登場人物&世界観紹介:第5章&第6章
第5章と第6章に登場した登場人物達や、舞台設定の紹介です。
【主要登場人物】
<プレアデス=グランシャリオ=ルビー=セプトリア>
セプトリア王国先代国王。現王女ナナリーの父であり、故人。享年45歳。
穏やかな人格者でありながら、指導者としての力量は確かなものであり、存命時には数多くの政策を進め、国民が豊かに暮らせるようセプトリア王国をよく導いてきた人物である。多くの民に正しい意味で尊敬され、支持を集めた国王であったが、世の中そんな人ほど早死にしてしまうのか、実に惜しまれる病死を迎えて唯一の息女であるナナリーに王位を継承した。
国王としてはあらゆる面から見て名君だったのだが、早世した妻のことをなかなか忘れられなかったせいか、新しい妻を娶ったり、昔から側室を得ることもしなかったため、王位継承者をたった一人しか遺せていなかったことだけが玉に瑕。それだけ人としては女性に対して誠実であったとも言えるし、王としては遊びあるいは危機管理能力が足りなかったとも、冷徹には評価できてしまう人物である。結果、代々セプトリア王国国王の直系の血は、ナナリーが子を遺せなければ絶えてしまうという状況に陥ってしまっており、現状ナナリーは跡継ぎの子沢山を期待されている。ナナリーの許婚が早くからニトロと定められていたのは、そんな事情もちょっと含んでのことなのだ。
<ダウィラス=セッティマン>
ハルマが去った後のナナリーの側近に大臣職として就いた人物。39歳。
父は現在アルバーシティを治めるウィークである。ウィークは先代国王プレアデスの大臣を務めていた人物で、ナナリーに王位が継承された後すぐの頃も、短期間ながら摂政を務め上げた人物だ。そんな偉大な父を持つ彼は、優秀ながら温和な父に育てられた割に、志は高く育ち続けた結果、けっこう厳格な人物に育ってしまっている。父と息子は似るとは限らない、を地で行く一例に用いられやすい。父を嫌って違うように育ちたがったならともかく、父を心から尊敬して育った上でそうなのだから、余計に周りからは不思議がられるらしい。怒らせると怖い人物で、年上年下問わず彼を怖がる人はかなり多いのだが、王国家臣としての手腕は優秀の一言に尽き、民や城内の関係者からも敬意を集める人格者。
<レフ=トプテリクス>
セプトリア兵の一人。20歳。
剣の道を志したのも十代半ば頃、兵士となることを志願して兵になったのもつい最近で、ユース達と比較するとまだまだ剣の道を歩み始めたばかりの普通の成年(例えばユースなんかは6歳から剣の道を歩み始めている)。現時点ではあまり兵士として、剣士として優秀な方ではなく、訓練場でルザニアと手合いをさせて貰っても、年下のルザニア相手にこてんぱんにやられてしまう腕である。ルザニアは19歳にしては抜けて強い方であり、彼女に手も足も出ないのは、他のセプトリア兵の多くにも言えることだが。
可憐で礼儀正しく可愛らしいルザニア、それでいて強い彼女がツボにきたらしく、口には出せないものの明らかに彼女へ好意を寄せている。それに気付いている先輩に促され、ルザニアと舞踏会で手を繋いだ時も、初々しい反応を見せていた。ただ、ルザニアは強い男の人に惚れる恋愛観念を持っているため、彼女の心を射止めるには、まずは彼女より強くなることが第一目標となるだろう。精進あるのみである。
<ザイン=ガラーシュ>
シャプテ商会の親方。63歳。
年の割にはまだ若くも見える方であり、今でも現場を離れず現役商人として働いている。叩き上げの商人よろしく未熟者には厳しく、気性も荒い方で、仕事中に凄い声で怒鳴ることも非常に多い。そんな中でもシリカのようなお客様が現れれば、ころっと接客用の態度に切り替えたり、さすが商人と言わんばかりの変わり身を見せたりもする。
