25、幕切れ
山賊の親玉――ジークは息を切らしていた。
「はぁ、はぁ、へっ、やったか? ――おい? 奴は死んだか?」
あぁ、死んだよ。たった今。
「おい聞いてんのか? てめぇ、まさか巻き添え食らったんじゃねぇだろうな? へへっ」
安心しろよ。それは起きなかったから。
「おい、なんとか言ったらどうだ? 上手くいったかどうかぐらい············っ!? まさか!?」
すると、奴は急に怒り狂ったように、もう一度ナイフを半円球上に飛ばした。
「くそっ! ちくしょおおおおぉっ!!」
奴は完全に上手くいったと思い、歓喜で忘れていたようだが、ようやく奴は、自分に掛かったスキルが解けてないことに気付いたらしい。
「くそっ、くそっ、くそったれがああああぁ!」
盲目状態の奴は、再びナイフのマシンガンを飛ばした。俺はそれをただ黙って【透過】で見過ごしているだけだった。
醜いからやめろよ、悪あがきは。
俺はあの時――緊張が最大に張り詰めたあの場で、黒のタンクトップ男の後ろで姿を現していた。当然それは、すぐに奴の攻撃から身を隠せるように。奴がどんな攻撃をしてくるのかは、奴等の会話と行動でおおよそ検討がついていたからだ。
そして俺を、自分のナイフに映った姿で目撃した手下はすぐさまナイフを擦り合わせて合図を送っていた。あと少し冷静になれたなら俺の罠に気付いたかもしれないが、反射した側――親玉側の端にでも鎌を持つ俺は映ったため焦ったのだろう。
そうして繰り出された、金属音とマシンガンナイフ。
俺のほうへ飛んだナイフは全て、あの、座ったままだった首のないタンクトップが受け止めた。ナイフが刺さった衝撃で死体はこちらへ倒れ掛けたが、同時に攻撃も止んだため俺はそれを支えず、刹那、ナイフの残響が漂う中、鎌を持って身を乗り出していた。その後迷わず、頭を抱え伏せていた最後の手下を殺害。地を見るようにして伏せていたため、殺すのは簡単だった。
もっと箱を自然に壊して、伏せる合図を分かりにくく決めておくべきだったな。
瞬発的な全体攻撃がタンクトップ男を貫く可能性も考えたが、それならとっくにこの小屋から出ているだろうから除外。そうするならば、俺がやることはその秘策が終わった隙を突くだけ。完全に決まったと思った直後の隙ほど無防備なものはない。難しいことじゃなかった。
手下の、片方のナイフを鏡にして、逆の手を自分の正面への攻撃、合図を送るために充てたのは面白いと思ったが、それも最後の攻撃が決まらなければ意味がない。つまり、
お前は、最初から負けてるんだよ。
いよいよ、息を切らした男は「ゼェ、ゼェ」と攻撃を中断する。そして膝に手を置いた。だが、これはいけないと思ったのだろう。奴はすぐに膝から手を離した。
しかし、もう遅かった。
視界の奪われた奴がナイフを構えようとした手――その両の二の腕から先は、俺が二度振り上げた鎌によって、スッと斬り落とされていた。




