1話 プロローグ
「はぁ...今日も残業で疲れたな......」
帰宅途中そう呟く一人の女性、渡辺 結衣 24歳がいた。
高校を卒業して、将来の為と言われ大学に進学したにも関わらず、とても充実した日々とは言えなかった。なぜなら、人見知りという事と、ある事件が原因でクラスに馴染めず友達が一人も出来ないまま、学生生活を終えてしまったからだ。
「友達が欲しい!!」
高校生の頃そう思った時があった。近くにいたクラスメ
イトに頑張って話しかけてみよう。そう心に決め席を立ち、声を掛けようとした瞬間
「あ、あの、おはよ…」ガシャン!!
転ぶ私、倒れる机、手にはスカート……スカート?!
恐る恐る上を見上げると、そこにはさっき話かけようと
したクラスメイトが顔を真っ赤にして睨んでいた。
私は、すぐに謝ろうと立ち上がった。
「ご、ごめんなさい!!」
「わ、わざとじゃないの、ただ話かけようと…」
謝罪してる最中に左の頬に強い衝撃と痛みが走った...
それ以来クラスでは更に浮いてしまい誰とも話せないまま、高校を卒業した。大学でもあの件のせいで、何度も話しかけようとするが、あと一歩が踏み出せずあっという間に学生生活が終わってしまい、今に至る。
だが今は一人でも平気である。なぜなら、アニメとゲーム
があるから!
偶然見かけたアニメにハマってその影響でゲームにもハマり、休日では家から一歩も出ずに一日中アニメとゲームをしている。
会社の帰り道、疲れ果てている体を引きずるようにして帰っているとふと、こう考えてしまう。
( 私の人生 このまま友達も出来ず、仕事漬けの日々で終わっちゃうのかな?こんな事ならいっそ、異世界にでも行けたらいいのになー)
「なんてね、そんなアニメやゲームじゃないんだから、あるわけないか」
そんな独り言を言いながら、家の玄関のドアを開けると、そこには普段見慣れているはずの自分の部屋ではなく真っ白い空間が広がっていた。よく見るとその空間の中に高級そうなテーブルと椅子、ティーセットまで置かれてあった。
「あれっ?!もしかして私、部屋間違えた?!」
慌てて部屋の番号を確認するが、やっぱり自分の部屋だ。
「あー。完全に私の部屋だー。部屋のリフォーム頼んだっけ?」
突然の事過ぎて変な感想しか出てこない。
変わり果てた部屋を見渡していると、誰もいないはずの部屋から突如笑い声が聞こえてきた。
「あははは」
「やっぱりあなた、とっても面白いわ♪♪」
声の主は女の子っぽい可愛らしい声だった。
「うわぁ!!!だ、誰?!」
突如現れたその少女。長い金色の髪と瞳、ここが真っ白い空間だからだろうか、より一層輝いて見える。
非現実的な事ばかりが続き、頭が痛くなってきた。そんなことは露知らず、その少女は自己紹介を始めていた......
「初めまして!私はイヨよ!」
「別の世界で神様をやっているわ!!」
「立ち話もなんだし、座って紅茶でも飲みながらお話ししましょうか♪」
言われるがまま私は椅子に座った。でも、出会って早々自分は神様ですと言われても、さすがの私でも信じられない。なので
「そっかー。イヨちゃんは神様なんだー凄いねぇ。」
「ところでイヨちゃんのパパかママはどこにいるのかな?」
こんな所で知らない子供が1人でいたら誰だって迷子か何かだと思うのは当然のはず。私もその1人だ。
(...あれ?よく考えれば私、仕事以外で誰かと話すの久しぶりのような気がする。でも、自称神様の女の子相手だからちょっと複雑な気持ちだけど、この子相手なら不思議と自然に話ができるような気がする。)
「もう、ユイったら失礼ね♪」
「自称じゃなくて、本物の神様よ♪♪」
「私の名前!!しかも私、自称神様って口に出してないのに!ど、どうしてわかるの!?」
「言ったじゃない!神様だからよ♪♪ これで信じてもらえたかしら?そうそう、今日来たのはね、あなたに頼みごとをしに来たの!!」
「頼みごと?」
この子が神様かどうかは今は置いておくとして、初対面で一体どんな頼みごとを言ってくるのだろうと、色々考えているうちにまた話が進められていた…
「そう!頼みごとよ!」
「あなた異世界に行きたいって言っていたわね?なら行きましょ!異世界に!!」
「............え?」
また唐突にとんでもない事を言ってきた。
「ちょ、ちょっと待って!異世界?!」
「異世界ってあのアニメとかゲームみたいな世界のこと!?」
「ゲーム?アニメ?よくわからないけれど、きっとユイが想像している世界だわ♪」
「そ、そんなの、急に言われても信じられないよ...」
この時の私は、まだ半信半疑だった。
だが、あの景色や生物を見たら、信じざるを得ない。
それは、私が半信半疑から確信へと変わるちょっと前に話を遡る
「うーん...信じてもらえてないみたいだから、実際に見た方が早いわね♪」
そう言いながら席を立ち、指を鳴らした瞬間。真っ白い空間から一瞬で、大陸が見渡せるぐらいの空の上にいた...
