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令嬢と女子高生の強制交換留学  作者: 木白
プロローグ side カトレア
2/20

謎の中年男女が一方的に話しかけてくるのです

聞きたいことが山ほどあるのに

 私の部屋とはあきらかに違う。

 物置小屋にもならない狭さに、殺風景な白い壁と天井に、気持ちばかりつけてみましたと言わんばかりの小さな窓。

 そして、側には奇妙な箱から、規則正しい間隔で奇妙な音が奏でられている。民族楽器か何かかしら?それにしては面白みもなく、一定間隔で耳障りな音ね。

 箱には不思議な模様が音に合わせて流れている。とても奇妙。

 音のでるオブジェなのかしら?


 そして忘れはいけない。

 さっきから、この私を揺すぶり痛めつけてくる、見知らぬ野蛮そうな国外追放は免れない中年の女と、頼りないしょぼくれた冴えない中年の男。

 不審でたまらないという気持ちを隠しもせず、2人の顔を交互に見る。


「もう、心配させないで!あんたは本当に昔からそそっかしいんだから!」


「まーまー、本当に意識が戻ってよかったよ。本当に良かった。」


 目を潤ませ、怒ったような表情のまま、私に向かってまくしたててくる中年の女。

 冴えない顔の眉尻を下げ、糸のような目をさらに細めつつ、やはり薄っすらと潤ませる中年の男。

 私に向かって話しかけてくる二人に対して、当然の疑問を口にする。


「あなたたちは誰ですの?」


 とたんに、あんなに喧しかった狭い部屋に静寂が訪れ、規則正しい奇妙な音だけが部屋に響いていた。


「だ、誰って……ちょっと……え?」


 いち早く我に返った、私の中で国外追放決定の中年の女は、困惑した顔で口を開く。


 私にとっては当然の疑問を投げたまで。

 覚えのないこの者共に、とやかく言われる筋合いはありませんわ。

 何処の誰かも知らない彼らを、わざわざこの私が気に留める必要もないですし、そもそも困惑しているのは私の方なのですから。


「サクラって何のことかしら?」


 先ほどからやたら連呼される聞きなれない名前に対しての疑問をさらに口にする。

 絶句した彼らの後ろ方から、幼い声でポツリと「……かしらって……」と聞こえてきた。

 奇妙な定期的な音しか鳴っていない空間に、その声はやけに響いた。


「お嬢さんは、一時的なショックで記憶があやふやなのかもしれません。こうして意識は取り戻りましたし、安静第一で落ち着いてから検査を行いましょう。」


 静寂破るように、白いコートのようなものを羽織った男がゆっくりと中年男女に言い聞かすかのように語りかける。

 すると中年の男がいち早く我に返り「そうですね、宜しくお願いいたします。」と、白いコートの男に頭を下げる。つられるように国外追放女も頭を下げた。


 いやいやいや、何か丸く収めた感出してますけれども!

 何一つとして私の疑問が解消されていないのですよ!意義あり!意義しかありません!


「お嬢さんは、まだ混乱しているかと思いますので、まずは休ませてあげてください。かなり体にも負担がありますし、落ち着くまで少々時間がかかるかと思いますので。」


 あれだけ騒いでた国外追放女が神妙に頷き、冴えない中年男もそれを見て私の方へ視線を移す


「サクラ、とにかく無事で良かったよ。みんなすごく心配したんだ。でも本当に良かった。きっとすぐよくなるさ。何か必要なものがあったら言ってくれ。今日はゆっくり休むんだぞ。それじゃまた明日な。」


 と笑顔でのたまってくるではないですか。


「……はぁ?」


 露骨に何を仰ってるのかしら?と不審な顔をすると


「あんたは変なところで抜けてるんだから!階段から落ちたって連絡が来たときは、大したことないなんて思てったら、こんなことになって……ほんとに、もう……心配かけないでちょうだい……!とにかく、先生と看護士さんの言うこと聞いて、ちゃんとよく休みなさいよ!また明日くるから、欲しいものがあったら明日言いなさいね」


 国外追放女も私の手を握りしめて、追撃の意味不明なことを矢継ぎ早に吐き出し、まだ話しかけようとしたところで、冴えない中年男に促されるように、部屋の出口へ向かっていく。

 話したいことだけ話されて、うんともすんとも言わない私に向かって、ええ笑顔を向けてから去って行ってしまった。


 一体、何なのかしら?

 結局、あの中年の男女は誰だったの?

 全く話の流れがつかめていないわ。

 というよりも、お気づきかしら?私の疑問に、誰も答えていないということに……。

 なんて無礼な。この私の質問に答えることもせず、己の言いたいことを、言うだけ言ってその場を去るなんて。とんでもない。さすが国外追放決定の愚民なだけあるわ。

 ひとまず私だけが、今この場で状況を一切呑み込めていないということだけはわかったわ。


 次から次へとわけがわからないことばかりで、訝しげな顔を浮かべる私に白いコートの男は優しく「大丈夫かい?」と微笑む。


 大丈夫だと、お思いになって?


 憮然とした表情を浮かべる。

 もし仮に大丈夫だと思っているならば、それこそ悲劇的に愚かとういうもの。

 言いたいことは山ほどあるのに、何一つ答えが返ってこない。


 いい加減に、ここがどこなのか、誰でもいいから答えてちょうだい!!!

結局誰も答えてくれない

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