それを呪いとよぶな
私の中にも、あるといえばあるのです。
そのすばらしい、呪いとよぶには、暖かなこと。
でも、なんでもなかったわけではないのです。
いったん失えば、なんだか最初はとれない大きな染みのようなことが。
それが、見えないわけでもないんです。
その依存していた心の部分の染みが、だんだんとぼろぼろになって。最後はぽっかりと穴があいて。
なんだか、失った瞬間は、アルミ缶に似ていましたから。
飲み干した後の缶が、ぱきぱき握りつぶれる感じなんて。そっくりです。
だから、その時から、暗い穴の呪いが始まったように思ったこともあります。
確かに消えない呪いのように感じていたこともあります。
でも、ちがいます。そのすばらしい、暖かな感情は、純粋なことだから、呪いではない。
失った悲しみには、ただぽっかりと空いた穴を吹き抜ける風を感じるだけで、何もしないでください。
悲しみを追いかけて、喪失を恨まないでください。ただ、そっと胸で良い音楽を聴いてください。
満ちてくるまで、じっと動かないで。