第26話 決闘
外に出るとクレアが出迎える。
「お! 戻ったか。お疲れさん。成果は?」
「これであってますか?」
エリナがポーチから巻物を取り出し、クレアに手渡す。
「ああ、間違いない。課題達成だよ」
女子陣が喜んでいる中、アレスが前に出る。
「先生、オレらは何番目だ?」
「ん? ああ、一番乗りだぞ。おめでとう」
その言葉に満足げな微笑を浮かべた。
そして一行は全パーティーが戻ってくるまで、各自ダンジョンの入り口付近で自由に過ごすことになる。
その間暇を持て余していたユリウスは、消費した弾をマガジンとクリップに詰め込む作業をしていた。
「あの群れとの戦闘で、貴重な弾をかなり消費したな」
先の戦いを思い出しながら、めんどくさそうに弾込めを行う。
するとエリナが隣に座る。
「何してるの?」
「消費した分の弾を込めてる」
「便利そうな武器なのにこの辺は原始的なんだね」
「本来は弾込め用の道具があるんだけど、手持ちにあるのは何故か壊れちまってるんだよ。運が悪いことに……」
「予備とかないの?」
「それは魔王城の宝物庫の中だな。設計図も無いから作る事は出来ない」
ユリウスは溜め息を吐いた。
「その武器ってユウ君の時代だと皆使ってたの?」
「俺が生まれる前に栄えていた時代の遺産だからそんなに数は無いし、設計図もほとんど残ってない。だから作ることも難しいから全員分の用意は出来なかった。まあ作る為の道具が無かったってのもなるな」
「貴重な物なんだね」
そんな他愛もない話をしていると、クレアが集合の指示が出す。
二人は立ち上がり、クレアの元に歩いて行く。
「全パーティーが戻ったから今日の探索授業は終了だ。今日はゆっくり休むといい」
「それなら明日を休みにしてください!」
「文句なら学院長に言ってくれ。……と言うわけで解散!!」
男子生徒からの文句に対し、クレアも『言いたいことはわかる』と表情に出ていた。
そして蜘蛛の子が散るように一同去って行く。
ユリウスとエリナも寮に戻る為、帰路に着いていた。
しかし、学院の中庭に差し掛かると見知らぬ少女に呼び止められる。
「待ちなさい!!」
その言葉に彼は振り向く。
「俺の事か?」
「そうだよ」
ユリウスを呼び止めた少女は魔導士にも関わらず、腰に一本の剣を携えていた。
「で、何の様だ?」
「あなたに序列戦……いいえ、死闘を申し込む!!」
いきなりの死闘宣言に戸惑いを見せる。
しかし、少女はそれを無視するように話を続ける。
「あなた見たいな脆弱な人がわたしのお兄ちゃ……んん。兄さんの名を語り、姿まで瓜二つだなんて許せない!」
「流石に言いがかりが過ぎないか? 世界を探せばそっくりな人はたくさんいるだろ」
「確かにそうだね。でもその額の紋章は兄さんだけの物。だから世界を探してもいるはずが無いの!」
「なるほど。それで死闘か」
ユリウスはそこでやっと彼女の言い分を理解した。
つまり彼女は自身の兄を貶されたと思っているようだ。
同時に彼は一つの疑問を抱く。
そしてそれを確かめる為に、少女の誘いに乗ることにした。
「いいぜ。受けて立つ! 勝利条件は俺がお前を殺せばいいんだな?」
「うん、そうだよ。生き残った方が勝ち。だからこれはいらない」
少女は胸元にある校章を外すと、無造作に投げ捨てる。
彼もまた少女と同じことをする。
「そういえばマスターはこいつを知ってるか?」
「知らないで決闘を受けたの……」
エリナはどこか呆れた様子で話を続ける。
「流石に知ってるよ。だってこの学院の序列二位だもん」
「ほう。面白そうだ」
それを聞くと不適の笑みを浮かべる。
「名前は――」
