第41話 ~来訪者が多い王都の春~
「よかった」
「なに、エルアーティ様から呼び出しの手紙が来なくてほっとしてる感じ?」
郵便受けから手紙やら朝刊やらを纏めて持ってきたユースが安堵する表情を見て、アルミナが正解を口にする。
ユースの返事も、しみじみ深々うなずくといったもの。
ユースって本当わかりやすいなぁって、アルミナは昔から思っている。
昨日の夕食時、エルアーティが来国されていることもユースから聞いたが、なんとも沈痛な面持ちで話してくれたことが記憶に新しく、鮮明だ。
本当に苦手なんだなぁと、その時もわかりやすいなぁと思った。
「私エルアーティ様のこと、ユースが苦手な理由わかんないんだけどなぁ。
私とお話する時は、話のわかる知識人様っていう印象でしかないからさ」
「話のわかる……ど、どこが……?」
「えっ、私ヘンなこと言いました?」
「いや、まあ……どっちの気持ちもわかる、かな」
アルミナとユースで、エルアーティに対する見方は全くもって違い過ぎる。
第三者であるシリカに問いかけるアルミナに対し、シリカも笑顔でありながらも複雑な面持ちだ。
シリカはシリカでエルアーティに対しては、素直な尊敬心と苦手意識の両方を持っている。
「何と説明すべきかなぁ……アルミナ、好きな人に意地悪したくなる気持ち、っていうのはわかるかな」
「あ~まあ一応は。小さい男の子とかによくあるやつですね」
「シリカさん、アルミナって孤児院時代に、同年代の男の子にちょっかい出されまくってたの知ってます?」
「うん知ってる。モテモテだったとしか思えない」
「は~い、そう思っておくことにします。
……いやまあ冗談抜きにすると、私けっこう荒っぽい性格してたから、敵作りやすかっただけだと思うけどね」
ひとまずお世辞に元気良く乗ってみせたはいいものの、幼い頃の自分を知っているアルミナは、ばつの悪そうな顔で笑っていた。今の話題は流して欲しそうだ。
自称ガサツ、つっかかられると胸を張り返す気の強さに自覚があるだけに、そんな自分がモテていただなんてアルミナには自分では思えないらしい。
幼い頃に、アルミナに好意を寄せているがゆえにちょっかいを出していた男の子達、気の毒なことに今なお気付いて貰えすらしないようで。
「昔聞いたことがあるんだが、エルアーティ様は好きな相手の色んな顔を、あるいは全部の顔を見たがる性へ……あ、いや、性格だそうで……」
「今シリカさん"性癖"って言いそうになりました?」
「突っ込まなくてよろしい。ともかくそういう性格だそうなんだ。
全部の顔っていうのは要するに、好きな人の笑った顔や幸せそうな顔だけじゃなく、困った顔や嘆いた顔、引きつってる顔や泣いてる顔まで全部含めているそうで……
まあ、私にはちょっと理解しかねるが……好きな相手に意地悪したり、困らせたりするのは結局、その人の困った顔、も、見たいからっていうことらしいよ
「ひゃあ歪んでるっ!」
「歪んでる……」
「私もそう思う」
なんでも許せるおおらかさの器が大きいアルミナは面白がるだけだが、ユースは普通にドン引きだ。
シリカはずっと苦笑いしっぱなし。言ってて自分でも、よくわからないことを言ってるなぁと思っている。
「え、何ですかつまり、エルアーティ様が俺にあれこれ意地悪してくるのって……」
「ユースに好意を持ってくれてるのは、まあ……間違いないんじゃないかな」
「…………」
ユースが固まってしまった。
その価値観、よくわかりませんし、何よりそれでは改善策が見つからない。
嫌われているから意地悪される、なら、謝るなりして自分を改善していこうという道もあるが、自分が好かれているがゆえにあんな接し方をされている、なんて聞かされたら、じゃあどうすれば?
嫌われるように動けばいいのでしょうか。エルアーティがなぜ自分なんかを好んでいるのかもさっぱりわからないユースだというのに、さあどうやって嫌われれば?
