第15話 稽古
そして翌日を迎えていた。
アルス=マグナに文字を教える授業は、昨晩説明を行った為出来ずじまいであった。
現在、アルス=マグナがエリナに対して魔力操作を教えていた。
もちろん、彼女は魔力操作が出来ないと言うわけではない。
しかし、今の魔力操作の精密性は荒削りなため、流石の彼も基礎から教えないと体質改善の訓練に移れないと踏んだようだ。
魔力を精密に操作出来れば、魔法陣を返さずともちょっとしたことが出来る。
例えば、魔力を圧縮して魔力弾を作り、撃ち出すことで魔法より魔力消費量が少ない攻撃が出来たりする。
流石に火力は魔法の方が上だが、魔力操作で弓や剣などの武器を生み出せれば、咄嗟の戦いで魔法より早く対応できる点がメリットとなる。
しかし全盛期のアルス=マグナクラスになれば話は別だ。
そして消費量を増減させれば様々なパラメーターを弄れるため応用力もあり、魔法の場合は火力の調整など弄れるところが限られるため、咄嗟の応用が超一流の魔導士でもない限りは重宝する。
正し、魔法陣を瞬時に書き換えれるくらいの実力があれば話は変わってくるが、書き換えるにしても魔力操作は必要となる為、やはり逃げることは出来ない。
そのことも説明されたエリナはやる気十分と言う様子。
「手始めにこれくらいの大きさの魔力球を五個くらい作ってみろ」
手本の為に、アルス=マグナは掌に拳サイズの魔力球を作り出す。
しかし、彼の魔力球は普通の物とは違い、紋章の力である闇が魔力を侵食している為、黒く変色していた。
その事は気にせず、エリナも掌に魔力を集め、魔力球を作り出す。
だが、大きさは拳小サイズと言ったところであり、三つが限界であった。
「こ、これ以上は制御出来ない……」
「ま、最初は大抵こんなもんだ。気にすんな。……とりあえず十分くらい維持してみろ」
「え!? 十分も!!」
彼女は驚きつつも、頑張る意思を見せる。
しかし、気合だけでどうにかなるものではない。
それを証明するかのように、魔力球の大きさは小さくなり、消滅してしまう。
今の彼女は魔力を安定して供給する技術が無い、その為すぐに魔力球が消滅してしまったのだ。
何故そうなったのかは簡単である。
彼女は体質のせいで初級魔法しか使うことが出来ず、魔法構築まで時間が掛かる物を使ったことが無い。
そのため長時間維持させる行為を体が覚えていないのだ。
「あ……」
「とりあえず失敗は気にするな。今はとにかく、消滅したら作り直すを繰り返して魔力操作と魔力供給の維持の感覚を体に覚えさせろ。出来るようになったら大きさがでかいのを作り、数を増やす! いいな?」
「うん!」
「目標は拳サイズを五個生成して十分維持させること。それが出来るようになったら次の段階に移る。ま、頑張れ。……俺はちょっと試したいことがあるから」
そう言い残し、アルス=マグナは彼女から少し離れた地点に移動を始める。
「待って! コツがあれば教えて欲しい!!」
「コツか~、うーん……」
この時エリナは期待に目を輝かせていた。
だが期待は裏切られる。
「そうだなー魔力球を作った後、維持させる時はウォォォォ! って感じで魔力を送り続けることだな」
「あ……うん。ありがとう……」
そうアルス=マグナは感覚派なのだ。
そのため人に何かを教えたりするのは苦手のはずなのだが、本人は通じていると思っているため、苦手意識を持っていない。
そこがまた余計に質が悪い。
そして溜息を吐くエリナを目尻に、彼は場所を移す。
「さーて、あれは使えるかな? 転生したとしても理論上あの魔法を使ってるから使えるはず……」
どれを的にするか目の前の木々を選んでいく。
「よし、こいつにするか。……爆ぜろ」
すると、その言葉に応じ爆発が起きると、丈夫そうな木がへし折れる。
「穿て……」
言葉に呼応し、地面が突起して目標の木を貫く。
「よし、使えた使えた。威力は上々だな。まあ、予想通り全盛期と比べるとかなり威力ダウンはしてるっぽいな。だけど、抑え気味でこれなら文句なしってとこだな」
アルス=マグナは満足そうに頷きながら、他の言葉も試すのだった。
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