第12話 約束
開け放たれた扉から私服姿のエリナが入ってきた。
「おはよう、魔王様」
「ああ、おはよう」
呑気に挨拶を交わすと、アルス=マグナは深刻そうな雰囲気を放つ。
そしてこの時代で生きていくのに今一番大事な問題を切り出す。
それは――
「俺にこの時代の文字を教えてくれ!!」
何を言われるのかと身構えていたエリナは、あまりにも予想外な事で呆然のしており、思考が追いついていなかった。
そして思考が追いつくとやっと、口を開く。
「……う、うん、別に構わないよ。でも私からもお願いがあるの。それを聞いてくれるなら教えてあげる」
「願いの内容は?」
「古代文字を教えて!」
エリナはダメ元でそんなことを言うが、意外の返事が返ってきた。
「ああ、なるほどな。それなら別にいいぞ。俺もこの時代の文字と照らし合わせながら覚えるつもりだったしな。……それと言い忘れていたがお前には転生のトリガーを作ってもらった恩がある。俺の出来る範囲でならどんな願いでも一つ叶えてやるよ」
アルス=マグナは快く彼女の願いを引き受け、そして彼はすっかり忘れていたような面持ちで後の事を伝えた。
その事にエリナも予想外だったためか、やや驚いているように見える。
「ありがとう。……私の願いはもっと強い魔導士になりたい! 誰かを守れる魔導士になりたいの。だから私を鍛えてください!!」
「そんな事に願いの権利を使うなよ。それくらい口約束で十分だ」
彼の意外な返事に驚きつつも、彼女は心の底から喜んでいた。
「じゃあ――」
「ああ、安心しろ一から教えてやるから。俺としてもこの時代の魔法について調べたかったからな。それと言い忘れるとこだったが、願いの権利は保留だ」
「うん! わかった。……口約束なんでしょ。だから指切り」
彼女はそう言うと小指を差し出す。
(ちょっと子供ぽかったかな)
そしてエリナは少し恥ずかしそうに笑った。
差し出された指を見て、アルス=マグナも何をするのか悟り指切りをした。
「約束だからね」
「ああ」
そして彼は空間収納の魔法からナイフを取り出し、自身の小指を切り落とした。
小指からはポタポタと鮮血が滴り、それを見た彼女はあっけに取られた。
これは、彼女の反応が正しい。
普通は指切りをした後、その指を切り落とすなんて発想にはなるわけがない。
流石、血濡れの時代を生きた存在だと言わざるを得ないだろう。
アルス=マグナは、ナイフの刃に持ち替えると彼女に差し出す。
「え? …………」
「これは指を切り落とす契約的儀式か何かなんだろ?」
「何それこわい!!」
つい大声で反応した。
「ふむ、違ったか?」
「口約束でそんな怖い事しないからね!」
「あーなるほど。思い出したぞ。子供頃やったあれか」
アルス=マグナは、自身の小指を拾いあげると、指の切断面同士を繋げる。
するとそこから闇がほんの少し溢れ出て、指を繋ぎなおして修復した。
「……」
そんなことも出来るのかと思うエリナだった。
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