かつてセプトリア王国に帰化したばかりのハルマを雇っていた人物で、ハルマとは旧知の仲である。その観点をして、ハルマがナナリーに仇為すようなことをして半ば追放される形となった、という話を聞き、ハルマがそんなことをするはずがないと考えている一人でもある。厳しい親方ではあるものの、かつての部下を今でも案じるほどには人情に溢れた人物であり、だからこそ荒っぽい彼を慕ってついてくる若者も多く、商会が良い形で回り続けているのかもしれない。
<リープ=ユーリアス>
アルバー帝国の残党。36歳。
真っ白な肌に青い神父服を纏い、過剰に作ったとしか思えないほど弧の利いた口を保つ笑顔を、仮面のようにその顔に張り付けた不気味な男である。表情を固定しているのは他人に感情を悟らせないことと、その表情を崩さない自信の表れでもあり、侵略する相手にその顔を見せることで、あわよくば挑発を兼ねることを目的としてのもの。
魔物を調教して使役する、特別な能力に秀でている。それ自体は彼が、アルバー帝国に仕えていた頃からそう。しかし魔物と手を結ぶことは、世界中どこでも余程の事情が無い限りは重犯罪であり、リープのような魔物の使い方など論外である。アルバー帝国で皇帝と裏で手を結び、魔物を使役した暗殺業めいたことも行なっていたそうだが、それは当時のアルバー帝国でも最機密事項であったようだ。そんなことを平然と行なえる男だけあり、性格は残忍かつ狡猾、人の不幸もお構いなしの悪辣な性格をしており、過去には同じ国にて身を置いていたハルマも、リープのことを強く嫌悪していた。
<リペーズ、ラポーダ、カドテット>
数多くの魔物を従えるリープが、最もそばに置く三匹の魔物達。
大きな犬の姿のリペーズは、リープを背に乗せて素早く駆ける。その気になれば戦闘能力も高い。
猿の姿の魔物であるラポーダはその機動性と器用さ、知恵を活かし、諜報や、主人に代わってリープの操る魔物達に指示を下したりする。三匹の中では戦闘能力が最も高い。
雉の姿をしたカドテットは、空から偵察を行なったり、文を届けたり受け取ったりして、リープの望む相手との連絡役を担うことが殆ど。戦闘能力は高くない。カドテットのみ第6章終了時点では名前が出ていないが、どこかに登場はしている。
<ベスタ=オリンピス>
アルバー帝国の敗残兵。55歳。
はっきりと筋肉質な巨漢であり、黒の鎧を纏って青銅の盾を腕に装備、大きな剣を手にした武人の風格を持つ男である。ただし、アルバー帝国崩壊に伴って逃亡し、セプトリア王国によるアルバーの残党狩りから逃れるための隠遁生活をしていたせいで、現在決して身なりはよろしくない。ぼさぼさ頭で無精髭も多く、装備も錆びたり苔むしたりで、まるで山賊のような出で立ちである。
アルバー帝国が滅びる前は、帝国最強の剣士の一人と謳われた人物。剣と盾を用いて戦うそのスタイルは、ある意味ユースの戦い方にも通じるものがあるが、ユースと比較すれば力押しの戦略が取りやすいパワーがあるため、いくつかの点においてははっきりとユースを上回る面も持っている。大柄の割には器用な体捌きと機敏さも併せ持つため、ユースもベスタと再戦することあらば、果たして勝てるだろうかと深刻に考えている。
<カイザー=クアドリア>
アルバー帝国の隠し玉。47歳。
立派な筋肉と体格を持ち、張り詰めた藍色のノースリーブのシャツと、アーミーパンツを身に纏うという、体術に秀でていそうな出で立ちである。しかし腕全体を禍々しい刺青に染め、口元を血が染み込んだような赤黒いマフラーで隠していたりと、灰色の髪や鋭い眼光も併せ、風貌以上の不気味さを醸し出している。
かつては、アルバー帝国皇帝ベリリアルに仕える直属の暗殺者であり、目立ちそうな体格ながらも、隠密行動には秀でたものがある。リープとは異なる形で、皇帝にとって目障りな者を始末する任務を数多く担い、実に多くの人間を葬ってきたようだ。アルバー帝国ではその名はおろか、存在すらも殆ど認知されておらず、まさに皇帝のみに仕える切り札であったと言えるだろう。ゆえに彼についての情報は非常に少なく、恐らくカイザーのことを詳しくあれこれ語れるのは、彼の主君であったベリリアル皇帝をおいて現代には他にいないと思われる。彼がどのようにして戦うのかを、リープやベスタですら知らないのだ。
