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13、死穢

 人を殺すことに抵抗はあったが、何故か奴は違って感じた。


 奴を殺した時、元々こういうのを殺すことに俺は抵抗がないのだと知った。ただ、山を降りてきたししを殺すように、穀物を食うねずみを駆除するように、こいつの命も、そんな『害』を片付けた程度にしか思えなかった。


『力を持つ者が――害のない者に危害を加える』


 きっと、神から与えられた【能力】によって欲に溺れた者が、人とは程遠い存在になる最大の行動だと思った。だから俺は、早めにその芽を摘んだだけ。


 自分でも初めて知ったが、あの神は俺のこの性質を見抜いていたのかもしれない。あの目で。だから、俺にこの【職業】を選んだ。恐らく、人を殺すことに罪悪感が強い者なら、今すぐにでも自首か自決をしているだろうから。


 そう考えると、ある意味感情が欠けているのかもしれない、とふと思った。あながち奴の言うことも間違ってなかったのかもな、と。


 しかし、今はそんな感情はどうでもいい。


 少なくとも、あいつのような人間は違う種のようにも思えたのだから。俺と奴の違う所は、その辺の人間をわけもなく片っ端から殺す気などなかったことだ。そこは、俺と奴とで決定的に違う部分だ。もし仮に「何故?」と問われても分からない。不思議と殺意が起きない。ただそれだけだった。


 俺は、うつ伏せで目を剥いたまま上半身だけで剣を握る奴を見た。


 まさかこんな結果になるとは思ってもなかっただろう。魂があるなら、霊体があるなら、今頃こいつは心底屈辱を味わってることだろう。


 ······ふふっ。


 とりあえず、ここが森で良かった。すぐに人が来ることはないだろう。――とはいえ、血の匂いを嗅ぎ付けた獣や魔物共がここへやってくるかもしれない。


 俺は懐中時計を見る。0時3分を指していた。

 その時、俺は自分の命について思い出す。


 そういえば······。


 俺はあの透明な青の画面を出現させる。そしてステータス画面から確認しようとする。――が、その前にトップ画面を出したところで間、画面にはこう書かれていた。



 レベルが上がりました。


 Lv1→Lv47


 スキル【腐食】を獲得しました。

 スキル【ピンポイント】を獲得しました。

 スキル【幻覚】を獲得しました。

 スキル【無音】を獲得しました。

 スキル【透過】を獲得しました。

 スキル【無心】を獲得しました。

 スキル【暗幕】を獲得しました。



 そうか。奴を倒したことでLvが上がったのか。初めて覚えたスキルは確認しておきたいが、今はこっちだ。



『この値が0になると貴方は消滅します。残り:63年分』



 どうやら間に合っていたらしい。

 これだけは、こいつに感謝しないとな。


 俺はついでにもう一つだけ確認した。

 それは、武器の説明が書かれた画面。



 初期武器【死神の鎌】:死神だけが持つことの出来る鎌

 オート発動スキル【終わりを告げる刃】:物質から命まで、どんなものでも断ち斬ることが出来る



 やはり、そういうことだった。


 もっと先に知っておくべきだったな。そしたら、ここまで窮地に陥る必要もなかったかもしれない。


 俺は、自宅へ戻ったらスキルの確認だけをしておこうと決め、画面を閉じた。そして、身体中の痛みを不意に思い出し、一度奴を見た。


 こいつは、痛みはあったのだろうか。


 罪悪感はないと言ったが、それでもガルバスの亡骸には少々吐き気は覚えた。背中を斬られただけのあの人間ならまだしも、こいつのは少し違う。自分でやったとはいえ気味が悪かった。同じモノを自分が備えているとはいえ。


 ともあれ、俺は奴の容姿に目を向けた。


 装備は残るのか······。折れた刃も······。

 よく考えれば、鎖鎌も残っていたのだから当然か······。


 特別な痕跡はないが、出来れば自分に繋がる痕跡だけは全て消しておきたかった。服は幸い、自分の血で汚れているようにしか見えない。


 ······となると、俺の武器のほうか。


 俺は、左手に持つ死神の鎌のを見る。が、それは要らぬ心配だった。血に塗れていたはずの三日月は、今はまた鏡面のような鋭い輝きを放っていた。


 さすが、全てを拒絶するような能力なだけはある。


 俺は自分の鎌を消失させる。あの神官が発現した時とは違う、闇に紛れる黒い蛍が、月を穢すように散っていった。

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