「え、じゃあ私はどうなんです? エルアーティ様にはけっこう優しくして貰えるんですけど、それって言うならエルアーティ様は私のことを嫌ってるか、実は興味なしなしってことですか……?」
「いや、アルミナは違うと思う。私にもわかるけど、アルミナは"陽"だからな。
何でも前向きに受け取ろうとするお前を、困らせたり泣かせようとしたりしたら、よっぽどのことをしてお前を追い詰めなきゃ駄目だろ?
流石にエルアーティ様もそこまではしたくないんだろう。ぎりぎ……あ、いや、分別はある人だからな」
「シリカさん今"ぎりぎり分別はある"って言いそうになりました?」
「突っ込まなくてよろしい。
アルミナは普通に好かれてるよ。以前お話した時にも、アルミナのことはすごく良く言っていたからな。
好きな相手に意地悪することの多いエルアーティ様だけど、アルミナにその好意からくる意地悪みたいなものが来ないのは、別に好意がないせいでのことじゃない」
「あぁよかった、私エルアーティ様のこと普通に尊敬してるし、嫌われてるって言われたらショックですもん」
「アルミナさー、魔法使いでもないのにエルアーティ様のどこを尊敬してるんだよ」
「え、普通に知識人だし経験豊富だし、尊敬すべき大人じゃん? 見た目はああだけどさ」
「俺あの人尊敬するとか無理だよ、いや実績はわかるよ、頭がいいのも知ってるけど……」
ユースだって、魔法使いとして、学者としてのエルアーティのことは凄い人だと知っているけど、それを打ち消すぐらいヒドい仕打ちを、あの人に食らいまくっている。残虐なやつではないが。
嫌いな人とまでは言い切らないのが人の良さだが、近寄りたくない人であるのは揺るがない。
接され方のせいで、エルアーティへの印象は、ユースとアルミナで全く違い過ぎる。
「わかるでしょシリカさん、俺の気持ち」
「あ、うん、わかるよ……私もけっこうあの人には、辛辣に叱られたことがあるからな……」
「きつく接されたことがあるってことは、シリカさんもエルアーティ様に好かれてるってことじゃ?」
「いや、私は違うと思う……単に叱られただけだしな。あれは私が悪かったんだけど」
「へー、シリカさんでも叱られることがあるんだ。その話詳しく聞かせて貰えます?」
「言うわけないだろ、恥ずかしい。やめなさい」
「えー聞きたいのに。たまには弱いとこ見せて下さいよ」
「弱すぎてダメなんだよ、もうこの話終わり」
何を叱られたかって、ユースから弟子離れ出来ていないあなたのせいでユースの成長が止まっている、とかそういう内容だから。
これは絶対に人には話せない。ユースの前でなんか特に。
「まあそんなわけだから……言っちゃ悪いけど、どうにもならないと思うよ。
あの人、一度好きになった相手のことは絶対に逃がさないらしいし……嫌われようとして普段と違う行動を取ったとしても、あの人の目には"困っているからそうしている"のがわかるだろうから、喜ばせるだけかなと」
「シリカさんすいません、俺仕事とか全部放棄してエレムに帰りたいんですけど。
エルアーティ様のいないとこならどこでもいいから行きたいんですけど」
「追いかけてくると思うけど……」
「詰んだ……」
「詰んだ詰んだ♪」
「何が面白いんだこら、つねるぞ」
「やめて」
アルミナに両手を伸ばして、親指と人差し指を開くユースだが、アルミナがその手首をがっちり捕まえて、あとはぐぐぐっと押して押し返しての拮抗戦。
女の子のアルミナに本気の力を出せないユースと、アルミナの全力でちょうど釣り合うらしい。
とはいえユースも元の腕力が強いので、それに抗えるアルミナの腕力も実はそれなり。銃使いは腕力がひ弱では務まらない。
「――ん? 客人か」
ぷんすこユースと、ごめんごめんと言いつつも笑っているアルミナが遊んでいると、玄関の方から鐘を鳴らす音が聞こえた。
ユースもアルミナも聞こえているだろうなとは思いつつ、ほどほどになという意味も込めて、来客の訪問をシリカは口にする。
「もぉ……アルミナ、ほんと面白がるなよ。俺にとっちゃ本気で嫌なんだから」
