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53、光の出口

 鎌を払うと、バリアはいとも容易く砕けた。


「――っ!?」


 全てを跳ね返すバリアが壊れ、奴はこれ以上開けぬほどに目を見開いた。


「そんな······馬鹿な······っ!?」


 ガルラは震える足でなんとか後退あとずさりしながら、俺のほうへ手をかざす。だが、


「な、なぜ出ないっ!?」


 バリアを再生しようとしたのだろう。

 ただ、それは二度と現れなかったが。


「当然だ。俺の鎌は全てを終わらせるんだ」

「く、くそっ······!」


 奴は身体を翻し、奥へと走る。

 だが、流石に身体能力は俺のほうが勝るよう。


「ひぃっ」


 ガルラは【透過】を使って正面に現れた俺を見て、再び後退る。しかし、城のほうへは走り出さなかった。その代わり、戦う意思を見せるように、身の半分が隠れる程の盾を発現。


「その盾は、俺の攻撃を弾けるのか?」


 無駄なのは分かっている。あのバリアを上回る盾であるなら、最初から使用していただろうから。そして、恐らく奴の【職業】は攻撃スキルを有しない。少し様子を窺ったが、奴は盾を構えてこちらを見据えたままだった。


 だが、これは時間稼ぎかもしれない。


 俺は城で、こいつの執務室から僅かに開いていた隠し扉からここへ辿り着いた。あそこは開けたままだ。城の兵士がここへ来るのも時間の問題だろう。


 ······終わらせるか。


 一歩前に足を踏み出し、次には勢いよく前へ跳んだ。そして、鎌を振り上げる。


 すると、その時だった。


 奴は持っていた盾を投げ捨てた。

 俺に向けて。視界を塞ぐように。


 この行動は、やや予想外だった。


 だが、俺はその飛んできた盾に向けて、そのまま鎌を振り下ろす。相変わらず、手応えのない感触だった。


 そのせいだろう。


 盾が二つに割れて落ちた時、俺は奴の姿が無いことに気付いた。鎌の刃は血を滴らせているが、血を流した者の姿は眼前にはない。


 すぐ周囲を探した。そして、すぐに見つける。


 奴は俺の後方――左腕を押さえながらもつれそうな足で、穴から空を覗いたような、白くまばゆい出口へと走っていた。通路には線を引くように赤い印が伸びていた。


「······そうやって生きようとする姿勢は、嫌いじゃない」


 奴は、追跡してこないのを走りながら確認すると、外までは逃げ切れると思ったよう――下衆な笑みを見せた。事実【透過】を使って追いかけた所で、外まで逃げ切られることだろう。外には見張りの者がいくらかいるのかもしれない。そこに何らかの逃走手段があるのかもしれない。ただ、


 そこまで行ければの話だが――。


「ふ、ふふっ······私の勝ちだ······」


 そう言って出口のほうを振り向いた刹那。

 奴の身体は、白い光の中で鮮血と共に霧散した。


「俺は【死神】だ。がすわけないだろう?」


 前方へ回った時から“それ“は既に設置済みだった。

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