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第39話  ~解決と嫌疑~



「失礼致します」

「うむ……」


 ハフトの都の騒乱、それの鎮静化が済んでからの半日といくらか後、再び夜。

 セプトリア城にて、ハルマがお偉い様に名指しで呼ばれ、主君の自室の扉をノックして入る。


 魔法都市ダニームへと赴く予定のナナリーだったが、あのような一件の後に自国から離れるわけにもいかず、結局夜が明けて間もなくしてセプトリア王都へと帰還することになった。

 自室にてハルマを待っていたナナリーは、迎える表情も疲れきっている。

 魔法都市ダニームにお住まいの、友人にして尊敬する賢者様に会いに行く旅が、中断されたことにもがっかりだろうが、それもハフトの都の惨状を思えば些細なことだろう。

 二重のショックを背負って帰還したナナリーの表情は、ハルマから見てもおいたわしやの一言であり、顔を合わせてのハルマの会釈も、普段よりも少し深めである。


「一晩お休みになられてから、明日改めての公務でもよろしいかと思いますが」

「気遣いはいらぬ。先送りにしてよい問題ではあるまい」

「……そうですね」


 ナナリーも、ハフトの都という現場にいた立場なので、かの騒乱についてはいくつかの情報を持っている。

 だが、あの一件の集束から間もなくして、すぐにユースらと王都に帰還の道を辿ったナナリーは、それ以降の新情報を持っていない。

 あの後、ハフトの都の兵や法人によって纏められた最新の情報は、早馬を用いて夕頃にハルマへと報告されており、それからしばらくの今、ナナリーとハルマが情報を共有しようと居合わせているわけだ。


「まず、ハフトの都を襲った連中のうち、人間勢はやはりフラックオース組の者で間違いありません。

 末端構成員も含めて、知られている者も少なくありませんし、これは間違いのない情報です」

「うむ」


「ならびに、その連中には最重要警戒対象であった、フラックオース組の頭目スマーティオの実子、四名もまた含まれておりました。

 いずれも報告の限りでは、エレム王国騎士団の皆様が鎮圧して下さったようですね」

「うむ……かの方々には、後日も改めて礼を述べねばな」


 エディ、ヴトラーク、マルティア、デイビス。いずれもスマーティオの実子、つまりフラックオース組の次期頭目候補であり、組織内でも強い実権を持つ面々だ。個々の戦闘能力も高い。

 セプトリア兵では手を焼くそいつらを撃破したのが、ユースとルザニアとアルミナとチータである。


 街の人々の避難経路の確保や、ヘルハウンドらの討伐など、現地のセプトリア兵も大きな活躍を果たしたが、いかんせん敵軍の核を突き崩す大役を背負ってくれたのが、異国の騎士団様、ユースらというのが何とも。

 数年前にアルバー帝国の支配から逸し、自立したセプトリア王国の確立に向けて努めてきたナナリーにすれば、異国の騎士様頼りで解決した騒乱があったというのは、少々歯噛みする案件である。


「なお、次期頭目候補の四名については、いずれも死罪が固いとの見込みです。

 もっとも、エディ、ヴトラーク、デイビスの三名は現地で粛清されたようですがね」

「妥当なところじゃな。魔物と手を結んでの街への襲撃など、司法の場で判決を下すまでの時間も勿体ない」


 どんな罪人でも、一度は生け捕りにして司法の場にかけ、ちゃんと死刑判決が出るならその命を奪うというのが原則望ましい手順である。

 とはいえ、罪があまりに重すぎると、現地粛清が行なわれることもしばしば。

 エディ達がやったことというのは、子供の算数と同じぐらい解の見えた、死刑確定の罪深きことである。


 まず、どこの国の法でもだいたい同じことなのだが、魔物と手を結んで何かをすること自体が、原則(・・)相当な重罪行為と法律で定められている。


 ちなみになぜ"原則"止まりで断定されないかと言うと、極めて稀にではありながらも、魔物と手を結んだ人間が、人類側のためにはたらくケースがあるからだ。

 例を挙げるなら、人間に友好的な魔物の背中に乗って、人類に仇為す魔王の率いる極悪魔物集団に立ち向かう人間、というケースだとか。実際、ユースの友人の一人にも、少し前にそういうことをやった人物がいたりもしたのである。