「わかったわよ。今後はあんまりいじらない」
「あんまりじゃねえよ、もうやめろ」
アルミナに掴まれた手首の力を抜いて、手を軽く振ったユースは、もうやめるからお前も離せとアルミナに態度で表す。それでアルミナも本当に手放すんだから、信頼関係のしっかりしたものだこと。
しかも来客を迎えに行くのはユースっていう。
あれだけからかわれた後なのに、お前行って来いよとも言わず、自分の足を使うユースのお人好しっぷりには、背中を見送るアルミナも相変わらずだなぁと思う。
「あんまりからかってやるなよ。
私もエルアーティ様のきつい所は知ってるから、ユースの気持ちもわかるんだ」
「はぁい」
返事は軽いが、はいと言ったらちゃんと戒めている表れのアルミナだから信用していい。
どうせ後で、何気なくユースに、からかった埋め合わせに何かしら優しくするようなアルミナだとみんな知っているから、彼女の悪乗りには身内が寛容なのである。
「う゛……!」
「お?」
玄関に出て客人の顔を見て、ユースが引きつった顔と声のまま自分の時間を止める。
訪問者はハルマである。なぜ自分を見てこんな顔をしているのかわからないので、ハルマも驚く。
「……あの、何のご用事ですか?」
「いや……あ、なるほどな。
違う違う、城に来てくれと伝えに来たわけじゃないぞ。私はエルアーティ様の差し金だとか、そういうことではないよ」
「あ、なんだ……す、すいません、失礼に警戒してしまって……」
「ふはは、本当にエルアーティ様のことが苦手なんだな」
察しが非常に良い。流石は参謀様。
早とちりで、めちゃくちゃハルマに身構えた自分を恥じたユースの顔は真っ赤になり、頭をかりかりかいて小さくなってしまった。
これもきっと、全部エルアーティって奴が悪いのである。エルアーティは存在するだけで、ユースの色んなものをおかしくさせる。
「今日は引き合いをですな。ほい、挨拶しろ」
さて、ユースはハルマにばかり目を取られて視野が狭くなっていたが、ハルマは一人で来たわけではない。
自分の後ろに隠れるような立ち位置の同行人に、前に出ろという手つきで促し、彼女の姿をユースの前へと出させる。
「あ~、その……お久しぶり、です」
「あ……えーっと、あの……カナリア、だったっけ」
「そうっすそうっす! 騎士様にお名前覚えておいて貰えるなんて光栄っす!」
はじめは緊張していたのか、おずおずとした挨拶だった彼女だが、ユースが名前を覚えていてくれたことが嬉しかったのか、強張っていた表情はぱっと明るくなった。
二ヶ月近く前、アルバーシティで一日ご一緒しただけの間柄だったので、ユースも思い出すのに少々の間を要したが、それでもちゃんと思い出せるのは物覚えの良さの表れだ。
以前ユースがカナリアを初めて見たのはアルバーシティの訓練場。
当時のカナリアはホットパンツに、へそ出しの短めのシャツ一枚着という、戦闘に向いた身軽な服装だったが、今日もあの時と同じ格好だ。あれは訓練時あるいは実戦用の武装着だと思っていたが、どうやら彼女は普段着からこうだということらしい。
ただ、金髪をポニーテールに纏めて、その先を三つ編みに結んだ髪型は一緒でも、ポニーテールの根元に大きな赤いリボンを付けているのはあの日と異なる。
目つきの鋭い彼女ではあるがやはり女の子、余所行きに着飾りぐらいはするのである。
「この子は昨日の夕方、こちら王都に来たそうでな。
ユースどのやアルミナどの、ルザニアどのに会いたいと言うから、案内させて貰った次第だ」
「前にアルミナさんにも、いつか王都に遊びに行くって約束したっすからね」
「そうだったんだ、はるばる会いに来てくれ……んっ?」
話の途中でユースが後ろを振り返るぐらい、後方からどたどたとダッシュ音が聞こえた。
なんだろうって思って一瞬後、誰の足音かはすぐわかったが。
「カナリアちゃんと聞いて!」
「出た変態」
「あ……お、お久しぶ……」
玄関に姿を現したアルミナが、庭の花に水やりする時などに使う、共用サンダルを素早く履いて、もの凄い勢いでカナリアに駆け寄ってきた。
