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57、ランク

 協会では『依頼受託』と『山賊退治の報酬金』の一部を下ろすのを済ませた。報酬金は、何をせずとも二週間は優に過ごせる程の金額。それだけ、あの村長の必死さが窺えた。


 また、その功績で信頼も僅かに上がっていた。



 名前:イルフェース

 Lv:217

 職業:【死神】

 ランク:C

 信頼:53%

 番号:3472556140



 ······ん?


 俺はここで一つ気になったことがあり、先日の『山賊退治』を手続きしてくれた、あの緑のベレー帽を被る彼女を尋ねた。


「一つ聞きたいんだが、ステータスの“ランク“ってのは何か意味があるのか?」


 突然、話し掛けられ目をキョトンとさせる彼女――たしか“ルル“は、どうやら俺を覚えていたらしく「あぁ、この間の」と言って、その事について丁寧に教えてくれる。


「簡単に言えば、ランクは神様への“貢献度“ですよ。そして、それを積むことでランクが上がり、スクリーンの様々な機能が解放されていくんです」

「へぇ、ランクにそんな特典が。······しかし、俺は“神への貢献“になんて全く心当たりがないんだが」

「えっと、たしか······」


 彼女は上を見て、人差し指を立てる。


「この間、依頼を受けられてましたよね? ――あれ、無事達成されたのでは?」

「ん? あ、あぁ、そうだが······」

「でしたらそれですよ。協会が預かる依頼をこなすのも、大きな貢献の一つなんです。だから、一つ依頼を遂行すれば、誰でもDランクへは上がるんです。その次は、まだまだ掛かりますけど」

「へぇ······」


 ここで俺は“あること“に気付く。


「ん? D? 俺はランクがCまで上がってたようなんだが」


 すると彼女は「えっ」と、やや驚きの顔。


「それは間違いないですか? 他に任務は?」

「任務はあれ一つで、ランクも確かにCだった」


 さっき見たばかりのため、間違えようがない。


 すると、


「それは凄いですね」


 感心の彼女は、画面の提示は求めることなくそう言った。


「これにも何か理由が?」


 彼女は「はい」と大きく頷いた。


「EからD以上へは、必ず依頼を一つこなさなければなりませんが、Dランクに上がってからは少し別で“依頼以外の神様への貢献“も、ランクアップの対象になるんです。つまり、あなたはDランクに上がってから、知らず知らずの内にその行為をしたということにですよ?」

「あまり、心当たりはないが······」


 人を殺したことしか浮かばなかった。

 果たして、そんなもので上がるのだろうか······?


「その“貢献“ってのは、例えばどんなのがあるんだ?」

「挙げればキリはありませんが、そうですねぇ······。例えば、この協会を補修する基金に募金した――とかでしょうか? 本当に様々なんです。この世界は、ふとした事が神様のためになってるんですから」

「なるほど。なら、俺のランクが上がったのも偶然だろうな」


 今の話を聞いて、やはり、とても人を殺すことがあの神のためになるとは思えなかった。そして当然、金をこの協会に落としたなんてのも記憶にない。――とすると、もしかしたらあの跋扈ばっこの男に恵んだことだろうか。と、そんな些細なものだろうと思えた。他にも色々と考えるが、今の俺にそれらしいものは浮かばなかった。


「ちなみに、ランクが上がったことによる機能解放ってのは?」

「Dランクからは、常時地図機能の解放と現在位置が地図に表示されるようになります。Cランクはメッセージ機能が使えるようになり、また、Bランクはこの協会以外の離れた地から、依頼の受託まで可能になるんです」


 Bランクから離れた地での受託が可能か······。

 出来れば持っておきたい機能だな。


「そしてAランクは、預けている金銭のやり取りを他者と行えるようになります。Sランク、SSランクもありますが、その辺りも詳しく聞いておきますか?」


 そんなすぐには、ランクなんて上がらないだろう。


「いや、大丈夫だ。今はこの辺でいい」

「そうですか。また気になることがあれば、いつでもどうぞ」


 ひとまずは信頼を獲得しつつ、Bランクを目指すというのがベターか。そうすれば自ずと、この地を離れるか執行人になるのか、その辺りの道も開けそうだ。


「ありがとう、助かった」

「また気になることがあればいつでもどうぞ」


 どちらにしろ、殺す種類の人間は変わらない。


 どこであろうと――。

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