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第24話 ダンジョン探索授業

 翌日、ユリウス達はダンジョンの扉の前に集合していた。


「各班準備を整え、出発の時はオレに報告してからダンジョンに入れよ」


 クレアは言いたいことを言い終えると、ユリウスの元に一直線で歩いて行く。

 彼女が接近してくるのに気がつくと、ユリウスはめんどくさそうにそちらを向いた。


「何の用だ?」

「相変わらず生意気だな。まあいい、お前に残念なお知らせだ」

「??」


 ユリウスは先を言う様に促す。


「ユリウス、今回の授業では魔法及び剣の使用を禁止する」

「おい待て!! 確かに残念なお知らせだがそれは置いといて、どう戦えと?」


 予想外の発言につい彼は大声を出してしまう。

 パーティーメンバー全員が驚愕しているのが見なくてもわかる。


「根性で戦え! お前が魔法と剣を使ったら授業にならなくなると、学院長も含め我々教師陣全員の意見だ。……そうそう言い忘れるとこだったが、強すぎる武器の使用も禁止だ」


 伝えることは伝えたと言わんばかりに、彼女は所定の位置に戻っていく。

 それに唖然とする一同。

 彼は溜息を吐くと、二本の剣を腰の後ろに着け直す。

 そして立て続けに溜息を吐きながら、ユリウスは空間収納から二個のガンホルダーとマガジンポーチを取り出した。


 その二つを装備すると再び空間収納を開き、そこから三丁の銃を取り出す。

 一丁はM一ガーランドと見た目が酷似したセミオートライフルと、残り二丁はM一九一一ガバメントに酷似したハンドガンであった。

 

 初めて見る武器を興味深そうに見ているパーティーメンバーを横目に、ユリウスは銃のカスタマイズを行う。

 まず、メイン武器となるガーランドからスコープを外してアイアンサイトに切り替え、銃剣をガーランドの先端に取り付けた。

 そしてガバメントには消音器(サプレッサー)を取り付ける。


 一通りのカスタマイズを終えると、ガーランドのボルトを後ろに引き、正常に動作して弾詰まりが起きていないか確認を終えると、弾を込めてボルトを押す。

 同様にガバメントもスライドを後ろに引き、薬室に異常が無い事を確かめた。

 武器の確認が済んだタイミングでヴィオラが話しかけてくる。


「それは一体何ですか?」 

「銃と呼ばれる武器だ。簡単に言えば飛び道具だな。火力を抑えろって言われたからかなり昔の武器だけどな……」


 ド派手で高火力の武器を使いたかったユリウスは、残念そうな表情を浮かべながら、ガバメントをガンホルダーへ納める。

 

