登場人物&世界観紹介:第2章
第2章に登場した登場人物達や、舞台設定の紹介です。
【主要登場人物】
<チータ=マイン=サルファード>
ユースと同い年の友人。魔導帝国ルオスという国の出身で、ユース達とは生まれの故郷を別とするが、現在はエレム王国騎士団に傭兵として所属している。
少しぶかぶかな群青色のズボン、ゆったりした群青色のローブのような上の着に、瑠璃色のフードつきマントを纏うという、彩りに欠ける着こなし。紅玉をあつらえたリングを手首に備えている以外はお洒落っぽくもなく、忌憚無く言えば地味とも言える。しかし茶髪の下の顔立ちは端正で大人びており、着こなしを超えてその冷静な佇まいは、どことなく優雅さを感じさせる気質の持ち主でもある。
戦闘時には乳白色の象牙の杖を握り、魔法を使って戦う魔導士である。二十歳としては破格と言えるほど数多くの魔法を扱い、それら個々の効果も非常に大きく、魔導士あるいは戦闘要因としては極めて優秀な人物。一方で、ほぼ常に無表情で感情を表に出さない割に、かなりからかい好きな性格をしており、時折放つ皮肉やいじり文句でユースやシリカを困らせることも多い。
<ルザニア=フォーシス>
ユースやアルミナ、チータより一つ年下の騎士。エレム王国出身。
ショートカットに切り揃えられた鮮やかな赤い髪を、金飾混じりのカチューシャで止める可憐な少女。首元から縦降ろしに赤地を染めて、その左右を白地に分けた上の着と、短いスパッツに赤の短いスカートで身を包み、ユース達の中では一番年頃らしい服の選び方をしている方である。戦闘時には鋼の篭手とブーツを装備し、剣を握って戦うが、戦場におけるその姿は勇ましくも可愛らしく、どこぞのお姫様が剣を握っているかのようと言われやすい。
とても真面目で品行方正な性格の持ち主。先輩で年上のユースやアルミナには敬語で話しかけるが、仮に年下が相手でも敬語を使うほどである。毒気や濁りが一切なく、清廉な騎士様を心から目指しており、騎士としても強くて礼節に富み、女性としても淑やかで美しいシリカのことを、かなり強く尊敬している。攻防秀でたユースには一枚劣るものの、同い年の剣士にはまず負けない腕の持ち主で、素早い身のこなしと果敢な攻め入りで敵を討つ、攻撃的な戦い方を得意とする。
<ハルマ=クローバー>
セプトリア王国に仕える上層兵の一人。年の程は34歳だが、見た目より若い男前。アルバーシティ出身。
へそ上から胸元全体を覆うような装飾つきの服に、砂漠住まいの者が履くような膨らみのある紺のズボンを纏う。第2章までは冬なので、その服の下に黒いシャツを着ており、へそはその下に隠れていた。暖かい季節になれば、形のいい腹筋が風晒しになるようだ。端正な顔立ちで、赤紫の尖った長い髪を後ろに流し、背高くも引き締まった体の持ち主ということで、風貌でも多くの人に愛される人物である。
落ち着いた大人といった人柄で語り口も冷静、礼儀正しい好青年と認識されるのが一般的。一方で、若い頃にはよく遊んでいたらしく、人生経験も豊富であり、話がわかるお偉い様しても有名。女王ナナリーの傍に仕える参謀としても有能ながら、過去には戦場を駆ける尖兵としての経験もあり、武器の扱いにも秀でていて魔法も使えるという、まさに才色兼備の人物である。
<ウィーク=セッティマン>
セプトリア王国に仕える政人の一人。63歳。セプトリア王国出身。
法衣に身を纏い、伸ばした白い髭がよく似合う好々爺といった人物で、アルバー城の玉座に腰を据え、アルバーシティの政治の全権を担う身。ユース達を迎えた朗らかな笑顔、その優しい性格をわかりやすく表していたが、一方で隠し切れぬ威厳を感じさせる風格の持ち主でもあり、対面したユースはちょっと緊張していた。
ナナリーの祖父、つまり先々代国王の時代からセプトリア王国に仕えてきた人物である。若い頃は兵として働き、やがて参謀職や政人を経験してきたという経歴を持ち、実はセプトリア王国のかなりの重鎮。先代国王の時代には大臣を務めるにまで至り、現在は隠居がてら王都を離れてアルバーシティの統治者を務めているが、それも彼ほど国に信頼される人物にしか務まらぬ仕事であり、本質的に隠居と言っていいのかは疑問符がつく。ほぼ一線を退ききっているため、戦場や軍法会議に並ぶことはまず無いが、仮にその機会があってもまだまだ充分なはたらきが出来るらしい。ハルマも尊敬する、偉大な人物の一人である。
