33、揺れる興味
俺は返事はせず、相手を値踏みするように睨んだ。しかし、彼は臆することなく続ける。
「どんな風に思われても構いません。ですが、とりあえず、どうか話だけでも聞いて欲しいのです」
「······他を当たってくれ」
「お願いします。あの殺し方を見て、あなたなら出来る、いえ、あなたにしか出来ないと思ったのです」
静かに懇願する彼の目は、あの小屋での終わり、山賊の頭――ジークに頼まれた時の目と似ていた。
「どう殺ったか見てたのか? 実際は」
「いえ、とんでもない」
「なら、なぜ?」
俺の、答えによってはどうなるか、そう問い詰めるような目に村長は思わず顔を伏せる。しかし、彼は机の上で組んだ手を見つめ、時折こすりながら語った。
「私が油を撒いてる時、私は、私を騙した――あの、首を斬られた男が木樽を握っていたのを不思議······いえ、疑問に思いました。最初は、彼が一番始めに殺されたんだろうと納得してましたが、しかし、村を帰る途中改めて思い返して、本当にそんなこと可能だろうかと疑問に思ったのです。わざわざ、交戦の最中に木樽を握るとも思えませんでしたから。結局、その答えは見つからず終いでしたが······ですがともあれ、起きた事実に変わりはないと思ったのです。あなたは、あの場で、一瞬にして、何らかの方法で、あの男の頭と胴を斬ったように分けてみせた。それだけは、どう足掻いても揺るがぬ事実だと思うのです。だから――」
まるで探偵のようにそう語った彼は手を止めると、もう、目を逸らそうとしなかった。続く言葉もそこへ込められていた。俺は話を聞きながら、作り上げた嘘にしてはよく出来過ぎていると思っていた。そして正直······面白いとも。
だからかもしれない。
訴えるようなその目に、俺はつい答えてしまった。
「そんな殺し方をした俺に、何をして欲しいっていうんだ?」
鼻で笑っては、皮肉を込めて言ったつもりなのだが、しかしそれは、彼にとっては話を聞いてもらえるのと同義だった。彼は、俺の耳が傾いている内に、全てを要約したように、簡潔に、短く、そして、一呼吸したものの躊躇いを忘れたように、たった一度しか言わないかのように――それを口にした。
「ダグリス国の、国王を殺して欲しいのです」
金が出された時点で碌ではないと分かっていたが、まさか、ここまでとは思っていなかった。




