第23話 探索準備
序列戦に決着が着く。
「わたしの負け! 降参!」
その言葉に反応し、ルナの校章が元の色に戻り、勝者であるユリウスの校章は一瞬青く光ってから元の色に戻った。
校章には、序列戦のルールのみ順守するように作られているため、追加ルールで戦う際は、どちらかが降参しなくては試合が終了しない仕組みになっている。
そして序列戦が終わるのを確認すると、ユリウスは腰に付けている剣を一本抜く。
「さーて、殺るか」
彼はその言葉と同時に地面を蹴って跳躍すると、空中で体勢を整えて剣を勢いよく振り下ろす。
剣技‘一閃’により、ドラゴンゾンビの首を斬り落とす。
切り落とされた首が地面に落ちると、泥が高いところから落ちた時の様な音に何か硬いものが混じった音を立てる。
「これでよしっと」
絶命したドラゴンゾンビの体は徐々に霧散していく。
そして一分も経たないうちにその体は完全に消滅し、周囲を包み込んでいた腐敗臭も同時に無くなっていた。
「何で召喚獣の首を刎ねたの?」
そう不服そうな声で話かけたのはルナであった。
「久々の召喚魔法で、解除の仕方を忘れたからだ」
「あなたらしい理由ね」
「それよか何で不服そうな声なんだ?」
「わたしにとって召喚獣は戦いの相棒みたいな存在だから、召喚者が殺すのはちょっとね」
その理由にユリウスは納得の色を見せた。
「それはそうと、あんたよくあれを一撃で倒せたわね?」
「召喚した時に簡単に倒せるよう、弱体化させといたから一撃でやれただけだ。もし、弱体化してなかったら、いくら俺でもここまであっさり倒せねーよ」
「なるほどねー。それなら納得」
すると安全な場所から観戦していたエリナとヴィオラの二人が合流する。
ヴィオラに関しては先の戦いを思い出し、まだ興奮が抜けきっていない様子。
そんな中ユリウスがなかなかの爆弾発言をかます。
「お前ら、かなり臭うぞ……」
「ユリウスさん、女の子に向かってそれは酷いです!!」
「いやだって……なーマスター」
エリナは苦笑いを浮かべる。
それと同時にユリウスの発言を否定する素振りは一切見せない。
「あはは……。何もなければとりあえず今日は解散にしない? 早くお風呂に入りたいし」
「賛成! もう体中から嫌な臭いがして死にそうだわ……」
「まさかこんな目にあうとは思いもしませんでした」
そうしてこの日は解散となり、いよいよ明日にはダンジョン探索授業となる。
寮の部屋に戻るとエレナが先に風呂へと向かった。
その間ユリウスはこの時代の魔法文字と、かつての魔法文字の照らし合わせを行っていた。
「ふむふむ。文字の基礎は同じか。……だが、形が少し変わっているみたいだな」
試しにフレイムの魔法陣の一部を改変してみる。
すると、魔法の安定性が無くなり、炎が不安定に揺らぎだすと、間もなく消えてしまう。
それを見たユリウスは‘やはり’と呟く。
この時代の魔法文字は当時と比べて変質した物と、当時の原型を留めた物の二種類が存在しているのだ。
そしてその二つが合わさって作られている魔法は、限りなく安定性を欠く代物になっていた。
その事実に驚きながらも、風呂から上がったエリナと入れ替わるように風呂へ向かう。
体を洗い湯舟に浸かると、先ほどの考察など気にも留めず、ゆっくりと寛ぐ。
「風呂に入ってまで、考え事をするのは無粋だな」
彼が漏らした言葉を聞くものはおらず、風呂の湯気が静かに包み込むのだった。
ユリウスが風呂から上がりると、ベッドに腰掛けた。
それからすぐに彼は空間収納魔法を使い、少し分厚いスマホの様な端末を取り出す。
そして端末の下部にある長方形の穴に、空間収納から取り出していた長方形の何かを差し込む。
すると、画面にはOSのインストールをしている時の様なメーターが表示される。
そのメーターが百パーセントになると、ポンッと言う軽い音が小さく鳴り響く。
音が鳴るとユリウスは端末の右上にあるボタンの様な物を、親指で押す。
端末が立ち上がると画面にはマップが表示される。
しかし、そこに映し出されたのは今とは異なる地形情報と周辺マップだった。
「よしよし、端末が生きててよかった。……この辺も一万年の間にかなり変わったんだな」
ユリウスは予想通りと言った感じで、端末を指で操作する。
昔のマップを保存すると、新規作成と書かれた項目をタップし、新たなマップの生成を行う。
そして表示されたのは彼を中心とした周辺の情報だけだった。
「ま、最初はこんなもんか」
機能のチェックを行っていると、エリナがユリウスの隣に腰掛け、興味深そうに覗き込んでくる。
「それは?」
「俺が生まれる前の時代に作られた遺物だ。色々な用途で使えるように設計されてるっぽいな」
「へー。ちなみにどんな機能があるの?」
「マッピング機能とか通信機能とか、色んなもんが備わってる。まあ、通信に関して通信魔法があるから使う場面はないけどな。しかもこの端末同士じゃないと通信出来ないし……」
その言葉に苦笑いを浮かべる。
「当たり前のように通信魔法っていうんだね」
「あー、この時代じゃもう存在しないのか……」
残念そうな表情を浮かべるが、エリナが首を振って否定した。
「あるにはあるけど、魔力消費量がね……」
その言葉でユリウスは大体の事を察したのだった。
それからしばらくすると、ユリウスはダンジョン探索授業に向けて準備を行っていた。
エリナから渡されたポーションなどの在庫確認を終わらせると、瓶に油を入れる作業をやり始める。
その光景を不思議そうに彼女は見守っていた。
そして何本か作り終えた所で、幾つかを手元に残して、余りを空間収納にしまう。
「何してたの?」
「ん? ああ、火炎瓶を作っていたところだ」
そう言うとユリウスはエリナに向かって、油の入った瓶を二本投げ渡す。
落としそうになりながらもしっかりキャッチすると、瓶をまじまじと観察する。
「どうやって使うの?」
火炎瓶の使い方がわからず、ユリウスに尋ねる。
彼は質問に対し、簡単な説明を行った。
「魔王様にしては、意外と原始的だね」
「魔力を使わず足止めや攻撃が出来るかつ、調達も簡単だから結構重宝するんだよ。特にダンジョン探索とかだとな。……この時代だと使わないのか?」
「多分使って無いかも。それらしい話も聞かないから」
ユリウスの予想通りの返答が返って来た。
そして二人は火炎瓶をポーチの中にしまうと、明日に向けて就寝するのだった。
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