<サラサとコルメ>
ユース達がハルマに案内される形で訪れた、風俗店にて働く女性。
両名、職場での服は、チューブトップ型の胸回りだけを覆う水着のような服に、短いスカートで裸足、肩から胸の下までを透けるヴェールのような絹で飾るというもの。
サラサは21歳、背が高くて小顔、蒼の瞳に白銀のミドルヘアー、服の色は水色。リップサービスなど抜きにして年下好きらしく、ユースとの会話を普通に楽しんでいた。
コルメは26歳、ちょっと肉感を携えつつもスリムな全身像で、茶髪にウエーブをかけているのが特徴で、服の色は萌黄色。夜はこうした店で働きつつ、昼は服飾店でも仕事をしているらしく、ルザニアのまつ毛の触り方を教えるなど、おしゃれの手ほどきをしていた模様。
いずれもハルマが案内した店においては稼ぎ頭で客も多く、それだけ接客上手な二人である。慣れない場で、緊張したり困惑したりするユースとルザニアだったが、二人の話術はそれを解きほぐし、楽しい時間をユースらに提供した。ハルマとは個人的な付き合いもあるらしく、ハルマも付き合う相手は選ぶので、サラサとコルメは人間的にもいい性格をした二人であるということなのだろう。
<スマーティオ=フラックオース>
アルバーシティで広く大きな顔をしていた"フラックオース組"のボス。51歳。
黒のシャツの上に、灰のスーツを羽織るように纏い、短い白髪頭という、いかにもヤクザ者の親分といった風体である。常に端の尖ったサングラスをかけるという威圧的な顔だが、それは斜め傷で使い物にならなくなった右目を隠すものであり、サングラスをはずすともっと怖い顔になる。数々の修羅場をくぐってきた極道の親分としての風格は圧巻で、幾多もの戦場を駆けてきたアルミナが、彼に睨まれて後ずさったほどである。
アルバーシティの人々には愛された人物であった。フラックオース組の構成員を上手く纏め上げ、悪事をはたらかない極道組織を統率し、むしろその存在が小悪党の横行を防いでいた側面すらあったため、良い意味での畏怖の念を抱かれていたのである。
しかしそれは表向きの話であり、裏では繋がりのある商会や構成員と共に、国家の目を盗んで悪事に手を染めていたようだ。断続的に行なわれていた女の人攫いが特に問題となり、それがフラックオース組が黒幕となって行なわれているものだと知ったハルマ達により、ついに彼も追われる立場となった。
過去には組の若頭としていくつもの討ち入りを経験しており、非戦人でありながら、殺し合いの場においては市民離れした手腕を見せる。生粋の剣士であるユースらには劣るものの、脇差と小銃を手に戦う力量は確かなもので、部下や仲間の力を借りながらではあるものの、ユース相手にも健闘した。
【魔物図鑑】
【植物属】スパイダーローズ
スマーティオの屋敷に飼われていた魔物。作中では名前が判明しなかったが、こういう名前である。
野生のスパイダーローズとしての性質は、地面を通して操る蔦で獲物を殺し、死骸に変えてそれに群がってくる虫などを葉で捕まえては、分泌する体液で消化して吸収するという、魔物らしい食虫植物である。
本体部分とも言える花は、屋敷の一室をまるまる陣取る形ででっかく咲いていたらしく、そこから床を破って地面を通る蔦を伸ばし、中庭からにょきにょきと生やしていた。蔦はかなり伸縮に自在が利くらしく、太く繊維の詰まったそれは自在にうねり、かなりのパワーで獲物を締め上げたり打ち据えたりすることが出来る。
本来、部屋ひとつ頂くほど大きな花を咲かせるものは、自然界には滅多に存在しない。もっと小さな花と全体像の植物であって、ユース達が手を焼くほど無数に蔦をうごめかせたり、凄いパワーの蔦を操る魔物ではないのである。それがスマーティオの配下の指示に従ってユースらを狙い撃ちにしたり、野生ではあり得ないほど成長したその様は、人の手によって飼われ続けていたことによる特異な例。
なお、騒動が終わった後に屋敷内で発見された本体の花は、主人を失って特に動きを見せていなかった模様で、本体部分の花だけ切り取られ山奥に帰された。焼いて滅するのも早かったが、人の手に利用されていただけの魔物をそうするのも、可哀想だと判断されたようである。
【舞台設定】
<アルバーシティ>
