫だよ。昔みたいな高い耐性はないけど、この体でも十分耐性はあるから」

「耐性があったとしてもまだ春だよ? 暑いってことは熱でもあるんじゃ……」


 エリナは心配そうに見つめる。


「昨日、久しぶりに紋章を使ったから体が冷却出来てなかっただけだよ」


 心配する彼女を諭すように言う。


「でも絶対耐性があるはずだろ? 現に戦闘中に使ってたじゃないか」

「紋章を使ってる間だけ、昔の力の極々一部が使えるみたい」

「なるほどなー。ってことは俺も似たような状態なのか」

「お兄ちゃんの場合は一応は常時発動してるから、わたしとは違うと思うよ」


 アリサはユリウスが持っているのと同じ端末を空間収納から取り出す。

 そして転生してから行っていた研究のデータを送信する。

 それを確認すると彼もまた彼女の死後、数百年分の研究データを送信し、互いにそれを共有した。


「風邪をひいてなくて安心したけど、早く服を着て! アリサちゃんも女の子なんだから」


 めんどくさそうに散らかっている衣服の中から下着を取り出し身に着けた。

 そして空間収納から制服を取り出し着替え始める。

 それに合わせてエリナも制服に着替える為、仕切りの裏に移動する。


「エリナって大胆だよね。お兄ちゃんの目の前で着替えるなんて」

「え? どういう事?」

「お兄ちゃんの目って障害物の裏側を見ることも出来るから、そんな仕切りだと無いに等しいよ」


 エリナが下着姿になったタイミングで悪い笑みを浮かべながら言い放つ。

 それを聞くと彼女は顔がトマトの様に真っ赤になる。


「!? ど、どういう事!! そんなの聞いてないよ!?」

「別に聞かれなかったからなー。いつも目の保養をさせてくれて感謝してるぜマスター。……そう言えば今日は珍しく水玉模様なんだな。いつもは着けてないの――にぃぃぃ!!」


 その瞬間、目の前に魔法陣が出現し盛大に吹き飛ばされるのだった。

 