 そんなわけで、魔物と手を結ぶ行為自体を重罪に値する行為だとは定義しつつも、それのみによって裁きを下すわけではない、と、繊細に定められているのが当の法律だ。

 言い換えれば司法の匙加減ひとつで決まるような話であって、少々法にしてはふわついた部分もあるが、それもまた歴史上にあった様々な史実を経て築かれた、現代における法の一つの終着点である。


 さて、問題は、街に火を放つだとか、建造物を破壊するだとか、人の命に手をかけるだとか、元より犯罪行為であることに、魔物と手を結んだ上で手を染めた場合。

 こうなった瞬間、"魔物と手を結んだ"ことが"重罪"として上乗せされ、罪人は魔物と手を結んでいなかった場合の刑よりも、ずっときつい刑罰を背負うことになるわけだ。

 もっとも、ずっときつくなったその結果が、ほぼ間違いなく死罪まで届く。

 極めて一部の例外を除き、魔物と手を結んで犯罪行為を行なった時点で、それはだいたい死刑確定なのである。

 いちいち名前を挙げられていないだけで、現地粛清されたフラックオース組の末端構成員らも同様だ。


「生きたまま確保したマルティアに関しては、現在セプトリア城の地下牢深くに投獄しております。

 どちらにせよ死罪は確定でしょうが、刑の執行前に少しでも尋問はしておこうと思います」

「それは任せる」


 司法的な手続きをスキップして、エディを死刑同然に葬ってしまったユースだが、エディの末路はほぼほぼ決まっていたし、セプトリアの法的にもユースの行動は問題にならない。

 ヴトラークとデイビスに関してもそう。

 ルザニアやチータに敗れた時点では、瀕死でありながらも息のあった二人だが、あの後集ったセプトリア兵の手によって、結局現地で夜も明けぬうちに粛清されるに至っていた。


 それら三名と比べれば、生き延びて死刑を待つまでの間は生きているマルティアは幸運だったようにでも聞こえるかもしれないが、考えようによってはこちらの方が悲惨かもしれない。

 アルミナにぶっ壊された肋骨のまま、縛り上げられて拘束され、早馬と馬車を使って速やかにセプトリア王都に連行される時点で、乱暴に運ばれるだけでも肉体的に苦痛。

 しかも今は地下深くの、不衛生な牢獄に投獄中。あとは死を待つだけ、希望もへったくれもない。

 さらには明日以降、ハルマを含む尋問班に、情報を引き出すために拷問にでもかけられる可能性すらある。

 こうして考えると言葉は違うが、現地粛清されたヴトラークやデイビスはある意味、安楽死処分を取って貰えたようなものとすら俗世では言われる。


 魔物の手を借りて街を襲うような輩の末路は、生きても死んでも地獄ということである。

 人は他人事に無関心がちだから、大事なことなのにすぐ忘れられがちだが、かの騒乱によって理不尽に、住む家や職場、財産を奪われて泣いた、無力な人々がいることを無視してはならない。


「……まあ、これで一つの懸念は、不本意な被害を伴ってではあれど、解決したと言えるでしょう。

 スマーティオの自害によって、いつどこで蜂起するかわからなかった実子や残党を、一網打尽に出来たこと自体は事実です」

「そうじゃな……そちらの火種が解決したことは良かったこととしよう。

 そうとでも考えねばやっておられんわ……」


 被害者の人々の嘆きと悲しみを、想像せずにいられない、無視することの出来ないナナリーだから、せめてこの結果の前向きな面も捉えましょうと提案するハルマの言葉にも、元気な顔を見せることが出来ない。