彼女が少女の名を口にしようとすると、エリナの言葉を遮るように少女が名乗る。
「わたしの名前はアリス。アリス・フォン・ラドクリフ」
「これはこれは丁寧にどうも。俺の名は――」
「知ってる。ユリウス・アルバートでしょ」
アリスは言うことは言ったという様子で剣を抜く。
「ほら、あなたも剣を抜いて」
促されるようにユリウスもまた二本の剣を抜き放つ。
「戦闘スタイルまで似せてるんだね」
「似せてるというか……本人だと言っても信じないだろ?」
「七賢者である兄さんが死ぬはずないもん。それにあなたから感じる魔力量は兄さんが保有する量には到底及ばない。だからあなたは偽物。……無駄話はこれで終わり。あなたから来ないなら私から行かせてもらうよ!!」
その言葉を言い終える頃には、ユリウスの眼前に剣が迫っていた。
(やっぱこうなるか……あいつらしいな)
剣を紙一重で躱すと、反撃と言わんばかりに二本の剣で攻撃を仕掛けた。
しかし、アリスはその剣を華麗に受け流す。
周囲に甲高い金属音が鳴り響き、決闘を見ているエリナとアリスの友達は耳を塞ぐ。
二人の攻撃は拮抗し、剣と剣がぶつかる音が鳴り響く。
凄まじい程の剣戟は見ているものを魅了させる。
風を切る音。
常人では決して目で捉えることが出来ない速度で剣が振られる。
互いにそれをいなし合う。
「少し本気を出す。ついてこれるか?」
「望むところ!!」
二人はニヤリと不適の笑みを溢す。
剣撃と同時にユリウスは無数の攻撃魔法を展開する。
放たれた魔法を全てアリスは魔法で迎撃し、撃ち落とす。
不意にアリスから放たれた魔法を剣で斬り裂き、突き進む。
互いに剣を交えたことで、アリスのユリウスへの評価が少し上がっていた。
だが、それで加減する彼女ではない。
強烈な一撃をユリウスに放つ。
放たれた一撃を二本の剣で受け止める。
手が痺れるのを感じた。
それと同時に高揚感が自分を包み込んでいるがわかる。
「楽しくなってきた」
「わたしも」
二人のスロットルはどんどん上がっていき、もはや彼らを止められる者はこの場からいなくなる。
剣戟を聞きつけ、エリナたちがよく知る人物が二人歩いてくる。
「戻ってきてそうそう何やってるのあいつは!?」
「あ、ルナちゃんにヴィオラちゃんもさっきぶり」
「どうもー! 所で何の騒ぎですか?」
「実は――」
エリナは二人に状況を説明した。
「はぁ!? 内の序列二位と決闘!?」
「あはは……私も何が何だか状況についていけてない……」
苦笑いを浮かべた。
「仕方ないですよ。今の説明だけだとワタシも状況が掴めませんし……」
「そんな事よりアリスと互角にやり合ってるあいつは、ほんと何者なのよ。凄いの一言しか見つからないわ」
「ほんと凄いですよね。あの剣捌き」
「ヴィオラちゃん見えてるの!?」
驚くエリナに、ヴィオラは首を振る。
「実際には見えてませんよ。でも、剣戟の音と互角だということからそう予想しただけです」
「そうなんだ」
すると、一人の男子生徒が音に引き付けられたように、彼女たちの元に合流する。
「ったく! くだらねぇ」
「聞いてたんだ」
「通りすがりに聞こえたもんでな。……いくらあいつでもあれには勝てねーよ」
それだけ言うとアレスはどこかへ去って行く。
そうは言うものの、彼もまた戦士の一人。
少し離れた場所から彼ら二人の戦いを眺め、驚嘆の声を漏らしていた。
「何だったの?」
「何だったんだろうね」
ルナとエリナが不思議そうに彼の後ろ姿を、眺めるのだった。
いつも読んで下さり有難うございます。
『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。