 それから少しして彼らは学院に登校していた。


「ったく朝からひどい目に合ったぜ」

「それは私の台詞だよ! まさかいつも見てたの!?」

「いやだって、マスターがいきなり脱ぎ始めてただろ。てっきり知っててやってるのかと」


 その言葉からは一切の悪気を感じない。

 事実を知り、また顔を赤く染めて恥ずかしさのあまり俯いた。

 そんな二人のやり取りを若干一名、面白そうに眺めていた。


「あはは。お兄ちゃん達って一応は主従関係なのにそんなやり取りするんだね」

「わ、私はそんな関係だとは思ってないよ。だって主従関係だと楽しく過ごせないじゃん」


 そんなこんなで校舎に到着するとそこで別れ、各々教室を目指して歩みを進める。

 そして教室に入るとクレアが出迎えた。


「ちょうどいいところに来た。ユリウス、副学院長からのご指名だ。お前、今から副学院長室まで行ってこい。場所は学院長室の隣だ」

「その部屋作る意味あったのか?」

「まあそこはオレも同意見だ。……ほらさっさと行ってこい。授業は仕方ないから免除だ」


 叩き出されるように教室から追い出された。

 めんどくさそうな表情を浮かべながら、副学院長室を目指す。

 道中、様々な教室から授業の声が漏れているのを聞き、少し懐かしい雰囲気を感じながら歩みを進める。

 目的地に到着すると、ノックもせず扉を蹴破るかの様な勢いで開け放つ。

 扉を開けた先には着替えの途中だったのか下着姿のゾーイがいた。


「……キャァァァァ!!」


 一瞬、え!? と言う表情を浮かべたかと思うと、乙女の悲鳴が部屋に響き渡った。

 だが、そんなことは意に介さずに近くのソファーに腰掛ける。


「ユ、ユリウス君、ノックもしないで入ってくるのは礼儀に欠けているのでは? それに女の人が着替えているのですから、せめて後ろを向くのが普通だと思います」


 頬を赤く染める。 


「ずいぶん人間らしくなったみたいだなゾーイ。……否、二天龍が一柱、黒天のバルキアスと呼ぶべきかな?」


 ユリウスの言葉を聞くとゾーイはつまらなそうに溜息を吐く。 


「はぁぁ、バレていたのか。渾身の芝居が出来たと思っていたのだがな。……いつからだ?」

「そりゃあ、一目見た時からだよ。お前の魔力を忘れるわけがないだろ。だいいち魔力がだだ漏れなんだよ。そんな状態でよく正体がバレてないと思ったな」

「ったく、変わらないな。……改めて、久しいなアルス=マグナ」

「ああ、久しぶりだな」


 ゾーイは服を着ることなく、ユリウスの対面側にあるソファーに座る。


「ところでお前、服は着ないのか?」

「別に着る必要が無いだろ。……まさか我のこの姿に欲情したのか?」

「神トカゲの下着姿を見て興奮するわけねーだろ。……にしてもまさか神が人の中に紛れてるとは誰も思わねーだろうな」

「だからこそ驚かせてやろうと思ったのだがな……」


 残念そうに肩を落とす。


「ははは! 残念だったな。もう少し人間の体を使いこなせてればワンチャンあったんじゃないか?」

「これでも数十日は生きているのだぞ?」

「数十日? ……」


 彼女の言葉に首を傾げた。

 しかし、すぐに答えにたどり着く。


「ああ、なるほど。数十年ってことね。って、お前婆じゃん!!」

「貴様ら人間の歳に直せば、まだ十代だ!」

「どういうことだ?」

「この体に転生したせいだと思うのだが、エルフよりも長寿の生命体になってしまったらしい。故に成長もかなり遅いみたいだ」

「そういう絡繰りか」


 納得の表情を浮かべ頷いた。

 そしてユリウスは本題を切り出す。


「……で、俺を呼びだした理由は?」

「まあ待て。もう一人呼んでいる」


 それから少しの間、沈黙が部屋を支配する。

 数分待つが一向に二人目の人物が来る気配はない。

 流石に暇だと感じたユリウスは先ほどから疑問に思っていたことを聞く。


「さっきから疑問に思っていたのだが、何でお前は転生したんだ?」

「そんなの決まってるだろう。あの最高神(クソ野郎)に殺させたからだよ」

「いくら最高神でもお前は殺せないだろ」


 いくら神最強とは言え、相手は世界最強の神龍。

 まともに戦えばどちらが勝つか目に見える程の差がある。

 だからこそ、そんな存在が殺されたことに驚きを隠せずにいた。


「四百年の昼寝に就いていたところに、原初の権能の欠片を使われたようだ。恐らく道連れの類だろうな」

「昼寝のスケールじゃない気が……」


 バカげたスケールの大きさにツッコミを入れることすら馬鹿らしく感じる。 

 そこでふとゾーイの死因について心当たりがある事に気がつく。


「あー多分お前が死んだのって、俺があれを殺したからじゃないか?」

「だろうな。それ以外考えられん」

「意外と怒らないんだな」

「我が弱かっただけの話だ。思い上がるなよ人間。それに……」

「それに? 何だ?」

「人間の姿も悪くない」

「そうか」


 ユリウスは意外な返答に少し驚きつつも、肝心なもう一つの疑問についても聞いてみることにした。


「相方はまだ生きてるのか?」

「あれも一緒に道連れにされたようだ。その証拠にもう一人の副学院長ソニアがいるだろ」

「まだ会ったことはないが名前くらいは知っていたが、まさかお前らが双子だとは驚きだよ」

「皮肉にも我らが創造された時と同じだ」


 どこか嫌そうな顔をしていた。

 そしてゾーイは深い溜め息を吐き、天井を見上げる。

 そんな彼女を見て、ユリウスは神が人間らしい仕草をしているのが馬鹿らしく感じ、鼻で笑った。


「ところでユリウス、貴様はこの時代は神に支配されてると思うか?」

「なぜ神であったお前がそんな事を聞く?」

「この時代にはどこか違和感を感じるからだ。それでお前の意見も聞きたいと思ってな。で、どうなんだ?」

「十中八九、支配されてるだろうな。一万という長い月日が経ってもなお、発展していないのが何よりの証拠だろ」

「やはり貴様もそう感じていたか」

「それで誰が支配している?」

「我の見立てでは恐らく――」


 その瞬間、勢いよく扉が開かれ、入って来た人物の声により彼女の声が遮られる。

 しかし、ユリウスの耳はゾーイの言葉をちゃんと拾っていた。


「お兄ちゃん発見!!」


 部屋の中に入って来た人物はアリサだった。


「もしかしてもう一人の人物ってアリサの事か!?」

「そうだ。今回の依頼でお前ら二人がコンビを組む方が都合がいいと思って呼んだのだ」


 アリサは当然と言わんばかりに、ユリウスの隣に座る。

 しかもほぼ密着であった。

 だが、ゾーイはそんなことは気にせず話を続けるようだ。


「依頼内容は、学院にあるダンジョンの完全攻略だ。もちろんマッピングも行ってもらう」

「それものすごくめんどくさい奴だよ!」

「それよりも俺はダンジョン攻略されてない事に驚いているのだが?」


 ごもっともな意見に反論する様子はない。


「まあ、もっともな意見だな。言い訳に聞こえるかもだが、我らも攻略の為にダンジョンに潜ってはいたんだ。だが、第六十層の階層ボスが強すぎて歯が立たなかった」

「お前ら仮にも元神龍だろ……」


 呆れ顔を向ける。

 その一方で隣にいるアリサは、そうだそうだ! と言わんばかりに頷いていた。


「そもそもお前らが勝てなかった相手に俺らが勝てるわけないだろ」

「いや、恐らく貴様らなら勝てるはずだ。我らは生まれた時から最強に近い存在だった。故に弱者の戦い方がわからなかったのだ。……つまり、弱くなろうとも力の使い方を知っている貴様らなら――」

「勝てるってことか」

「そうだ。……学院の為だと思って依頼を引き受けろ」

「命令形で言うな!!」


 隣にいるアリサに視線を移す。

 その視線に気がつくと、直ぐに首を縦に振り同意を示す。


「わたしはお兄ちゃんについてくよ。……でも依頼なんだから報酬はちゃんとあるんだよね?」


 確認するように問いただす。


「もちろんだ。今の我が出来る範囲で貴様らの望みを叶えよう」

「じゃあ、お兄ちゃんと一緒のクラスにして欲しい」

「妹よ。流石にそれは無茶では?」


 だが、答えは直ぐに返って来た。


「難しいが依頼完了までには何とかする」


 即答で応えるあたり、何か当てがあるような様子だ。

 そして何かを言おうとするユリウスに気がつき、期待の目を向ける。


「期待に溢れた目を俺に向けるな! ……まあ報酬があるなら文句はない。その依頼引き受けるぞ」


 アリサも同じく同意する。

 話がまとまり、これで交渉を終えようとゾーイが席を立とうとした瞬間――。

 ユリウスが追加の要求をする。


「お前も来いよ?」

「仕方ないな。我は行かないが報酬は準備しといてやる」


 あくまでも行く気はないと視線でも訴えているのだった。

いつも読んで下さり有難うございます。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。


更新は毎週木曜日の予定です。

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