「ポジションはどうするんですか?」

「そういえばその問題があったな……。今回は武器構成的に中衛だな。遊撃は任せろ」

「わかりました! 皆さんもそれでいいですか?」


 その言葉に一同はコクリと頷く。

 そして全員が装備の確認を終え、いよいよダンジョン探索の授業が始まる。

 クレアに報告を済ませると一行は分厚い鉄の扉を潜り、薄暗いダンジョンに足を踏み入れた。

 少し進むと一行の前に階段が現れる。


「こ、これを降りたらいよいよダンジョンなんだね」


 エリナが階段を下ろうとした直後、アレスから制止の声が掛けられた。


「おい無能!! 先に行くな。オレが先頭だ」


 アレスの装備は中盾と剣、そして中装備の鎧を着けていた。

 とても魔導士の格好とは言えない。

 むしろ騎士と言われた方が、まだしっくりくる見た目だ。


 彼は振り返ることなく、階段を下っていく。

 後れを取らない様、一行もその後ろを追いかける。


 階段を下り終えてダンジョン内に到着した。

 ダンジョンは洞窟の様な雰囲気があり、中は閉鎖空間にも関わらず、特殊な鉱石などの影響である程度の明るさが確保されていた。

 とは言え、流石にちょっとした光源が欲しいと感じる。


「光よ集いて道を照らせ! ――ライト」


 エリナが魔法を使い、周囲を明るく照らす。


「そんなのも無詠唱で出来ないのか」


 嫌味っぽく言われ、周りの空気が少し悪くなる。

 空気を変えようと、ユリウスが全員分のランタンを空間収納から取り出し、一行に手渡した。


「マスター、魔法を消せ。これくらいの明るさなら、魔法を使わなくてもランタンで十分だ」

「おいユリウス! 魔法が合った方がいいだろ。普通に考えて」

「ここは仮にもダンジョンだ。他の物で代用できるなら魔力はなるべく温存した方がいい。何が起きるか予測出来ないからな」

「……一理あるな」


 意外にも素直に納得した。

 ランタンを腰に付け終わると火を灯し、一行は目的地である第四層への階段に向かって再び歩みを進める。

 道中は静かな物であった。

 先に入ったパーティーが魔物を片っ端から殺して進んだせいなのか。

 全く気配を感じない。

 それでも警戒を解かずに進んでいると、先頭を歩くアレスが手で止まれの合図を出す。

 そして剣を抜き、慎重に音を立てない様に曲がり角の奥の様子を確認する。


「ただの死体だ。こっちにこい」


 その言葉にユリウス以外の一行は安堵の息を吐く。

 そしてアレスに合流すると、そこにあったのは大量の魔物の死骸だった。


「このダンジョンは浅い階層でも、普段こんなに魔物がいるのか?」

「オレも何回か潜ったことがあるが、こんなに魔物は多くなかったはずだ。たまたま遭遇しなかっただけかも知れないがな」

「イレギュラーが起きてると思った方が良さそうだな」

「ああ、その方がいいだろうな」


 慣れた会話をしていたのはユリウスとアレスだけで、女子陣には二人の会話を聞いたせいか緊張が走る。


「とりあえず魔石を回収するか。素材もほんの少ししか、剥ぎ取られてないみたいだ」

「そんな事より先を急ぐぞ。解体ショーは後にしろ」


 偉そうな態度で言い放つと、一人で勝手にダンジョンの奥へと向かっていく。

 はぁぁ……とユリウスは残念そうな溜息を吐く。

 そして魔物の死骸を片っ端から空間収納に放り込みながら、彼の後を追いかける。

 エリナ達も慌ててユリウスの後を追う。


 第一層では魔物と出会うことなく、第二階層に到着する。


「なんか拍子抜けでしたねー。結局魔物とは一体も出会いませんでしたし」

「そうだね。もしかしたら先行したパーティーがほとんど倒しちゃったのかな」

「そうだといいわね。わたしもその方が楽が出来るからありがたいわ」


 先頭を歩くアレスが急に立ち止まる。

 ユリウスも気配でなぜ彼が立ち止まったのかを察していた。


「三人とも話の途中で悪いけど、お客さんの登場だ」


 その言葉に女子三人は各自構えを取り、臨戦態勢に入る。

 ユリウスもガーランドを腰だめで構え、迎撃の姿勢を取った。


 直後、何かが金属にぶつかった音が響く。

 一行に緊張が走る。


 金属音の正体はアレスが構える盾に、魔物が勢いよくぶつかった音であった。

 ユリウスは数秘術でのエイムアシストを切り、久々に使う銃の腕慣らしと言わんばかりに奥にいる魔物目掛けて発砲する。

 銃声と共に放たれた一発の銃弾は魔物の腹部に命中した。


 銃声に驚いた女子陣は可愛らしい小さな悲鳴を上げる。


「やっぱ銃の腕も鈍ってやがる。魔法をメインで戦いすぎた弊害か?」


 ため息交じりの苦笑いを浮かべつつも、しっかり先ほどの魔物にもう一発銃弾を撃ち込み絶命させた。

 アレスが相手をしていない魔物が後ろ側に来ない様、援護射撃を行う。

 弾を撃ち尽くすと、カキンッ! という甲高い音と共にクリップが外に弾き出され、ボルトが後ろに引かれた状態でロックされる。

