第13話 魔法の訓練
あれから少し時間を置き、彼らは王都の外にある平原と森の境目に来ていた。
ちなみに昨日消し飛ばしたところはもうすでに修復されていたが、調査隊や兵士がわんさかとたくさん集まっているみたいだ。
アルス=マグナはその可能性を汲んで、場所を移していた。
案の定場所を変えたの正解のだったようだ。
そんなことを知らない彼らはこれから魔法の訓練に入るもよう。
何故文字の勉強をしないのかと言うと、昼は魔法の実技訓練し、エリナのもう一つの願いを叶える為に行動。
それ以外にも彼自身の弱いころの戦い方の勘戻しの為もある。
そして夜には文字の勉強をする予定になっている。
「じゃあそこの木に向かって、少し距離を取ってから詠唱を短縮せずに初級魔法を放ってくれ」
エリナはコクリと頷くと、詠唱を始めた。
「炎よ我が元に集いて敵を打ち倒せ! ファイアーボール!!」
火球は不安定な軌道で目標の的に命中する。
そして着弾と同時に火球は弾けて消滅した。
(なるほど……これがこの時代の初級魔法か。道理でエリナがあの程度の魔法で驚いていたわけだ。……それにしても火力が低いし、安定性もない気がするな。いや本来ならもう少し火力と安定性があると仮定した方がいいか? となると、魔法陣もしくはマスターが原因の可能性が高いな)
恐る恐ると言った感じでアルス=マグナの方を向く。
「ど、どう?」
「火力が低すぎて話にならないな。……多分だが、これはマスターもしくは魔法陣に何か原因があるじゃないか? 心当たりとかは?」
エリナは首を横に振る。
「あ……そういえば関係あるかわからないけど、私、初級魔法以外は何故か使えない」
「使えない?」
「うん。魔法陣に魔力を込めても発動しない。もちろん詠唱はしてるよ」
「ちょっとファイアーボールとか言う魔法の魔法陣を見せてくれ」
彼女は近くに落ちていた枝で地面に魔法陣を書き始めた。
描かれた魔法陣を見て、アルス=マグナは驚く。
「まじか……文字の配列が適当過ぎるし、これじゃ魔力効率が悪すぎる。極めつけはこの余計な文字のせいで魔法全体のバランスが崩れてやがるときた。……この程度の魔法なら、昔の新人類どもは俺らと同等の域まで昇華させてたのに一体何があったんだ……」
そうは言うものの、これを見た瞬間彼の頭には先ほどの考察がよぎる。
そしてそれは確信に近い物へと変わる。
判断材料としてはまだ不十分ではあるが、やはり何者かの手によって魔法技術が衰退させられているとしか言いようがない。
いくら旧時代の技術や文献が無くなっていたとしても、ここまで酷い改変が成されていれば、大昔の知識保有者なら誰だってそう思うだろう。
どんな物でも基礎が捻じ曲がって、後世に伝わるわけがないのだから。
この時点では『まだ最初の一つだから』と自分に言い聞かせたアルス=マグナだったが、彼の嫌な予感はこれから的中するのだった。
「……なぁ、マスターが知ってる上位魔法の陣を一つだけ書いてくれないか?」
「いいよ」
彼の小言の一部が聞こえていた彼女は、知識のすり合わせだとこの時点では思っていた。
その為、何でだろう? と疑問を持ちつつも快く承諾した。
そしてエリナが書き上げたのは、ファイアーバレットの魔法陣である。
この魔法は今の時代では上位から最上位の間に位置する魔法であり、約一万年前の時代では中位魔法の分類に入っていた。
魔法の派生はファイアからファイアーボールに進化し、そこからランスとアローに派生し、そしてアローの上位互換がバレットとなる。
旧人類はファイヤーをフレイムと呼び、ファイアーボールをフレイムボールと呼称していた。
フレイムから始まる魔法を新人類が模倣して作ったのがファイアーから始まる魔法なので、フレイムの方が強力になっている。
(やはりか……あの時点で予想はしてたが酷いなこれは……)
この時、彼の考察が確信に変わった瞬間であった。
「原因はわかった?」
「ああ、大体な。魔法陣が原因なのは確定した」
「ってことは、私には原因はないってこと?」
「それは調べないと断言できない。ま、とりあえずは訓練の再開が先だ」
自分自身にも原因があるかも知れないと言う可能性がある以上、エリナは不安で仕方なかったが、折角の機会でもある為、顔を両手で叩き気持ちを入れ替える。
まだ不安そうな面持ちがあるが、それでもコクリと頷いて自分を奮い立たせる。
「うん!」
そしてアルス=マグナが手本の為に、一発魔法を使う。
「マスター、これが本家の魔法だ。……フレイムボール!」
火球は正面の木々を二、三本へし折り、直弾と同時に小爆発を起こした。
「い、今の魔法って!?」
「ああ、この魔法をマスターの祖先達が模倣したのがファイアーボールだろうな。まさしく原型となった魔法だ。……そういえば、当時はまだフレイムボールと呼称されてた気がするぞ。多分、今の名前で呼んでたやつも中にはいただろうがな」
原型となった魔法に感動を抑えられず、目がキラキラとしつつも、その目には涙が溜まっている。
「こんなので感動したらこの先どうすんだよ。これからもっとすごい魔法を見ることになるんだぞ」
「だって、だって、歴史を感じるんだもん!!」
「まぁこの時代の奴らにとってはそうなるのかもな。……いつまでも感動してないで、じゃんじゃん魔法を撃て!」
その声に急かされながら、彼女は魔法を放つ。
そして最初の昼の部の訓練は終わるのだった。
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