第27話 元魔王VS序列二位
激しい剣戟が中庭に響き渡っていた。
両者譲らない戦いはとどまることを知らず、その熱を上げてさらに激しくなっていく。
――一閃
二本の剣から放たれた剣技が彼女に襲い掛かる。
一つ目の攻撃をいとも容易く受け流すと同時に、二つ目の攻撃を回避する。
そしてカウンターとして彼女も‘一閃’を放つ。
放たれた一撃を紙一重で回避すると、そのまま懐に潜り込み大振りの一撃を放った。
しかし、行動が読まれていたのか彼女に剣が届くことはなかった。
「流石だな」
「伊達に序列二位はやってないよ」
互いに距離を取り、息を整える。
その隙にユリウスは魔法を放った。
「――ディスペル!」
強化などを打ち消す魔法が、彼女の使っていた隠蔽魔法を解除した。
すると、アリスの右目が青から赤に変わる。
「お前オッドアイだったのか!?」
「まさかこの魔法を解除するとは、驚いたわ」
「でも何故隠蔽魔法を?」
「オッドアイは珍しいから面倒事に巻き込まれやすいの」
「なるほど」
会話が途切れた瞬間、再び剣戟が鳴り響いた。
戦闘速度が更に加速していく。
最早エリナ達の動体視力では、彼らの動きを追うことができない。
ここからが本番。
先程までの準備運動とは違い、明らかにお互い殺気を放っている。
しかも尋常ではない殺気で。
ユリウスの後方に無数の魔法陣が展開された。
その魔法陣が消えた瞬間、魔法が発動する。
消えるタイミングと数はランダムで、相手にパターンを読ませない様にしていた。
魔法の種類も様々である。
「これは厄介かも……」
一歩踏み込み、放たれた魔法を一振りで斬り捨てた。
「――セルモトープリヴィア!!」
アリスが放った魔法が、ユリウスの魔法陣を全て焼却していく。
そして残された膨大な熱で視界が一瞬歪む。
次の瞬間、彼の首元にエリナの剣が迫る。
首が刎ねられるギリギリの所で、彼はその剣を受け止めた。
「ふー。危なかった」
「これを防ぐんだ」
驚きながらも、彼女は笑っていた。
ユリウス同様、戦いを楽しんでいたのだ。
攻撃を防がれたことで、アリスは距離を取ろうとする。
しかし、それを簡単に見逃す彼ではない。
「――紫電極閃!」
二本の剣から放たれる二刀流の剣技。
それは無数の剣閃と成り、アリスを襲う。
「――紫電一閃!!」
しかし、彼女は一刀流の剣技でその全てを捌き切る。
(流石は我が妹だ。やっぱ剣であいつに勝つのは辛いな)
この戦いを経て、彼の疑問は解消された。
当初はまだ疑問レベルであったが、戦い方や言葉遣いを見聞きし、それは確信に変わったようだ。
疑問が晴れたことに喜んでる暇もなく、彼女の怒涛の攻撃は収まることを知らず、その勢いが増していく。
二刀流の手数ですら捌き切ることの出来ない攻撃。
徐々にダメージが蓄積される。
「やるー」
「まだまだ行くよ」
本腰を入れて攻撃に移る。
互いに攻撃を優先したことで、体に傷が増えていく。
剣が体の何処かに掠ろうと、攻撃の手は緩むことはない。
攻撃の激しさが増す。
互いに魔法を放ちながら戦っているが全て相殺、もしくは斬り落とされて決定打にならない。
魔法を一発でも食らえば、ただでは済まないことを戦いを通して悟っていたのだ。
それ故に魔法への警戒は剣撃の比ではない。
しかし、魔法だけに気を取られれば剣で殺される。
そんな状況で戦い合っている二人の精神力は尋常ではない。
観戦しているエリナ達も「すごい」以外の言葉を見つけられない様子。
そしてそんな硬直状態で先に仕掛けたのはアリスだった。
「――蜃気楼」
武技を使った瞬間、ユリウスの視界内にいるアリスが一瞬だが陽炎の様に揺らぐ。
そして何事もなかったかのようにアリスが彼に攻撃を仕掛ける。
初撃を受け止め、武技の正体を見破る。
「実像分身か……」
小さく呟きながらもその攻撃を見事に捌き切っていた。
「今、一瞬アリスちゃんが歪まなかった? 気のせいかな……」
「気のせいじゃ無いわ。わたしもそう見えた」
「ワタシも歪んだように見えましたよ」
武技の正体がわからず混乱する女子陣だったが、すぐにその疑問も解決することになる。
攻撃を捌いていると、ユリウスは不意に剣を一本後ろに回す。
その瞬間剣と剣がぶつかり合う音が鳴り響く。
「へー初見でこれを見抜くんだ~」
「アリサ、お前の得意技だろ。俺が知らないわけない」
何もないところから声がする。
そして姿を消している本体のアリスと分身体の二人を相手取る。
分身体とアリスは見事な連携でユリウスを圧倒する。
攻撃の隙を見つけられず、防戦一方。
「チッ! 二人相手はきつ過ぎだっての!!」
舌打ちをし、苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。
思考をフル回転させ、現状打破の作戦を考え込む。
しかし、時間をかけることが出来ない現状、ユリウスもアリスと同じ手を使わざるを得ない。
「――影たる魔王」
足元の影が揺らぐ。
すると、ユリウスそっくりの黒い人型の何かが出現した。
互いに背中合わせになる。
黒い分身体はアリスの分身体と対峙し、ユリウスはアリスと対峙する。
分身体同士の戦いはほぼ互角。
唯一、黒い分身は低位の魔法が使えるというアドバンテージがある為か、ほんの少し優勢の様だ。
そして本体同士の戦いは激化していた。
アリスが姿を消しているにも関わらず、攻撃を的確に捌き隙あればカウンターを入れる。
互いの剣技がぶつかり合い、絶え間なく金属音が鳴り響く。
金属同士が擦れる音。
金属同士が激しくぶつかる音など様々だ。
激戦が続く中、遂に分身同士の戦いに決着がつく。
互いの分身が心臓部分を貫き合う。
相打ちで倒れると、分身は消滅した。
決定打を入れられず、ユリウスはしびれを切らす。
アリスの剣を弾いた瞬間、一歩踏み込み大技を放とうと大振りをした瞬間……。
「――ッ! しまった!!」
アリスは瞬時に体勢を変え、ユリウスの片腕を斬り飛ばす。
だが、ただではやられる訳もなく、しっかりとアリスの片腕を魔法で吹き飛ばす。
両者の鮮血が飛び散り、顔や衣服に付着する。
腕を切り落とされたにも関わらず、二人とも苦痛の表情を浮かべない。
「少し欲張ったな」
「君だって殺り急いでるじゃん」
楽しそうな表情を浮かべる。
再び互いの猛攻が始まるが、やはり互角。
そしてアリスは奥の手を使う。
「まさか、これを使うことになるとは思わなかったよ。……本気で行かせてもらうね」
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