 そしてクリップごと八発の弾を銃に込めると、ボルトのロックを外してリロードを終える。

 それからも八発撃ち尽くすたびにリロードを行うを繰り返した。

 そうこうしているとあっという間に戦闘が終了し、彼女たち三人の出番が回ってくることはなかった。 


「ワタシ達の出番ありませんでしたね……」


 どこか残念そうにヴィオラが呟いたのだった。


 奥に進むにつれて魔物の量が増え始め、パーティーメンバー全員で協力して先に進んでいた。

 そして程よい大きさの横穴を見つけ、そこで休息を取る事になった。


「マスターこの魔道具をこの穴の四隅に置いてくれ」

「わかったよ」


 魔道具を四隅に置き終えると、ユリウスは魔力を込め魔道具を起動する。

 すると一瞬だけ半透明な壁が、横穴全体を覆うのが見えた。

 それと同時に数秘術を使い、入り口を土で封鎖する。


「これは何の魔道具なんですか?」

「この魔道具は防音と気配遮断の効果のある結界を四つの魔道具を起点に、小規模で展開するものだ」

「そんなのもあるんですね」


 ヴィオラは魔道具を興味深そうに観察し、メモ帳に記録をしていた。

 その間にユリウスはもう一つの魔道具を空間収納から取り出す。


「次は何なの?」

「こいつは消臭と防音の効果がある魔道具だ」


 ルナからの問いに即答で応える。


「あの魔道具を使ってるんだから、使う必要ないでしょ。それに使い道があるとは思えないわ」

「まあ使うためと言うより、携帯するのを忘れたから取り出しただけなんだけどな。……それにこいつは臭いとか音に敏感な魔物から身を隠すための物だし、トイレとかのプライベートを守れるという一石二鳥の魔道具なのだ」

「それならちょっと借りるわよ」


 ルナは魔道具を受け取ると、一行から離れて行く。


「見たら殺すわよ!!」

「見ないから安心しろ」


 離れて行く彼女に背を向けると、ユリウスは空間収納に入れていた魔物の死骸を取り出す。

 そして腰の後ろに装備していたナイフで、解体を始めた。

 器用に皮や牙と言った素材となる部分だけを剥ぎ取り、最後には魔石を体内から抉り取る。

 魔石を抜き取られた魔物は光の粒になり、消滅していく。

 

「オレにも手伝わせろ。暇だ」

「ほれ」


 ユリウスはアレスに魔物の死骸を放り投げる。

 そして二人で魔物の解体を行う。


「前々から思っていたんだが、何もない場所から物を出し入れしてるその魔法はなんだ?」

「空間収納って魔法だ。効果は見ての通りだよ。使えるようになると便利だぞ」

「オレでも使えるのか?」

「多分な。まあ魔法の鍛錬をもう少し積めばの話だが」


 そんなことを話していると突然話掛けてくる人物がいた。


「ユウ君、ルナちゃんに貸してる魔道具私も借りていいかな?」


 恥ずかしさのあまり、エリナは顔を真っ赤にしていた。


「別にいいぞ。ルナから受け取ってくれ」

「ありがとう」


 そしてエリナはルナと入れ替わる形で魔道具を借り、最終的にはヴィオラも借りるのだった。


 それから十分ほどが経ち、一行は再びダンジョン攻略を再開する。

 目的地までの道中、魔物とはなぜか接敵することはなかった。


「これが目的のスクロールかな」


 台座に置かれた巻物をエリナが手に取った。


「だろうな。しっかり持っとけよ無能……」


 アレスが突然黙り込み、一行は不思議そうに首を傾けた。


「ねぇアレス、いきなり黙り込んでどうしたのよ?」

「……スクロールの数が多すぎると思ってな。ここまで魔物とほとんど接敵しなかった理由は無能が言った通り、先行してるパーティーが討伐したものとして仮定していたが、この数を見るにオレらを含めてもほとんどここに到着してないことになる。流石に不自然だと思ってな」

「言われてみればそうですね。ここまでの道中、戦闘こそありましたがダンジョンにしては戦闘回数が少なすぎます!」


 アレスの意見に険しい顔をする一行を横目に、ユリウスは涼しそうな顔で索敵魔法を展開し、索敵を行う。

 表情を変えず、彼は索敵結果を一行に伝える。


「今はここを離れた方がいい。結構な数の魔物の群れがここに近づいて来てる」

「それはほんとか? ユリウス」

「ここで嘘を言う意味がないだろ」


 それからの行動は早かった。

 巻物を回収してすぐその場を離れる。

 ユリウスの索敵結果をもとに来た道を戻るのではなく、迂回して第二階層を目指すことになった。

 しかし、迂回したは良かったが進んだ先にも魔物群れが現れるのだった。


いつも読んで下さり有難うございます。

『面白い』や『よかった』と思っていただけたら評価やブックマーク、感想等をしていただけると嬉しいです。


これからもよろしくお願いします。

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