小道具屋爆破事件の捜査(1)
ひとまず探偵社に戻ったクロードは明日の捜査の準備を進める。騎士団に提出する今回の事件の切っ掛けとなった捜索依頼の書類を探し始めた。一時間ほどで纏めた書類が机の上にドンと置かれる。
「ふぅ、一通りの書類は揃ったか…」
額に滲んてきた汗を拭きながらゆっくりと椅子に腰かけるクロード。そしてまとめた書類に魔法をかける。
「ダイアルロック・改」
魔法を放った直後書類の形が歪んでいき、そのまま薄くなってやがて消えていった。魔法名 隠蔽&秘匿魔法「ダイアルロック」は対象物を見えなくさせ、しかも魔法の痕跡が全く無し。本人の意思以外での解除は不可能の隠密系統最上級魔法である。隠密魔法を極めた者なら時間がかかるが解除出来る魔法だが、その改良版である「ダイアルロック・改」は先程の効果に暗証番号と知恵の箱というトラップの二重構造ロックを攻略しないと中身を見ることさえ出来なくなるクロードのオリジナル魔法の一つである。
「よし、これならどんな天才でも突破は出来んな。明日は早いしもう少ししたら寝よう。」
クロードはそう言い、深い眠りに落ちた。
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次の日の早朝、クロードは爆破して見るも無惨な姿になった小道具屋を見ながらドアがあった場所で騎士団の到着を待った。三十分待って中心部方面から集団がゾロゾロと向かってくる。
「やっと到着か…時間かかりすぎだろ…」
騎士団が到着してすぐこう愚痴をこぼした。集団の中一人の男が笑いだした。
「いやーすまんw俺が超方向音痴なせいで団員全員に迷惑をかけてしまったわWが〜はっはっはw」
「全くですよほんと…毎回探すこっちの身にもなって下さい。昨日も見舞いに向かったはずなのに何故か魔障の森で迷子になっているし…偶然見つけてくれた冒険者がいなければそのまま行方不明になる所でしたよ…」
彫りの深いヴァレンとは違い、爽やかな青年でイケメン顔の副団長ジェーンは団長の方向音痴にいつも振り回されて貧乏くじを引いている苦労人だ。いつもならここで会話は終わるがふとクロードは疑問に思った。
「おい、時間がおかしくないか?」
「はい?」
カリンから聞いた話を纏めたらクロードが気絶し、気がつくまでの時間が約三時間経っていたそうだ。森のどこかまでは把握してはいないがレイトから魔障の森外周園までどんなに急いでも片道二時間前後。クロードはどう考えても間に合わないと考えている。その事をジェーンに伝えると。
「確かに、それだと間に合わない…ちょっと待て?あの冒険者は団長を保護したのはいいけどいつの間にか消えていったと言っていたな…」
ヴァレンは考える二人の肩に手をかけて笑顔でこういった。
「まあまあ気にするな!細けえこと気にしてたら話が進まんぞ!その話は仕事の後でな!」
「確かに…続けていたら三日はジェーンと話し合っているな?」
「は、いけない!!団長と同じ事してしまいそうになった…」
「おいおいジェーンそれじゃ俺が毎回おめーと同じ事やってると言うーのか?いくらなんでもそこまで深く考えてねーよ!」
「いえ、そういう事では…」
「と・り・あ・え・ずこの話は後!!話が進まないぞ!ヴァレン、気になった私が原因だがあんた団長なら話を終わらせてくれ!」
冷静になったクロードが話を切り上げ、捜査を始めた。ヴァレンは咳払いをし、宣言をした。
「おほん、それでは小道具屋爆破事件の捜査を始める。A班は証拠の捜索、B班は記録、C班は近辺警護、D班は聞き込みに回れ!!」
「「「「「は!!我ら民を守る守護者、必ずや。」」」」」
「うむ、では各隊散らばれ!!」
「「「「「了解!!」」」」」
いつもと変わらぬ風景に苦笑いを浮かべるクロードだが、気持ちを仕事モードへと切り替える。