セプトリア王国第二の都とされる、非常に栄えた大きな街。女王様おわすセプトリア王都が第一の都であるのは揺るぎないが、それを除けば他のあらゆる部分で王都に勝る、実に大きく栄えた都である。
4年ほど前には"アルバー帝国"という国が存在しており、それがセプトリア王国との戦争に敗れたためアルバー帝国は消滅し、その都である"アルバー帝都"と呼ばれていた場所が、現在のアルバーシティである。
帝都時代は非常に治安のよろしくない街だったらしく、暴力団の乱立や横行は当たり前、貴族や王族がそれに癒着で関わることも珍しくなかったとのこと。セプトリア王国に主権が移った昨今は、政治方針が変わったこともあり、現在は随分と治安も良くなったようだ。
かつての支配者が崩御し、セプトリア王国が新たな主権者に代わった折には民も不安がったそうだが、結果的にはそれ以降、セプトリア王国の良政により、健全かつ栄える良い街となった。ややお上品なセプトリア王国の風土とはちょっと異なり、裏路地や下町は汚く、色町はやたら広く繁栄していたりしているが、それはかつての風土を残したもの。過去以来のアルバーの空気と、現在のセプトリア王国の政治方針との折り合いは、ここを生まれの故郷とするハルマの尽力もあって上手についているらしく、国と街の主従関係は良好である。
<チャハル商会>
アルバーシティに本拠地を置く商会。そこそこ栄えていたそうで、食料品から武器まで、様々な商品を手広く扱っていた商会である。一番手広く扱っていたのは農具で、かつては国土の広いアルバー帝国全土の農夫を相手に、農具を売る第一商会として知られていたそうだ。
しかしその実態は、国の目を盗んで悪行をはたらくフラックオース組と裏で繋がっており、攫ってきた女性を幽閉する地下室を提供していた。後から埃を叩いたら、武器を横流しや賄賂の横行が発覚したりもしたそうで、健全な商業団体の裏に、悪辣な金と人の運びを長らく画していた組織である。悪行が発覚しそうになると、攫ってきた女性らを口封じに射殺しようとするなど、彼らの倫理観は完全に極悪人のそれである。
人攫い騒動の終結とともに、芋づる式で発覚するあらゆる悪行の数々により、解散に追い込まれることはほぼ間違いなく、所属した者達も軒並み裁かれていくことになるだろう。やってきたことがやってきたことだけに、特に人攫いに関わった連中には、相応の特別刑が待っているはずである。機会があれば、その者達の末路は本編ででも。
<フラックオース組>
アルバーシティに横行していた極道連中。俗に言えばヤクザである。
アルバー帝国が存在していた時代から、暴君であった皇帝や貴族らとの癒着もはたらかず、乱立していた極道連中の中では比較的穏健派で通っていた。ゆえにアルバー帝都がアルバーシティと名を変えるに際し、セプトリア王国による暴力団殲滅が行なわれた際も、唯一現存を許された組織である。
王国の支配下におけるアルバーシティでは大きな悪事をはたらくこともなく、怒らせたら乱暴なことをする連中と捉えられる程度であり、その素行は安政の範疇に留まっていた。むしろ唯一残った極道組織として、街の裏連中には闇親分として知られ、それに逆らう力のない小悪党が跋扈できない抑制力としてはたらいていた。総合的に差し引けば、国に都合のいい集団ですらあった側面もうかがえる。
ただ、かつての隆盛と比較すれば、セプトリア王国に管轄されての日々は組員には不満が募っていたらしく、構成員が国に隠れて悪行をはたらくようになったのは、それに端を発している。組員の不満を晴らすにはその欲を満たす他なし、としてスマーティオも暗黙、あるいは主導していたらしく、それによって起こっていた暗件の一つが、一連の女性の人攫い事件である。
大きな抑圧はやがて不満と鬱憤を溜めるとして、セプトリア王国もハルマの仲介などを経て、ある程度はフラックオース組には寛容に接していたそうだ。それでも我慢ならぬとし、悪行に手を染めてしまったフラックオース組の構成員に弁護の余地は無いが、一方でそれは、一定の抑圧は民にストレスを与え、やがて大きな造反を生み得るという通説をも体現している。それを承知のセプトリア王国も、ある程度の妥協と推し量りを以ってフラックオース組とは付き合っていたのだが、それでも上手くいかなかった以上、やはりセプトリア王国の導く新体制に、フラックオース組は合わなかったということである。




