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腕がしなる少女 前編(1)

小道具屋爆破事件から三ヶ月が経ち、相変わらず探偵社は閑古鳥(かんこどり)だが重大な局面に陥っている。それは爆破事件の進展具合ではなく…

「先生どうするんですか!!このままだと今月以降の家賃払えなくなりますよ!!あの時の依頼者は依頼料払わないでそのまま裏社会に逃げてしまったせいで銅貨の一枚も貰っていないんですよ!!」

「(流石にこのままだと探偵社を手放しかねない…調べ物ができなくなってしまう…)仕方がない…街を出て他の場所で依頼がないか探すか…」

そう、家賃の問題である。金が無く、家賃やらどうするかの問題が深刻化してきた。また爆破事件での捜査は進んではおらず、ユーリを含め騎士団の団員よりも捜査能力が高いクロードでも手がかりの一つも掴めてはいない。

三ヶ月経ってはいるのに何一つ分かっていない状況に若干焦りを覚えるクロードだが、手がかりの一つも掴めないまま探偵社を潰されるのは避けたいクロードは爆破事件の捜査を一時中断した。その時ドアのベルがチリンっと鳴り、誰かが玄関付近で呼ぶ声がする。

「すみません。クロード探偵社はこちらで間違いないでしょうか?」

クロード達は玄関に向かうとそこには裕福そうな見た目をした初老の女性が不安そうな眼をクロードへ向けてくる。

「はい、そうですが…どんなご依頼でしょうか?」

女性はクロードの名前を聞くとその場から崩れ落ち、そのままクロードの太もも近くをしがみついていた。

「私の…私の大切な家族を助けてくださいー!!」

「(何かあったのか?)一体どうされました!?ユーリ!このままだといけないから一緒にこの方を執務室にお連れして落ち着かせよう!」

「はい先生!!ゆっくり深呼吸して下さーい。そうそう、ゆーくり深呼吸してー。」

二人は泣き崩れる女性を落ち着かせながら執務室へ連れていく。


ユーリにハーブティーを出してその場に待機してもらい、一緒に話を聞く。途中様子を見ると大分落ち着いているがまだ少し興奮している。この間に色々と聞けた。彼女の名はアーネットと言い、ここから大分離れた街「アーカネル・ストレン」の西側集合商会「アーカネル・ウエスト」の商会長を務めている人だ。クロードはアーネットが最初に言っていた言葉を振り返り、何故ここを知ったかと聞くと依頼を伝えてからということなので先に依頼を聞いてからとなった。

「実は…私には孫娘がおりまして、それはもうすごくいい子でして何でも手伝ってくれるんですよ。ですが…ひと月前に急に自室に塞ぎ込んでしまったんですよ…様子がおかしいと思って主人と息子夫婦に頼んでドアを開けたんです。私はとても驚きました。孫娘の両腕がスライムみたいに柔らかくなってしまったのですよ!!なのでクロードさんに治して貰いたいのです。」

クロードはなんとも奇妙な表情をしながら頭を抱える。それもそうだ、依頼内容が専門外なことをやってくれと言っているようなものでどう返答しようか困る話である。クロードは言葉に気をつけながら話し出す。

「えーとつまり…私ににお孫さんの治療をお願いしたいということでしょうか?」

「その通りです。治せませんでしょうか?」

「内容を聞くと私のところではなく治療院がよろしいのでは?そこに行けば何か分かるのではないでしょうか?近くの治療院を紹介しますよ。」

ユーリが地図を持ってこようとして席を立つ時、アーネットが慌てて首を振る。

「いえ、大丈夫です。知り合いが教会の一室で治療院を開いておりまして…なんとか治していただけませんかとお願いしたのですが、「特殊な呪いだから|呪術師をとっ捕まえない限り解呪は出来ないよ!!給料泥棒の暇人に相談しな!!」と言われまして…それで最初は騎士団治安所に行ったのです。相談をして暫く待合室で待っていたら、責任者が来られてここまでの地図と手紙を渡されました。」

そう言うとアーネットはクロードに手紙を渡す。個性的な文章(判別不能の汚い字)苦労人の達筆(添削した綺麗な文字)が添えられている手紙を読むと状況の全容が浮かび始めた。

手紙の中身は今聞いた話の補足情報だった。治癒魔法が効かない暗黒魔法が使用された為、カリンでも解呪が出来なかった。なのでカリンは騎士団に呪術師捕獲を要請したが先の爆破事件の捜査で手が空いておらず、ヴァレンの独断で仕事をクロードにほおり投げてきたのだ。

クロードは苦笑いを浮かべながらも心の中でヴァレンに感謝をした。

「分かりました。お引き受けしましょう。準備をして参りますので少々お待ちください。」

「ありがとうございます!孫を助けてやってください!!」

クロードはアーネットを一度退出させて遠出の支度を始めようとしたがユーリが荷物を持って来た。

「先生、こんな事があろうかと既に準備をしておきました。なので直ぐに出発出来ます。」

「用意周到だな…なら急いで出発とするか。」

二人はアーネットと一緒にアーカネル・ストレンへと出発した。

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