ユースに変態って呼ばれたことなんて、耳に入っていないと思われる。
「カナリアちゃ……」
「ひぇ……!?」
「はう゛っ!?!?!?」
食われる。そんな予感がしたのかカナリアは、腕を広げて自分に抱きつこうとしてきたアルミナから、一歩ぶんバックステップで逃げた。
そのついでに、掌底でアルミナのお腹に一撃くらわせてだ。実戦でも通用する、格闘家仕様のヒットアンドアウェイ。
「かっ、カナリアぢゃ……」
「あっ、あわっ、す、すみませんっす……! なんかその、犯されるような気がしてっ……!」
痛烈なボディブローをくらったアルミナが、お腹を抱えて膝から落ち、うずくまる姿には、慌ててカナリアも駆け寄りしゃがんで謝り倒す。
傍からそれを見守るユースは、まあしょうがないなとしか思わない。さっきのアルミナの顔、獲物を前にした豹の目をしていたもの。身の危険を察したカナリアが、反射的に撃退の一手を打った気持ちの方に共感できる。
ひくひく体を震わせて動けなくなったアルミナと、何度も謝るカナリアを見下ろして、ユースとハルマは目を合わせて笑う。ユースは苦々しい笑い、ハルマは微笑ましい笑顔だが。
すいませんうちのツレが出だしからネジ飛んでて、と恥ずかしげなユースと、いえいえうちの子猫も荒っぽくてすみませんな、と笑うハルマ。
言葉なく、目だけでそんな会話が成立していたものである。
「アルバーシティからここまでだいぶかかったでしょ。大変じゃなかった?」
「いや、馬の単騎乗りっしたからそんなにかからなかったっすよ」
「え、一人で来たの?」
「あーいや、商隊様の傭兵雇われついでに、旅費をちょっと面倒見てもらうみたいな形っすね。
さすがに野山を一人駆けは、あたしもちょっと怖いんで」
ハルマもカナリアもユースらの家に上がり、居間にてテーブルを借りてユース達とお喋りタイム。
お茶はルザニアが淹れてくれた。いいとこ育ちで作法のしっかりした彼女の淹れるお茶は、何気に味も温度も適切で大変美味しいのであった。
シリカもいるが、ハルマやカナリアと最低限の挨拶だけして、それ以降は殆ど発言なし。自分が喋るとユースの口数が減るので、ユースとハルマがいる場では、意図的にシリカの口数は少なくなる。
遠いアルバーシティからここ、セプトリア王都まで来たカナリアだが、女の子の一人旅はやはり危険だし、あまり裕福でないカナリアは旅費も高くはつけたくない。
そんな彼女は、信頼されるだけの戦闘能力があることを活かし、アルバーシティからセプトリア王都に行く予定のあった商人様に、護送傭兵として雇われる手段を選んだようだ。
都合のいいことにその商人様も、早馬を使っての用事であったらしく、それに合わせてカナリアも単騎乗りの馬を使い、時間をかけずにすいすい王都に来ることが出来たという。
年下のカナリアが乗馬能力充分という話を聞いて、ユースがなんだかへこみ気味に、背中を丸めてお茶をすすっているのは別の話。
騎士なのに乗馬が苦手というのは、ユースにとって結構なコンプレックスらしい。
「来たのはいいけど、アルミナさん達にどこに行けば会えるのかなんてのも、あたし知らなかったっすからね。
ハルマ様に、いい具合にお会い出来たのはラッキーだったっすよ」
「アルバーシティから来た、へそ出しの目つきの悪い女の子が私のことを探している、と部下に聞いた時点ですぐにカナリアとわかったよ。だいたい目的もわかったしな」
「カナリアちゃ~ん、会いに来てくれて嬉しいよ~」
「あっ、お触りはダメっすよ。アルミナさん手つきいやらしいんすから」
椅子に座って並び座るアルミナとカナリアだが、椅子ごと自分の方に向き直るアルミナの行動には、カナリアも体ごと向いて身構えるポーズ。
拳は握っていないが守りの構えを見せ、抱きついてくるなら容赦しませんよの態度である。
「ちょうど私も皆様に用がありましたからね。
朝の早くに来させて頂きましたが、大丈夫でしたか?」
「いえいえそんな、全然大丈夫ですよ。何でも言って下さい」