 これが統治者、王というものに向いた性格か否かは、かなり時代に左右される。


「ハフトの都への復興支援は、我々の方で進めておいてもよろしいですか?」

「ん……いや、まあ、それは妾が指揮しよう。明日にでも、書類を纏めておく」

「…………? お言葉ですが、お仕事が増えては大変では?」

「自分でやりたい。そもそもこうした福祉制度を整えたのは父上とお爺様じゃ。

 妾もこの手で、それにまつわる責務ぐらいは果たしたいと思う」


「…………」

「……なんじゃ?」

「いえ、特には。わかりました、少々心苦しいですが、お任せ致します」


 妙な間だ。

 空気が張り詰める、というレベルには達しなかったが、二人の間に流れた一瞬の緊張感は、両者にとって、無かったことには出来ないほど確かだった。


「……さて、ちょっとここからが重たい案件です。見方によっては、朗報でもありますが」

「ふむ」

「先程ユースどのの見舞いに行きましてね。

 負傷した彼にあれこれ聞くのも憚られましたが、ちょっと聞き過ごせないレベルの情報が得られましたよ」


 ナナリーらと一緒に王都に帰還したユース達だが、負傷したユースとアルミナは揃って医療所送りであった。

 二人の価値観で言えば、そんな大袈裟しなくても慣れっこですよってものなのだが、やっぱりそうなるのは仕方ない。というか、それが正しくて普通のこと。

 左肩ははずれかけていて上がらないくせに、これぐらい大丈夫ですよとか抜かすのがユースという奴なので、あの辺りの自己申告はあてにしてはいけないのである。


「エディやマルティアに命令を下していた、不気味な奴がいたとのことです。

 エディやマルティアはそいつのことを、リープと呼んでいたそうですよ」

「……何じゃと」


 ナナリーの表情も一気に険しくなった。弱っていた色も消えるほどに。

 それはエディら、フラックオース組の若頭となど比較にならない、現在のセプトリア王国においては、最上級の警戒対象人物の名である。


「リープ=ユーリウス。ナナリー様もお耳にしたことはありますね」

「アルバー帝国において、皇帝ベリリアル直属の魔物使いじゃろう。

 亡骸や討伐が確認されなかった時点で、まさかとは思うておったが……」

「生存説を唱え続けていた私の弁を強調するつもりはありませんが、やはりと言ったところでしょう。

 ユースどのの説明からも、キラーリベルの背に乗っていたようですし、ハフトの都の兵からの報告でも、エビルアープの存在を確かめられております。

 フラックオースの連中が率いたヘルハウンドにしても、元を正せばリープの提供したものということでしょうな」


 アルバー帝国。それはハルマの生まれの故郷にして、今は亡き帝国の名。

 長らくセプトリア王国を隷属のように扱い続け、ついに数年前セプトリア王国の反逆に遭い、戦争に敗北して滅んだ国家の名である。

 当時そのアルバー帝国に仕えた武人や兵は軒並み粛清されたが、すべてをあの日殲滅できたわけではあるまい。

 蟻の子一匹逃がさぬ勢いで掃伐に臨んだセプトリア陣営であったとはいえ、やはりあの戦争から生き延びて、今も闇の世界に身を隠している者達は残っていたのだ。


 リープという名はあまりにも名高く、魔物を使役し裏から悪行に手を染め、悪辣な皇帝の私腹を肥やしていた第一人者である。

 行為もさながら、性格も絶対に褒められたものではなく、当時からリープは帝国内でも恐れられていた。

 アルバー帝国に属していた頃のハルマも、こいつだけは絶対に尊敬する対象にはならないだろうなと断定し、極めて強く忌み嫌っていた人物である。


「フーリオ山地で妾らを襲ったあの魔物も、今にして思えばそういう事であったのか?」

「恐らくは。グランベナードといいエビルアープといい、明らかに本来の魔物分布とは異なり、それが

 ナナリー様を狙うように襲撃したという事実。あまりに話が出来すぎています」

「むぅ……」


「この件に関しては、奴の生存を確認したというだけで、それ以上の情報はありません。

 しかし、この国を蝕み得る病床が確認されたのは、凶報でもあり吉報です。

