第10話 世界の修復力
それからしばらくが経った。
「魔王様、あの辺の地形を少し修復って出来る? 流石に地図を丸々書き換えることになると、私たちにも支援要請が来て、魔法の授業とかが滞っちゃう……」
「世界の修復力が働くから、別に問題ないだろ」
「世界の修復力?」
「山とかが吹き飛んだり、魔法で超でかいクレーターを開けたりしても、なぜか直ってることってよくあるだろ」
「そんな事起きるのは、数百年に一回あるかどうかだよ!?」
この時代では、山を吹き飛ばす程の威力の魔法を行使できる存在はいないとされている。
そのクラスの魔法は国の高位の魔道が数十人以上集まって、使うことでやっと発動するかどうかの代物。
だからこそ、この時代の人達は、勝手に山が修復されるなど知るよしもない。
「そこまで魔法が衰退しているとは驚いたな」
アルス=マグナは、つまらなそうな溜息を吐きながら呟いていた。
そして本題に入る。
「世界の修復力ってのは、簡単に言うと事象の辻褄を合わせる法則の総称だ。辻褄を合わせると言っても改変され過ぎるといくつかの影響を残して、世界が必要とする要素だけを再構築するんだけどな」
「辻褄を合わせる? ……再構築?」
エリナは首を傾げる。
「諸々説明するぞ。……魔法や数秘術は何かを起こすために事象を改変しているんだ」
「事象の改変?」
「ああ。本来、火は何もないところからは生まれないだろ。だけど魔法を使うと何もないところに火を起こすことができる。こういう本来あり得ない事を、現実にするのが事象の改変だ」
「なるほど」
「そして、魔法などにより地形が大幅に改変されると、未来に起こりえるはずの事が起こらなくなる可能性が生まれる。そうなると世界は自身と言う存在を保てなくなり滅ぶ。だからそうならない様に一部の事象をこじつけるんだ。例えば、魔法で山を吹き飛ばしたとする。そうすると山を修復するために、魔法は一部の生物を殺すために使われたと事象を書き換えることで、山は吹き飛ばなかったことにする。そうすると山は残り一部の生物は滅ぶ。これで一応は山が消し飛んでないことになって辻褄が合うだろ。この時、生物の記憶には干渉されない。干渉すると更にややこしいことになるからだと推測されている」
「無理矢理だけどたしかに……でも、改変できなかったりしたらどうなるの?」
「その場合は世界のリソース、つまりは天然の魔力を消費して傷は残るけど地形をある程度修復する」
「天然の魔力?」
「人とかに宿っている物ではなくて、大気中や龍脈を流れる無限に等しいほどの莫大な魔力のことだ」
龍脈は莫大な魔力が流れる通り道であり、これにより世界の地形や生物が繁栄され、この世界が運営されている。
死した生物の魔力はここに、還元される。
そしてこの世界の土地を豊かにしているのが地脈である。
地脈はマグマや水の通り道であり、ここを通って地上にエネルギーが送られている。
このエネルギーは土地を豊かにし、新たな生命を生み出す材料になっている。
死した生物のエネルギーはここに還元され、周囲の栄養分になり、新たな生態系を生み出すこともある。
しかし、新たな生態系を作る程のエネルギーを蓄えた存在は、古龍の中でも大型の種に限られる。
勿論例外もある。
そして新たに生まれたエネルギーは地脈を通って、他の地域を豊かにすることもある。
ちなみに地脈内部は空洞になっている場所もあったりする。
この時の説明で彼はエリナに、龍脈と地脈についても説明していた。
そして彼女は新たな知識に感動を覚え、熱心に聞いていた。
「だから、地形に関しては気にしなくていい。一日あれば元通りだ」
「そんな法則があるなんて世界ってすごいね!! 解明した人たちも」
「そうだな。解明したのは超魔法文明とか呼ばれてる、俺が生まれるより前の時代の連中だから詳しくは知らんぞ」
そしてアルス=マグナは大事なことを思い出す。
「ところで俺はどこで生活すればいい?」
「あ……」
エリナもすっかりそのことを忘れていたようだ。
とりあえず今日は実験室で過ごすことになるのであった。
そして長い一日が終わる。
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