↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/16

<7>


<7>


信じられない。信じたくない。

「ツキ、信じたくないって顔してんな」

面白そうに祐樹さんが言う。

面白いことじゃないし…。

祐樹さんの予想が当たっていることがさらに面白くない。

てかそもそも、原因はこの人だし。

「祐樹さん!」

「んあ?」

「んあ、じゃないです! どういうことですか!?」

信じないためには証拠が必要。

どうやってでも突き止めてやる。

絶対に今のソプラノの歌声が祐樹さんじゃないってことを、証明してみせる!

意気込んでいる私に向かって、

「どういうことも何も」

と、けろっと言う祐樹さん。

「普通に考えれば俺以外に誰もいないって思うだろ? ツキ」

「思いたくないです!」

思うか思わないかじゃなくて、思いたくない。

「思うしかねーじゃん。」

にっと笑った祐樹さんに、ウソをついている感じはしない。

じゃ、本当ってこと? さっきの歌は祐樹さんが歌っていたってこと?

「ウソだー…」

扉と同じく古いデザインの椅子と机にふらふらと近寄って、机に突っ伏す。

「祐樹さんのバカー…」

「え、俺!? なんで?」

「ソプラノの声出るとか信じたくないです」

「俺だって信じたくねぇよ」

祐樹さんの拗ねたような声。

男の人らしい低めの声で、絶対にソプラノとかでなさそうなのに。

ふと、もう一つの疑問をぶつけてみる。

こっちの方が重要な質問かもしれない。

「…ところで、祐樹さん」

「今度は何」

「あれ、ほら、さっきの歌ってあれですよね、ほら、あのー歌姫様が歌って、た、や、つ………。」

言いながら、私の思考は一番考えたくないところにたどり着いた。

あり得ないこと考えちゃダメだって自分!

ただ祐樹さんは…そう、歌姫様のファンでー…。

そういうどうでもいい理由だと信じて、おそるおそる祐樹さんを見ると。

「笑顔、引きつってますよ…」

「うん、自覚してる」

微笑を浮かべようとして、失敗したみたい。

くちびるらへんの筋肉がちゃんと動いてない感じがする。

そう言う顔をするってことは、図星?

私が思ったことは、事実?

「それこそウソですよね?」

「……」

「ウソですよねというかウソであって下さい。」

「………」

「ほんとそう言うたちの悪い冗談とかやめてくださいよぉ……。」

「…………」

「祐樹さんっ!」

私がつらつらと言っている間、祐樹さんの顔はさっぱり動かない。

まるで瞬間冷凍されたみたいに。

凍らせちゃったのはたぶん私だろうけど…。

「解凍ぐらい自分でしてくださいっ!」

なんか、『わかってしまったこと』に腹が立って、祐樹さんの引きつった顔をぐにぐにと動かした。いっそのこと、このまま冷凍庫につっこんでしまおうか。

「ふき」

祐樹さんは「ツキ」と言ったようだが、私が顔を動かしているせいで山菜になってしまった。

ふきは嫌いではないが、ふきと呼ばれたくはない。

「…」

少し迷った後、何か言いたいことがあるんだろうなと思い、仕方なく手を離す。

「ツキ」

…言い直した。

別に言い直さなくてもいいのに。

やけに大まじめな顔になって、その漆黒の目を私の目と合わせる。

「…あい」

なんか声がうわずった。

それに対して祐樹さんは少し笑うと、こう言った。


「俺が、歌姫だ」


ほんと、たちの悪い冗談ですまないと思う。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。