「う、うわぁぁぁぁ!!!落ちる!!!」
必至にテーブルにしがみ付いて目を閉じていると、違和感に気づく。空中にいるはずなのに、風は感じないし、落ちている感じもしない。しかも下は地面のような感覚もある。わけが分からずにいると、横からイヨちゃんの笑い声が聞こえてくる。
「あははは」
「ユイったら本当に面白いわね♪♪安心してこれはただの映像よ♪」
「もぉー!からかわないでよー!!」
「映像なら先に言って欲しかった...ってここどこなの?!」
「ここはね、私の世界よ♪
ユイから見たら異世界ってことになるわね♪♪」
「ここがイヨちゃんの世界?......地球と同じに見えてあんまり異世界って感じがしないんだけど...?」
「そうね!でも下の方に行ってみればすぐわかるわ!!」
そう言って、イヨちゃんはまた指を鳴らした。
すると、大空から町と森が一望できる高さまで降りてきた。
この町は森の中にあって、町の周りを高い壁が囲んでいた。町の中を見渡すと様々な建物があり、すごく迫力を感じる。
「わぁー!建物すごいね!面白そうなお店がたくさんあるよ......あれ?ねぇイヨちゃん。この町って今はハロウィンなの??」
「ハロウィン?どう言う意味かしら?」
「んー。本当はいろんな意味があるけど、今は仮装パーティーみたいな感じかな?ほら、あそこにいる人ネコみたいだし、魔法使いみたいな仮装してる人もいるよ?」
「あれは仮装じゃなくて本当にネコの人と魔法使いよ♪♪
ネコの人は”獣族“ね♪♪獣族はたくさんの種族が集まって獣族と言う名前になったのよ!!
魔法使いはその名の通りいろんな魔法が使えるわ♪」
「す、すごすぎるよ!イヨちゃん!!
こんな世界だったら、きっと毎日が楽しんだろうなぁ」
「さっそくこの世界を気に入ってくれたようね♪」
「あっ!そうそう忘れるところだったわ!ユイ、1つだけ叶えたい事を言ってみて、1つだけなら叶える事が可能よ♪」
「えっ?!いいの?こんなにすごい世界に連れてってもらえるのにそんな特別なこと!」
「もちろんよ♪♪」
「それに私が頼みごとをしている立場なんだから、お礼をするのは当然のことよ!!」
(あ...でもさっき忘れるところだったって聞こえたような気がしたけど......)
「さあ!ユイの叶えたい事はなに?今ならどんなお願い事でも叶うわよ♪」
(これは異世界で充実できるかもしれない大チャンス!!お願い事次第では大変な目になるかもだから出来るだけ目立たないような、サポート的な役割がいいかな......)
(......あ、サポートなら、思い当たるのが1つある!!)
「決めたよ!イヨちゃん!私の叶えたい事は、魔法が使えるようになりたい!!魔法の付与魔法!!」
「この魔法をお願いしてもいいかな?」
「もちろんいいわよ!!♪♪」
「ちなみに、これはどんな魔法なのかしら?」
「えっと、この魔法はね、私か私以外に別の効果の魔法を付け加える事が出来る魔法だよ!」
「でも、ゲームの中で知った魔法だけど、それでも大丈夫なの?」
「ええ、問題ないわ♪」
「私が理解出来れば大丈夫よ♪♪」
「す、すごいよ!私も魔法が使えるようになるんだ!」
今までの私は友達も出来ず、仕事もうまくいかず、良いことも何もない退屈な人生だった。
でも、これからは違う。イヨちゃんに出会ってイヨちゃんの世界に行く事になって、私の新しい人生が始まるんだ。あっちでは友達ができるように頑張ろう。もう、あんな失敗しないようにがんばるぞ!!
そういえば、1つ疑問に思った事がある。なんでイヨちゃんは私を選んだのだろう。私なんか良いところなんて何もないのに......
「あの...イヨちゃん。異世界に行く話だけど、そんなすごい話をどうして私なんかに?」
「私なんかじゃないわ!!あなただからよ、ユイ♪♪」
「私、知ってるわよ♪ユイがとっても頑張っていた事。何度もクラスメイトに話しかけようとした事も知っているわ!
ユイはもっと自分の可能性に自信を持って良いのよ♪♪」
「それに私はね、あなたを初めて見た時からずーっとお友達になりたいと思っていたのよ♪♪だからユイ、私とお友達になりましょ♪♪」
「イヨちゃん...も、もちろんだよ!イヨちゃんが...最初の友達で良かった...こんな嬉しくて優しい言葉を言われたの初めてで...涙が止まらないよぉ......」
「これからもよろしくねユイ♪♪」
「せっかくの旅立ちなんだし、笑顔で旅立ちましょう!!」
「......うん。そうだね!!」
「ありがとうイヨちゃん。私頑張るよ!頑張って沢山の友達を作ってみせるよ!」
「ユイなら大丈夫よ♪♪期待しているわ♪♪」
「ユイの新しい人生。ユイの好きなように生きても、罰は当たらせないわ♪」
そう言うと、私の周りに魔法陣のような文字で埋め尽くされていた。
「いってらっしゃい!ユイ♪」
「あなたの好きな世界が待っているわ♪♪」
「ありがとう!!イヨちゃん!」
「また、会えるかな?」
「ええ。きっと会えるわ♪」
「それまで、楽しみに待っているわ♪♪」
魔法陣が部屋全体に輝き、眩しさのあまり目を瞑った...。
しばらくして目をゆっくり開けると、そこにはさっきまで見ていたはずの町の近くの森が目の前に広がっていた。
「本当に来ちゃった...ここが異世界...イヨちゃんの世界!!」
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
自分、小説書くの初めてなので、ダメな点意味がわからない点があれば言ってください!
次の話はだいぶ時間かかるので、気長にお待ちください。