<ベリリアル=マーズ=アルバー>
アルバー帝国の最後の皇帝であり、間違いなく故人である。享年67歳。
暴政の限りを尽くし、自らと自らを取り巻く者達の私腹を肥やし、優雅な生活を営むための金を国民から吸い上げていた、まさしく悪の皇帝と呼ぶべき存在だった。恐怖政治でアルバー帝国を支配し続けており、この皇帝を表向きは敬いつつも、快くなど思っていなかった国民が大半であったことは想像に難くない。
アルバー帝国からの独立を志したセプトリア王国に戦争を挑まれ、やがてはニトロの父ヘンリーの手によって討ち取られた。しかしその無念と怨念は、死してなおベリリアルの魂をこの世に遺し、やがてそれはベリリアルを殺した憎きヘンリーに付き纏い、その末にセプトリア王都まで辿り着くことになる。憎しみのあまり昇天できぬベリリアルの魂は現世に残存し、やがてはアルバー帝国を滅亡に追い込んだ女王、ナナリーの精神と肉体を侵食するにまで至り、とうとうナナリーの肉体を奪い取る存在にまで至った。今のナナリーは彼女の意志とは関係なく、彼女の内から肉体を支配するベリリアルの怨念に操られる形になっている。
その憎しみは留まることなく、己の国を滅ぼしたセプトリア王国そのものを恨む想いで募っており、ナナリーの肉体を乗っ取った彼は、女王の肉体と言葉で以って、平穏なるこの国を転覆させることを狙っている。何せ国のすべての決定権を持つ王の肉体を奪った今、出来ることは山ほどあるのだ。手始めにヘンリーの忘れ形見であるニトロとイリスを、ナナリーの権限で以って抹殺した後、さらなる動きを見せて国をおかしくしていくことを画策しているのだ。放っておけば一年後には、荒廃したセプトリア王国があることが約束されている。
【魔物図鑑】
【オーク属】オーク
ちょっと大柄な人間のような姿に、豚の顔を持つ魔物。でっぷりと出張った腹は、種属に共通する特徴か。
賢そうには見えない風体だが、身内同士での疎通能力には秀で、人間の目からではわからないが、個体同士の判別もしっかりしているようだ。自然物、つまり木や枝、石や動物の角や牙などから、槍や弓矢などの武器を作る知性もあり、ものによっては魔法を使える個体もいる。普通の人間より筋力などの身体能力に秀で、連携能力も高いのだから、そんじょそこらの山賊などと比較するなら比べ物にならない脅威度を持っていると言えるだろう。
種属の最大の特徴として、群れの誰かが殺されたりすれば、何がなんでも復讐に動こうとする習性を持つ。連携力に秀でることや、武器や魔法を駆使して戦う様にその思想を加えると、ある見方では非常に"人間に近い"魔物と形容する人も多い。
基本的には積極的な人里への侵略性などはさほど無く、こちらがオークの領分を侵したりすることさえなければ、基本的に無害な魔物ともされる。ただ、先日はサブアの村が農作物目当てに襲撃を受けたりと、全く被害を生まないわけではない。さらにその一方で、その際にも無用な人間の殺害を行なわない辺りが、同属を殺される怒りや悲しみを知るオークの特徴であり、それも含めて人間臭いとも。
【オーク属】オークロード
オークの上位種とも言えるし、わざわざそう呼ぶほどではないとも言える魔物。
オークは常に群れで行動するが、必ずそこには群れを統率するオークが一匹いる。そいつは草で作った冠を一匹だけ頭に乗せていたり、一匹だけ首飾りを下げて"ボスのシンボル"を主張しているが、それがオークロードと呼ばれるだけであり、それ以外は他のオークとさほど変わらない。要は、群れで一番尊敬されている個体が権威を示し、それを人間がオークロードと称しているだけなのである。