 存在したことが凶報とはすれど、存在するかどうかも知れなかった以前と比べればずっと良い」

「……同時に、それを討ち果たすことが出来るなら、それは我が国の自立を大きく促すきっかけともなる」

「仰るとおりです。今後は兵にも命じ、監視の目を厳しくさせましょう。

 いち早く、しぶとく生き延びた悪の芽を摘むべく、我々も努めて参ります」


 概ね声のトーンも合わせて、報告すべきことは以上だとハルマは表明した。

 聞き受けたナナリーはふぅと息をつく。苦労の絶えない女王様だが、その胸中では、困難に立ち向かわんとする王としての魂を意図して奮わせている。


 だが、その一方で。


「ハルマ。妾からもよいか」

「はい、何でしょうか」

「……ぬしが旅中の妾らがならず者に襲われぬよう、策を敷いてくれたことには感謝しておる。

 じゃが、結果的にそれは空振った形になったことは知っておるな?」

「……申し訳ありません。私の見積もりが甘かったようです」

「いや……責めるべきなのかもしれんが、妾はぬしを叩くつもりはなくてじゃな……」


 ハルマは情報操作や人員移動を駆使し、魔法都市ダニームに向かうナナリーの旅路を、一般には知られぬよう策を敷いてくれた。

 しかし、実際にはハフトの都でナナリーはフラックオース組の連中に襲撃を受け、万が一のこともあり得る状況に陥ったわけだ。

 これは参謀職としてのハルマに対しても、本来責任が問われ得るところである。


「……どこから情報が漏れた? 心当たりはあるか」

「……………………申し上げにくいのですが、今のところは目星がついておりません」


 しかしナナリーが最も目を向けているのは、なぜそんなことになったのかだ。

 女王ナナリーの旅路という、ならず者が知れば良からぬことに活かせる情報を、ハルマは極めて慎重に扱ったはずである。身内の兵すら騙してだ。

 実際、ナナリーが来ることなんか知らなかったハフトの都のセプトリア兵だって、女王様の姿を見た時には相当に驚いていたものである。

 今となっては、それをサプライズとして楽しんでいたナナリーの、無邪気な笑顔も遠い過去のことのよう。昨日の夕方のことなのに。


 フラックオース組は、人と手駒、魔物を揃え、準備万端でハフトの都を襲撃してきた。

 そこに女王ナナリーがいたのは果たして偶然か。

 たまたまフラックオース組が、きっちり準備した末にハフトの都を襲撃したタイミングが、たまたまナナリーの訪れた夜だったと考えていいのか。


 そんな偶然を信じるぐらいなら、まだ、どこかからナナリーがハフトの都に訪れるという情報が漏れ、準備万端でフラックオース組が挑んできたと考えた方が自然である。

 そもそもフラックオース組が、ハフトの都を襲うこと自体には、もっともらしい動機が無い。

 頭目スマーティオを投獄して死罪とし、アルバーシティのフラックオース組と、それに関わった悪の商会らを撲滅した仇討ちとして、フラックオース組がナナリー女王を狙った。その方が、よほど連中の行動原理が説明できるというものだ。


「不測のこともあろうし、今回のことは不問とするが……妾も正直、いつ命を狙われるのかと思えば気が気でならぬのじゃ。

 頼む、ハルマ。その辺りはぬしに一任するから、どうか妾を傍にて支えてくれい」

「勿体ないお言葉です。こちらこそ、今後あのようなことにはならぬよう、ナナリー様のことをお守りするために、心血を注がせて頂きたい所存です」


 深々と頭を下げ、謝罪を兼ねて今後の覚悟もをハルマが表明する。

 頭を下げても背の低いナナリーを見上げることは出来ないが、だからこそ頭を垂れてなお、ナナリーの表情はハルマにも見えやすい。

 言葉のとおり、数々の不安を抱えているナナリーは、幼い顔立ちも手伝って弱々しい。


 火の手に泣いたハフトの都の民を案じ、リープの生存という事実に戦慄を覚え、命を狙われる不安に襲われて。

 一国の女王、高貴かつ華やかないい暮らしをしているように庶民の目には映っても、人にはその立場にならねばわからぬほどの悩みがあり、それは他者が想像で補うより、遥かに重いことが珍しくない。

