47、罪と罰
台座の左右へと現れる、槍を持った無数の兵士。
「この者等は税を払わず、その対価を掠め取っている。いわば泥棒と同じだ! この国で犯罪はどんなものでも大罪! そんな者等と私達が同じでいいのかっ!?」
「よくねぇっ!」
「そいつ等と私達を一緒にしないで!」
「俺達は間違ってねぇぞ!」
観衆は、王の問いかけに答える。
「そう! 私達は正しい! ずっと正しいことをしてきた! そしてこの者等が先に、平等という国の秩序を崩そうとしたのだ! ならば、どんな罰が下ろうとおかしくはないはずだ!」
「そうだ! 先に悪いことしたのはそいつ等だ!」
「そうよ! 殺して、そんな裏切り者!」
観衆は、誰もがその結末を望んでいるようだった。
そして、王がそれに応えるように、
「だから、私は此処に約束をする! 私は、今からこの者等に正しい罰を下すと!」
拳を掲げながらそう言うと、一際大きな歓声。そして王は、
「構えろ!」
掲げていた右手を勢いよく横へ払う。すると、左右に居た数十の兵士達はしゃがみ、槍の先端を真上に構えた。下からでも隙間なく見えるその無数の槍は、花を生ける剣山のようにも見えた。
「さぁ、平等に生きる我が国民よ! 正しい裁きを聞かせてくれ!」
王は右手をゆっくり頭上へ持ち上げる。悲痛に染まる青空とは裏腹に高まるボルテージ。大衆は皆、いよいよ「殺せっ! 殺せっ! 殺せっ!」と、一つの声で叫んでいた。誰もが生き生きと、それを望むような笑顔で。
「そなた等の想いはこの国王ギルディアスが聞き届けた! 私がその全てを請け負おう!」
そして、国王ギルディアスはより強く叫ぶ。
「平等が守れぬ者には正しき苦を! 平和を脅かす者には正しき罪を! 裏切り者には正しき死を、私がいま――」
王が右手を勢いよく振り下ろすと同時、
「此処に下す!」
宙に浮いていた者達は地に引かれるがままに落ち、血の花を咲かせた。