群れを統べるだけあって、その群れの中では一番強い個体であると見て間違いない。八割方魔法が使えるし、手にした得物の使い方も、まるで武器の扱い方を学んだ人間の手練の如く洗練されている。仲間達を率いるだけあって、戦場でも判断能力が高く、知性に富んでいることが殆ど。オークの群れに直面し、ロードと思しき個体を見つけたら、その能力の高さを他のオークと同じだと見ないよう心がけるべきである。
【獣人属】ワータイガー
人間よりも大きな体で、虎のような頭部を持つ、二足歩行の獣人の魔物。
腕力、脚力をはじめ、人間よりも遥かに高い身体能力を持つ魔物であり、その剛腕で殴りつけたり太い脚で蹴飛ばすなりすれば、それだけで大概の人間は再起不能に出来るパワーを持つ。殴る蹴る以外の攻撃方法を持っていないが、瞬発力も高く、その素早さと攻撃力だけで存分な脅威度を持つ魔物であるため、武器を持たずに相対しようものなら一巻の終わりとさえ言える、恐ろしい魔物として認知されている。
ちなみに上記のオークと比較した場合、能力はこちらが高いが知性と戦術性で劣るため、人間から見てどちらが恐ろしいかと言われればケースバイケースである。
【狼属】ジャッカル
野生の狼とほぼ同じ習性と風体を持つ魔物。雪山に生息するスノーウルフと比べると、体毛の色を除けばほぼ同じ魔物と解釈してもいい。
素早く駆けて鋭い牙で噛みついて来る、それだけの魔物だが、ひとたび食いつかれると大怪我となるのは、やはり野生の狼と変わらない。これよりもっと恐ろしい魔物は山ほどいるとはいえ、多数で襲いかかってくるジャッカルも、戦い慣れた戦人をしてなお侮り難い存在である。野山を旅する行商人などにも、油断したある日ジャッカルの群れに襲撃され、無残に命を散らされる例は少なくないようだ。
【蛇属】ヴァイパー
小さな蛇の姿をした魔物。
見た目に反して毒性などはないのだが、噛み付いて肉を引きちぎる顎の強さはなかなかに怖い。加えて地を這い接近してきて、跳びかかってくる魔物であるため、下方からの襲撃に武器で対応するのが案外簡単ではないという厄介さがある。おまけに素早く、環境によっては物影や樹上から飛びかかってきたりなど、本来の想定外の角度から襲撃してくることもあるため、一匹見かけたら視野を広く持つことを意識させられる魔物である。
【ミノタウロス属】ミノタウロス
人類が恐れる魔物の中でもかなり有名な一種。雄牛の頭に筋骨隆々の肉体、そして大斧を武器に戦う二足歩行の怪物である。
強すぎる筋力は、攻撃力、素早さ、タフネスのすべてを脅威的なものに押し上げており、武器を振り回して暴れるこれに、人間が近付くことは本来自殺行為に近い。そのパワーで振り回す斧に人間が殴られれば、頭が砕けて一撃で殺されてしまうからだ。急所でなければ剣や矢を突き立てられてもそう簡単には死なないし、でかい図体の割には素早いため、武器の扱いにも秀でているため隙も極めて小さい。これ一体を撃破するために、十数人もの人間が束になってかかり、多数の犠牲を出して討ち取れるか否か、というのが通説である。上述のオークやワータイガーなど、ミノタウロスと比較すれば可愛いもの、なんて言われるほど、この魔物の脅威度は高い。こんな魔物をまぐれ無く、一対一で仕留められるようにまでなれたなら、もう強い戦士の仲間入りを果たしたと言えるだろう。
【騎人属】ケンタウルス
鉄仮面や鎧、槍やランスなどで武装した人間の上半身に、馬の下半身を持つ魔物。
馬の四本足で駆けるスピードは言うまでもなく素早く、意外に小回りも利き、その俊敏性は厄介である。加えて高い位置から武器で突き攻めてくる戦法は、受ける側からすれば重力を乗せた突きが重く、その特殊な角度からの攻めも相まって対応に苦労する。その武器の特性上リーチも長く、離れた場所から攻撃される側としても反撃がしづらいため、人間にとって撃破の難しい魔物であると断言できるだろう。ものによっては人間と語らうほどの言語力を持つ個体もおり、総じて知性の高い魔物である。走力が人間よりも明らかに高く、遭遇するとこいつから逃げるという選択肢が与えられないのも怖い。
【狐精属】ワーフォックス