 果たしてこれは、17歳の少女が背負えるような業だろうか。


「今日はもう、お休みになられて下さい。今後のことを話すのは明日に回しましょう。

 今はお疲れの心と体を癒し、明日以降に向けて健やかにあられて下さいませ」

「うむ……」


 ハルマは微笑み、ナナリーの部屋から退出する。

 もう夜も遅い。彼も眠りにつき、明日以降に向けての鋭気を養うべき。

 ナナリーも大変だが、彼も彼でナナリー不在の間に王都で留守居を果たしていた中、ハフトの都の一件についてあれこれ仕事が回ってきて、たいがい今日は忙しかったのである。明日以降も、昨日や今日より忙しくなる。


 自室に向かうハルマは無表情だ。感情を抱くべきことなど今はないので、自然体でそうなる。

 一人で歩いていて表情が変わるのは、よほど脳内で感情を刺激することが巡っている時のみであろう。


「…………」


 だが、思索を巡らせながら自室への足を進めるハルマは、その表情とは裏腹、胸の奥では複雑だ。

 忙しいのは慣れている。仕事が増えるのは多いに結構。

 彼が気にしているのは、先程ナナリーと話していた時に感じた違和感だ。


「……警戒されているのか?」


 一番最初に引っ掛かったのは、ハフトの都への復興支援についての仕事、手続きを、ハルマに任せず自分でやるとナナリーが言い出したことだ。

 ああいう財務はこの国において、基本的にはハルマの仕事である。


 理屈はわかる。

 セプトリア王国の国政の最大の特徴は、国民が理不尽な災いに苛まれた時、それに対する補償をもたらす福祉制度が充実していること。

 世界各国、きっちりそれが備わっている国家は意外なほど有数で、保険という言葉で定義されたその制度は、魔物が跋扈するこの時代において、セプトリア王国の価値をかなり高めている。

 国土も大きな方ではなく、武力にも決して秀でるわけでないセプトリア王国だが、ナナリーの先々代の国王が地盤を作り、先代国王の時代に完全に確立した、民には嬉しいその制度に、現国王ナナリーは誇りを持っている。


 だから、ナナリーがそれ絡みの案件は人に任せず、自分であれこれに目を通して指揮したいというのは、ハルマも理解できるのだ。

 だが、それはナナリーの仕事を増やす道である。どう考えたって、現場の声を知っていて、人を使えるハルマにその仕事を回した方が、効率的だし負担も分散する。

 それがわからぬわけではなかろうに、ここを押し通したナナリーの他意らしきものに、ハルマは内心で疑問符を抱いている。


 以前から、資金繰りのからくりを用いてか、国庫から財のいくつかが流出しているらしき案件は続いている。

 復興支援とはつまり大きなお金が動く事象。

 それをハルマに任せず、自分でやると強行したナナリーの選択は、復興支援によって動く大金の流れを、ハルマに任せなかった形とも言える。

 今まで当然のように自分がやってきたことを、ここに及んで急にナナリーが背負い込みだしたことに、ハルマも自分に対するナナリーの目を疑いたくなる。


「……今後は少々、慎重に動いた方がよさそうだな」


 ぽつりと呟かれたハルマの独り言を、耳にした者は誰にもいなかった。

 ゆえに、彼がこの日新たな覚悟を固め始めていたことなど、誰にも知る由はなかったのである。

第3章はここまでです。

第4章の開幕は、11月1日の18時を予定しています。

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