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8、タイムリミット

 目が覚めたのは月がすっかり昇る夜だった。


 怒りで家に帰った俺は今日のことを忘れるようにベッドへ伏せていた。そして、一眠りしてしまったことで俺は少しだけ冷静になり、それと同時、どうして俺があそこへ行ったのかを思い出し、頭を悩ませていた。



 制約:一日一人の命を奪わなくてはならない。



 俺は柱時計に目を向ける。


 あと1時間······。


 1秒毎に揺れる振り子が、俺の命を削っているように感じた。


 俺はベッドに座り、脚に肘を置いては手を組んで、眉間にそれを当てながら考える。そして、ふと日中の事を。


 ······どうせなら、あいつらを殺してやりたかった。


 しかし、今はもうそんなどこに居るかも分からない奴等のことはどうでも良かった。――それより自分だ。


 今日はもう、協会は受け付けていない。

 結局、俺は本来の目的を達せずに帰ってきてしまった。


 そこには絶望しかなかった。


 仮に今から依頼を受け付けられたとしても真っ当に間に合うことは恐らくない。ここから協会への移動。受付時間。依頼地への移動。それらが生じるとすれば、奇跡的な偶然が重ならない限り不可能に思えた。


「くそっ、やっぱり······」


 故に、人の道を外れる方法しか思い付かなかった。

 俺は、街の東にある森を目指そうと考えていた。


 森なら、死にかけてる人がいるかもしれない······と。


 この街の側には【職業初心者】が訪れる森がある。

 そして極稀に、そこで命を落とす者がいると。


 つまり俺が狙うのはそこで実力が本当になく、助かる見込みのない人間。そんな人間の最期を俺が終わらせる。それなら、ある意味優しさにも思えた。だからそういう者なら仕方ないということに思えた。


 ただ、それでも······全く関係ない人間を殺すのは気が引けるのだが。


 しかしもう、俺には動くしかない。


 ここにいるだけで奇跡が起こることはまずないのだから。

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