細身の人間のような肉体を体毛で包んだ、狐のような頭部を持つ魔物。
身体能力はそれなりに高く、身軽に跳んだり駆けたりと、俊敏性には非常に秀でている。しかしその真骨頂は、火属性の魔法を使いこなすその能力にあり、主にそれを用いて戦う個体が殆どである。火の玉をいくつも生み出して敵に迫らせたり、広範囲に燃え広がる炎のブレスを吐くなどして、近距離戦よりも中・遠距離戦を得意とする。一方で、そもそもの身体能力が高いため、接近戦を仕掛けられても、強い蹴りなどを放って応戦する能力も充分に持ち合わせている。要は格闘能力を併せ持つ魔導士のような魔物であって、その隙の無さと猛撃性を総合して、かなり強い魔物と評価できる。
【狸精属】ウェアラクーン
ずんぐりとした二足歩行の魔物で、狸の頭と体毛の人型の魔物である。
細身のワーフォックスとは逆に、肉付きのいい体はパワーに秀で、ワータイガーなどの力自慢の魔物とためを張れるぐらいのパワーを持つ。反面、他の俊敏な魔物と比べればスピードで劣るが、それでも人並み程度には駆けて跳んで出来るため、最低限のフットワークはこなせる魔物と言っていい。
ワーフォックスと同じく魔法を主体に戦う魔物であり、土属性の魔法で岩石を生じさせて攻撃したり、あるいは魔力を纏った大きな葉っぱを生み出して、それを盾のように扱う木属性魔法を用いたりする。岩石を纏って転がって突進する攻防一体の攻撃手段を用いたり、魔法で狙撃されてもそれを防ぐすべを用意していたりと、素早さに欠けるぶん守備力に秀でた戦い方が目立ち、それが出来るほどには知恵が利くとも言える。脅威度はワーフォックスと同等だが、あちらは攻撃性がより恐ろしい一方、こちらは討ち取りづらさがより厄介。
【煙魔属】スモークレイス
灰色の煙のような魔物。それが実体なのでそうとしか言いようがない。
煙そのものがこの魔物であり、それを操る核らしきものも存在せず、隙間さえあればどこからでも侵入して、生物の肺を侵して息を止めようとする。ゆえに物理的な攻撃は一切通用せず、たとえば風の魔法で吹き飛ばすなりしても、散らすだけで一時凌ぎにしかならない厄介な魔物である。討伐するには、ひとまず魔法なり何なりで定点に捕え、その煙を統率する霊魂を昇天・成仏させる魔法で浄化することが必要とされる。そうした観点から、怨念の集合体である霊体の魔物と同等の存在として扱われやすい。
他の生物として捕食などするわけでもなく、生存理念がいまいちわからない魔物である。恨みつらみを抱えて現世に留まる幽霊の類の魔物にはこういったものも少なくなく、全生物にとってとりわけ迷惑な存在と言えそうだ。
【犬属】ヘビーハウンド
子牛ほどの大きな犬の姿をした魔物。人が跨って乗れるほどの大きさである。
牙を用いて戦闘や狩りに臨む側面からも、やや狼属の魔物に通じるものがあるが、こちらは狼属と比較すると体当たりしたり、前脚で殴ったりと、そこそこ戦い方が荒っぽい。あくまで近い動物の姿で分類分けされているのだが、そうした性質の差を見比べても、狼属の魔物とは多様な点で一線を画している。
体が大きいので、ぶつかり合いの戦いになればけっこうなパワーを生み出し、大柄な魔物と比較しても馬鹿にならない底力を発揮する。人間の世界でもそうだが、殴るよりも全力の体当たりの方が高威力なのだ。ヘビーハウンドは我が身を痛めようとも、体すべてを使ってでも命を懸けた戦いに勝利しようとする根性が据わっており、そこに限って言えば多くの魔物や人間を上回っている。
【雉属】ビッグファイサー
雉の姿をした魔物。羽毛が色彩に溢れていて、外観は美しい。
動物の雉よりも大きい程度であって、見た目にはそれだけで魔物と言うのもどうだろうと言われやすい。しかし野鳥の如く虫や小動物を狩るに留まらず、群れを為せば小さな人間の子供だろうが食いにかかろうとする獰猛性がある。それが動物と一線を画す性質であり、仮に見かけても手を差し出すなど言語道断である。指先を食い千切られても文句は言えないからだ。しかしもっと大きな鳥類の魔物と比較すれば、そこまで凶悪な武器を持つでもなく、魔物としての脅威度は低め。魔物として分類されるのは、丸腰で近付くと危険、という戒めの意味合いが強い。