「ふふ、ユースどのは仕事が欲しいのですかな? 別にまだ、仕事をお願いするとは言ってませんが」
「流石にこんなに毎日お休みじゃ、なんだか申し訳ないですし……」
「ありますな、そういうのは。まあ実際、ちょっとしたお仕事めいた頼みではあるのですが」
アルミナとカナリアがそんな風に戯れ合っているそばで、ユースとハルマは折り入った話。
カナリアと遊びながらも、ちゃんとその話も耳に入れているアルミナだが、仕事の話はユースに全部任せる勢いで完全無視の素振りである。気楽な部下様だ。
「時に皆様、端的に申し上げますが、スラムに耐性はお持ちですか?」
「耐性……あ、はい、そういうことか。俺は大丈夫ですよ」
「私も全然大丈夫ですよ~。ルザニアちゃんどう?」
「私も特には」
だんまり続きのシリカも、ハルマに微笑むようにして大丈夫だと無言の返答だ。
さっきから空気のように場に溶け込んで、存在感を発しないチータも、ハルマの目が自分に向いた瞬間に小さくうなずいた。リアクションが必要最低限すぎる。
スラムに耐性、というのは、あまり綺麗じゃない居住区に行っても耐えられる感性ですか、という意味。
治安と整備が行き届いていない、人の暮らす居住区は、汚いものがとっ散らかっていたりで、場合によっては歩いているだけで鼻をやられるような場所もある。
潔癖症だったりする人なら、絶対に行けないような空間であろう。
その点、遠征慣れしていて野宿経験も多数のユース達なんて、スラムの埃風で動じるような顔じゃない。
血生臭い死体の転がる廃墟に赴いたこともあるし、それと比べれば小便臭い路地裏ですら、よっぽどましというものである。
「ありがたいご返答ですね。実は皆様と、一緒に来て欲しい場所があるのです。
今度は武器を使うような仕事ではありませんが、そちらでも少々力仕事を手伝って頂ければ幸いなのですが」
「わかりました。お話、お伺いさせて下さい」
「ここ王都からは少し離れておりますが、トージュの村という農村がありましてね。
ちょっとそちらに税収に向かうのですが、あちらの皆様とも懇ろな付き合い方をしたいですからね。
出来れば向こうさんのお仕事をちょちょいと手伝ったりして、好感度をこう、ね?」
「農作業ってことですか?」
「まあついでに、他ではやらないような遊びみたいな仕事もありますけど。
それは来て下さるなら、行ってからのお楽しみということで。
ちなみに向こうでの滞在期間は二日を予定していますが、どうでしょう」
「いいじゃんユース、行こうよ行こうよ。なんか楽しそうじゃん」
「わかりました、お引き受けさせて頂きます」
「恐れ入ります、話が早くて助かりますよ。
それでは、昼にでもお迎えに上がりますので、それまでに支度を進めておいて下さいますか?」
「はい」
頼まれることなら、特にそれが仕事なら、何でもだいたい二つ返事で引き受けるユースだが、今は隊長の割に自分一人に決定権があると、逆に周りにもいいかなって聞きたくなる性格もしている。
そういうユースが一瞬悩むより先に、面白そうだし引き受けちゃおうよと背中を押してくれるアルミナのようなパートナーがいると、ユースも迷いがより消える。
サポートが無いと困る場面ではなかったが、つくづくアルミナの行動は、ユースに頼もしい付加材料を添えてくれるものだ。
セプトリア王国に来国して以来、斬った張ったの大きな任務が三つ、それも女王様の命やら、都の治安やら寿命やらを守る、かなり張り詰めた任務ばかり引き受けてきたユース達。
たかだか三ヶ月ほどで、異国で預かる任務でここまで厳しい仕事が連発するのは、セプトリア王国が本来平穏な国と世相である以上、異例の運びと言ってもいいぐらい。
たまにはこうして、平穏な村や町にて文化的なお手伝いをするに留まるような、穏やかなお仕事があってもいいだろう。
向こう三泊の小旅行のような任務を前に、既にアルミナはなんだか遠足を前にした子供のように、肩をそわそわさせていた。
この後、カナリアも同行するということを聞かされたことで、彼女のテンションはさらにアップすることになる。