【舞台設定】
<サブアの村>
セプトリア王都にやや近い場所にある小さな農村。
取り立てて特徴もない農村だが、農業を重視するセプトリア王国にとっては、農村であること自体が国の特色をより強めてくれる大きな要素である。季節に合わせて多種多様な農作物を育てており、領地いっぱいの畑が生み出す農産物は、近い王都にとっても身近で重要な食料源として重宝される。
農村は基本的に、野生生物にとっては、よりどりみどりの野菜や果物が育っている楽園であり、魔物達からすれば攻め込んで占拠できれば贅沢が出来る楽園である。そのためのどかな農村にして、案外なほど兵力も揃えてあって防衛力も高いのだが、最近オークに侵略されてそこそこの被害を出してしまった。
<イユリ荒原>
サブアの村の近くに位置する開けた荒原。岩がごつごつ飛び出した平原、とでも言い換えられそうな環境である。
特定の魔物が生息するという特徴があるわけではないが、最近サブアの村を襲撃したオークの村が駐留していたという情報から、ユース達がオークにお仕置きするために訪れた。何があるかと言われれば何もない、ただただ人の手が入っていない荒原が広がっているだけで、先述の用事がなければユース達も訪れる機会もなかったであろう、そんな単なる荒原である。強いて言うなら、一切人の手が入っていないだけあって、うろつく魔物の通過点になりやすいため、何も考えずに横断しようとすると、魔物に遭遇する可能性が高い場所とは認識されている。旅人や行商人達も、目的地に対して近道な場合があったって、敢えてはここを通らないことが殆ど。人の手で整備された道を進む方が遥かに安全だからだ。
<シャプテ商会>
セプトリア王都に拠点を持つ商会。頼もしい親方が仕切る、誠実さが売りの商業団体である。
王都内での数多くの事業を手がけ、先日魔物達がセプトリア王都を侵攻しようとしたその後も、崩された街の復興に大きく貢献した。豊富な財力と資材や資本で、王都内での多くの物事に関与し、利を生み出す頼れる商会として名を馳せている。ものを売るだけでなく、仕事を選ばず人を雇い、遣わせるそのスタンスが、広く信頼を勝ち得てきた最大の理由だろう。それでいて同業者と、悪い意味で仕事の取り合いにならないよう(たとえば復興支援の際に、大工業を営む人々から仕事を奪いすぎたりしないよう)、折り合いをつけた交渉術を行なえる人材に溢れていることも、この商会の大きな特徴であり強みである。
アルバー帝国を離れてセプトリア王国に移ってきたばかりの頃のハルマは、最初ここで働いていたという話。元より付き合い上手でコミュニケーション能力や交渉術に秀でるハルマではあったが、こうした場所で働いていた経験もまた、彼のそうした側面をいっそう伸ばした一因であったのだろう。
<パトル商会>
シェバの町にある商業団体。シェバの町については第3章の舞台設定紹介を参照。ユース達もシェバの町には訪れたことがない。
商会というものは多様な商品を扱うが、パトル商会は特に、魔法学者や魔導士相手に取引するようなものを数多く取り扱う。杖やローブをはじめ、薬や特殊合成物質などがそれに挙げられる。つまり、加工術や織物の生産力には少なくとも秀でた商会であり、それによって一般の人々とも取引を行っている。
作中では、ナナリーが口にした毒物相当の液体、ヴィール液をイリスに売った商会として疑われた。それが真実か否かが判明する前に、それを確かめに訪れたニトロの目前、商会の本館が全焼するという悲劇にも見舞われた。出火の原因も、女王暗殺事件への関与のほども不明のままだが、どうも話が色々と出来すぎていると思えば、もしかしたらこの商会も事件に巻き込まれた被害者なのでは、という見方が出来てしまう。




